2014.03.25

墨田区からアジアの頂点を目指す 須賀雄大(フウガすみだ 監督)

フウガすみだ須賀監督

フウガすみだ須賀監督

「フットボールの答えは自分の中にあるというのが、僕の哲学です」
 
 肩ひじを張らない落ち着いた口調で、須賀雄大監督はその本心を明かした。

 錦糸町駅の近くに、フウガすみだのホームアリーナである墨田区総合体育館がある。 須賀氏は、2014年度にFリーグ参入を決めたフットサルチーム、フウガすみだの監督だ。

 須賀監督は、小学生の頃から宮沢賢治が好きだ。

「旅行で移動する時に、ひたすらカセットテープで宮沢賢治や芥川龍之介の童話を聞く、謎の一家だったんです」

 賢治の作品では、動物や自然が人間と並列に描かれ、それらが平然としゃべる。

「作品を読むと、人間は偉くないと言いたかったのかなと思います。それは重要だと思っていて。フットサルで結果を出した時にも、勝ったから偉いのか?と常に自戒しています。弱くてもドンマイやナイスプレーなど声が出ている方が良いチームだと思うんです」

 彼は、体育とは別にサッカーの授業がある、暁星小学校の出身だ。

 小学校2年生までは、周りの友達から昆虫博士の異名をつけられるぐらい虫が好きだった。そんな彼の同級生には、フットサル日本代表の稲葉洸太郎や北原亘らがいる。いつしか昆虫よりも、未来の日本代表たちと毎日サッカーボールを追い掛けるようになった。

「暁星高校でもサッカーを続けていました。でも僕らは、高校最後の東京都大会一回戦で東海大菅生に負けてしまって。例年であれば上の方まで行くチームなので、ちょっと不完全燃焼でした」

 一つ上の学年にはジュビロ磐田の前田遼一がいて、須賀氏の代に懸かる期待も大きかった。当時を振り返りながら悔しさをにじませる。その無念さを晴らすように、稲葉や北原などの同級生たちと高校生活の終わり間近からフットサルに無我夢中になる。

「運良くトップレベルの競技チームと試合ができる機会があって、フットサルも果てしなく高みがあるという印象を持ったんです。もっと突き詰めるために、チームを作ってやりたくなりました」

 当初は選手だったが、現在は監督をしている。チームマネジメントを始める契機も、須賀監督の本意からではなかった。

「僕はサッカー部時代もBチームだったんです。でも、目立ちたがり屋なので仕切り屋をやってて。それを買われたのか分からないですが、高校の途中に林義規監督から、『おまえしかできない』みたいに熱く声を掛けてもらって、マネージャーに転向したんです」

 サッカー部時代のマネージャー経験は、雰囲気作りも含めて、その後のフットサルチームで生かされていく。須賀監督は、林監督の下で育てられチームスポーツへの考え方が培われたと強調する。

 本格的に監督を始めたのは、22歳の時だった。フウガすみだの監督として、関東フットサルリーグ6回の優勝、地域チャンピオンズリーグ5回の優勝。監督として結果を残した。だが、彼の理想はまだまだ先にある。

「憧れの監督は、マンチェスター・ユナイテッド一筋で若手の育成や選手の獲得にも力を入れたファーガソン。将来的な目標は彼なんです」

コミュニケーションで乗り越える

 カフリンガ東久留米の垣本右近さんが代表を務めていたF.C.VENGAは、強いけど緩やかな一面も持ち合わせており、しかも独特の雰囲気を持った、やる時はやるというメリハリのある、須賀監督が憧れるサッカーチームだった。

「彼らがやっている円陣を真似したんです。ただ、何を言ってるのか聞き取れなかったので、言葉は 僕が考えたんですけど」

 フウガすみだの名物と言われるようになる円陣の始まりだった。ホームアリーナや大一番で自分たちを奮い立たせるために行う。

 円陣を組んだ過去の天王山の一つ、2008年度全日本フットサル選手権大会の名古屋オーシャンズとの決勝戦。カウンターを武器にしてフウガすみだは勝利を収めている。この試合の準備に2カ月間を要した。

「ポテンシャルの高い選手たちがフウガにいましたが、その時点での能力は大きく名古屋に遅れをとっていたと思います」

 守備から攻撃への切り替えを極限にまで早める練習を、集中的に行うことで、力量の差を補った。

「当時は、今の日本代表の星翔太や佐藤亮がチームにいました。実力がある選手の中には、自己中心的なプレーに走る選手もいるんです。でも彼らは、非常にポジティブにチームワークに徹する選手たちでした。そこは大切なことです」

 彼は過去2度にわたってスペインに留学をしている。最初、海外に行けばチームを強くする答えが見つかるかもしれない、という甘い考えを持っていた。スペイン人の指導者に的外れな質問をしたこともあった。

「海外でインスピレーションを受けるというのは、重要だと思う。でも、向こうでいろんなフットボールに接したけど、自分の目で選手たちを見て、しっかり考えることが大切だと思いました。もちろん、壁にぶつかることはある。ただ、悩んだら選手と対話して、一緒にいろいろ試していけば、大体乗り越えられるんです。それはずっと今も続けています」

墨田区がフットサルに熱い街へ

 現在、須賀監督はクラブを運営する立場でもある。U12で構成されたフウガすみだエッグス、U15のフウガすみだウィングス、サテライトのフウガすみだバッファローズ、そして、トップチームのフウガすみだ、全ての監督を兼務している。フウガの哲学を全カテゴリーに浸透させ、自前の選手をトップチームに導くためだ。

「フウガの空気をみんなで吸いたい。プーマカップの決勝へ行った時にみんなが喜んでくれたように、Fリーグに上がったら、ファンはもちろん、全カテゴリーの選手とその家族の皆さんとも一緒に喜び合いたい。今は、クラブを作ることに醍醐味を感じています」

 2014年度の須賀監督の目標は、フウガすみだに関わる人たちが素晴らしいファミリーになるということだ。

「試合を見に来たお客さまが、本当に面白いと思って帰ってほしい。Fリーグを見た下部組織の人や、そのお父さんやお母さんが夢を抱いて、将来の目標を持てるようにしたい。心に響く試合をしたいと思ってるんです。将来、フウガすみだはアジアクラブ選手権に出場して頂点に立ちたい。難しいけれども、のぼり詰めることを目指します。そして墨田区がフットサルに熱い街になれたらいいなと思います。生活の一部にフットサルやフウガがある街にできるように努力したい。そうなったら最高ですね」

 東京墨田区といえばフウガすみだ、と呼ばれる日も遠くはないかもしれない。スカイツリーやソラマチの他にも見どころはたくさんある。

「墨田区総合体育館のある錦糸公園一帯はおススメです。公園は広くてきれいですし。体育館ではフウガがフットサルを教えています。またジムやプールもあります。春は桜が満開です。Fリーグを見るだけではなくて、その帰りに食事や映画館へ行くこともできます。この一帯はアミューズメントパークみたいなものですよ」

 隅田川が流れる情緒あふれる土地で、地域と結束したフットサルチームがFリーグに本格参戦する。日本だけではなく、アジアに風を起こす準備は、もう既にできている。

>>>「フウガすみだ オフィシャルサイト」はこちらから<<<

インタビュー・文=加藤匡之(サッカーキング・アカデミー
写真=高山政志(サッカーキング・アカデミー

●サッカーキング・アカデミー「編集・ライター科」の受講生がインタビューと原稿執筆を、「カメラマン科」の受講生が撮影を担当しました。
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