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俯瞰で見ることで、ポジショニングの妙が浮かび上がる

2012.08.16



『杉山茂樹のみてわかるサッカー観戦のツボ 君のポジショニングはそこでいいのか?』

サッカーには守もあれば、攻もある。常に同じポジションにいることなんてありえない。その反面、いなければいけないポジションもある。そのひとつにサイドがあげられる。

ストイコビッチが名古屋の監督に就任し、選手が驚いたのは「(中央に)絞らなくてもいい」と言われたことだという。サッカーにおいて、逆サイドにボールがある時は絞るのがセオリーなどと言われていたが、ワイドに開っきっぱなしでいることで、相手守備陣を広げ、中央を狙うという手法もある(バルセロナもサイドが張っている)。

 
こういったチーム全体での動きはTV画面では伝わらないが、スタジアムの上からだと手に取るようにわかる。そこに監督の試合後記者会見でのコメントが入ってくると、チームと監督のシンクロ度も見えてくる。大概、“無能”と言われる監督は、コメントに深みがなく、チームを俯瞰から見えていない。

 
もちろん、ピッチで重要な役割を果たすのは選手たちになる。

 
改善されてきたものの、日本サッカー界において、個人戦術という概念は欠けている気がする。

 
元清水エスパルス監督のゼムノビッチ氏は、「選手が移籍してしまったから、DFの選手にボランチをやれといったら、『いや、僕はDFなんで(動きがわからない)』と言われた」と語っていたが、ポジショニングのセンスが欠如している証拠ではないだろうか。

他にも外国の記者が、「高校サッカーを見ると、クロスを上げたら終わりのパターンばかり。どうして、シュートを打ったりしないんだろう。プログラムみたいだ」と苛立ちを見せていた。

どちらにも共通しているのは、「これが僕の役割だから」。上述した名古屋の選手たちが、様々なポジションでプレーするのとは対照的だ。サッカーという流動的なスポーツらしからぬ頭の中身では、試合中に消えた選手となってしまう。

監督がどんなに選手に指示を送っても、選手が体現できなければ、机上の空論で終わってしまう。また、その逆もしかり。

そういった意味でも、J2というカテゴリーの試合を俯瞰から撮影し、監督のコメントや記者会見映像を収めた『杉山茂樹のみてわかるサッカー観戦のツボ 君のポジショニングはそこでいいのか?』は、日本サッカーの縮図ともいえる。決して驚くような映像技術や解説があるわけではないが、『ポジショニング』という概念を考えさせられる目から鱗の内容だ。千葉、京都、富山サポーターはもちろん、指導者やサッカー好きなら、侃侃諤諤の“サッカー談義”が起きるだろう。

文/石井絋人(プロデューサー)

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