2017.03.22

【サッカーに生きる人たち】コアなサッカーファンを増やすために|西岡明彦(フットメディア代表取締役)

編集者、サッカーライター、スポーツカメラマンを目指す人のためのアカデミー

「フットボール」と「メディア」、二つの要素を併せ持つエキスパート集団、株式会社フットメディア。フットボールを主要業務としてスタートしたが、後に野球や自転車競技、ラグビーなど様々な分野に進出し、今では選手や指導者、アナウンサー、雑誌編集者のマネジメント業務も行っている。その代表取締役を務めるのが西岡明彦さんだ。

 テレビのCS放送などでサッカー中継を見たことがある人ならば、少なくとも一度は耳にした事がある実況者の名前だろう。正確な実況をし、解説者との絶妙な掛け合いを見せながら小気味よく旬な情報を挟み込む。淡々とクールに“仕事”をこなすプロフェッショナルなスタイルと話芸に、コアな海外サッカーファンならずとも魅了される。

就職後に訪れたサッカーとの再会

 高校生までサッカー部に在籍して自身もプレーしていたが、青山学院大学への進学後は部活に入らずに4年間を過ごす。プレーヤーとしての道は諦めたものの、フットボールに対する“想い”に変わりはなかった。

 大学卒業後は広島ホームテレビに入社。スポーツアナウンサーとしての第一歩を踏み出すことになるが、西岡さん自身は長い下積み時代が訪れる事を覚悟していたようだ。

「当初は広島カープの実況をやろうと思っていたんですが、当時すでに実況を担当している先輩が3人いました。ということは、すぐにその仕事はできない。10年ぐらいやって初めてチャンスが来るかな、という感じでした。新人がいきなり喋れるはずないですからね(笑)」

 そんな矢先、西岡さんのもとにサンフレッチェ広島の取材の話が舞い込んできた。

「僕は1992年に入社したんですけど、ちょうどサンフレッチェが設立された年で、1年後のJリーグ開幕に向けて動き始めているところでした。また、友人から当時、サンフレッチェでプレーしていた森山佳郎(現U-17/U-16日本代表監督)を紹介してもらったんですが、メチャクチャ意気投合して(笑)。取材もそうですけど、知り合いがいる環境なら入りやすいですよね。そんな経緯もあって『やりたいです!』と答えました」

 友人との良縁にも恵まれ、西岡さんは再びサッカーと真剣に向き合うこととなる。

人生を変えたロンドン留学

 サンフレッチェ広島の実況担当としてキャリアを重ね、当初の目標だった広島カープの実況も担当するなど様々な経験を積むと、西岡さんの心に新たな思いが芽生え始める。

「クラブの仕事に興味があったので、それなら本場のサッカーを見た方がいいのではないかと思い始めました。そこで、マンチェスター・ユナイテッドと付き合いのあったサンフレッチェの知人に相談したところ、『行ってきたらいいんじゃない?』と背中を押してもらいました」

 フットボールに対する熱意と周囲の後押しもあって、およそ6年間在籍した広島ホームテレビを退社。次に選んだのが、ロンドンのウエストミンスター大学への留学だった。同大学はジャーナリストを多く輩出していて、国外からも積極的に生徒を受け入れていたという。

「まずは3カ月間、英語を徹底的に勉強して、会話ができるかをテストしてもらうんです。それをクリアすると、メディア学部の3年生として1年間授業を受けて、向こうの現場でインターンができるというシステムでした。週末はいわゆる“サッカー漬け”の日々でしたが、それ以外の日はテレビ朝日のロンドン支局でアルバイトをしながら大学に通っていました」

『Sky Sports』でのインターンも経験し、日本では味わうことのできない刺激や歴史の違いを肌で感じられた1年だった。

「日本だと、サッカーのスタジアムはアクセスがそれほどよくない場所にあるイメージがあったんです。それがイングランドだと、公共交通機関がスタジアムのために整備されたようなところが多く、駅を降りたら目の前がスタジアムなんですよね。スタジアム自体もトラックがないサッカー専用スタジアムだったので『すごいな』と思っていました」

 熱気あふれるフットボール発祥の地。本場で学んだ語学もまた、現在の仕事で大いに役立っている。

「海外サッカーを見る視聴者は、テレビの画面からしか情報を得られないじゃないですか。でも、現地の音声では『誰々がアップしています』とか『ベンチに戻ってきて準備しています』というリポートを入れてくれるので、僕はその副音声を聞いて視聴者に伝えるようにしています。向こうで学んだ英語がガイドとして役立っているので、留学して本当によかったと思っていますね」

基本としている三つのこと

 帰国後、西岡さんはスポーツコメンテイターとしての活動を開始する。プレミアリーグの実況を皮切りに、セリエA、スコットランド、フランスなど、海外サッカーの実況を数多く経験し、2008年からはサッカーゲームの世界的代表作『FIFAワールドサッカー』シリーズの実況も担当している。そんな西岡さんには、実況をする際に心掛けていることが三つあるという。

「まずは試合をしっかりと伝えることを大切にしています。次に実況しているチームやリーグで起きている、試合以外の部分の情報を紹介することですね。ゲームの前に情報収集して、しっかり準備しておきます。そして三つ目は、解説者の方にたくさん話してもらえるように気をつけること。この三つのバランスが大切で、崩れてしまうと見ている人にとってもおもしろくないだろうし、タイミングが悪くても聞き苦しくなってしまいます。この三つが基本であり、おそらくすべてだと思っています」

サッカー好きの仲間を増やしていきたい

 2004年のフットメディア設立後、今では後進の育成にも力を入れている。

「サッカーに関わることで、よりコアなファンを増やしていくことが僕にとっての喜びなんです。サッカーを仕事にしたいという仲間が集まってきたので、その人たちをサポートすることで、世の中のサッカーファンも増えているのかな、と思いますね」

 気さくで優しい人柄でありながら、サッカーに対する真摯な想いを持ち、常に行動力にあふれるその姿ゆえに、自然と人を惹きつけるのだろう。そんな西岡さんに今後の目標について尋ねてみると、笑顔でこう答えてくれた。

「サッカーに関わりたいという若者との出会いがたくさんあるので、じゃあ彼らの夢を叶えるためにはどうすればいいかを常に考えています。『サッカーを仕事にしたい』という人間を迎え入れて、仲間がどんどん増えていったら楽しいだろうなって思いますね」

株式会社フットメディアの公式HPはこちら

インタビュー・文=東谷浩司(サッカーキング・アカデミー