2013.12.17

言葉が好き、書くのが好き ベン・メイブリー(翻訳家・ライター)

ベン・メイブリー

ベン・メイブリー

「大阪っていい街やなぁと思ったんですよ」

 英国生まれ英国育ちの英国人が、コテコテの大阪弁で語る。

 大阪在住の英国人ライター、ベン・メイブリーさん。Goal.comで『ベン・メイブリーの英国談義』を連載し、J SPORTSで放送中の『Foot!』にて耳にする心地よい大阪弁のルーツは、学生時代にあった。

「大学時代に留学で大阪に行ったんですけど、楽しい一年だったんですよ。面白い人たちと出会ったり、ガンバ大阪を見に行ったりして。ゴール裏では大阪弁しか通じへんし(笑)。留学が終わって母国に戻ったんですけど、すぐに大阪に帰りたい、戻りたいじゃなくて帰りたいという気持ちがすごく強かったんですよね」

 楽しかった「日本」に対する思いは、幼いころから好きだった「サッカー」と混ざり、大学の卒論で「日本のサッカー」について書くほどになっていた。この二つの思いを合わせるべく動き出す。大学を卒業後また日本へ帰っていた。

「プロのサッカー選手になれないんやったら、サッカー関係の仕事をしたいなと思っていたんですよね。それとは別で日本にも興味があったんですよ。大学では日本語や日本のことを勉強して留学もしてますしね。サッカー関係の仕事と日本での生活、この二つをどうにか一つにしたいなと思うようになって、好きだった大阪に帰って仕事を探したんですよ」

面白い文章を書くこと、それがライターの喜び

 翻訳をしながら、サッカーに関する仕事にたどり着いたベンさん。初めての取材はもちろん日本。イングランド代表FWガリー・リネカーが名古屋グランパスに行ったときから興味を持ったJリーグだった。

「初めてのことなので分からないことばかりで。半分仕事、半分見学みたいな感じで周りの皆さんがやっていることを見て勉強しましたね」

 遠い国からやってきた新人は経験を重ねていく。不慣れな環境に適応していく中で、数少ない外国人記者は他の日本人記者とは異なることもあった。

「おまえ誰やねんって思われてるでしょうね(笑)。でもいいこともあるんですよ。ある選手、ある監督は外国人の僕には、ストレートに話してくれることもあるんです」

 取材後は母国語ではない言語での執筆。「英語の倍ぐらい時間がかかる」という日本語は難しく、そして悔しい思いもする。

「僕、言葉が好きなんですよ。書くのがすごく好きですから、面白い文章を書くこと、それがライターとしての喜びだと思うんですね。英語だったらかっこよく書けたのにとか、もっと面白い表現があったはずと思うことはありますよ」

 純粋に「好き」という気持ちが、ライターとして、プロとしてのこだわりとして奮い立たせていた。

ベン・メイブリー

日本も100年たてば……これからも急成長できる

 イギリスと日本の文化は異なる。スポットライトの当たるプロのピッチだけではなく、町の小さなクラブにも大きな違いがある。日本人の我々にベンさんは、サッカー発祥国の文化を伝えてくれる。

「僕の地元にイングランド8部リーグのチームがあって、クラブのスタッフもほとんどいない完全にアマチュアなんですけど、芝生のスタジアムを持ってるんですよ。日本からすると『えー!?』って感じですよね。イングランドは8部でも、お金を払って見に行く施設があるのは当たり前。規模は小さくても、ちゃんと地元の文化に入っているんです」

 イングランドは160年の歴史を持つ。時間の重みはあるものの、20年で急成長した日本もイングランドに近づいている。

「Jリーグじゃないチームでも、お客さんが集まって町に旗とか飾っているところがある。そういう姿を見ると日本のアマチュアだって、100年たてば変わると思いますよ。これからも急成長できるんじゃないかな」

 フーリガンがいた暗い時代を経て、今では安全な明るい雰囲気を作り出したイギリスは、日本とは異なるサッカーの楽しみ方を持っている。

「イギリスはからかい合うジョークの通じる文化があるんですよ。イギリスではアウェーサポーターに面白いことを言われたら、ホームサポーターは怒らずに一斉に笑うこともありますから」

 からかい合うことがライバル関係を楽しくする。ヨーロッパでは当たり前の行為だが、ここは日本。文化の違いに寂しさも覚えているようだ。

「ケンカを売るつもりでやるならダメですけど、そういうことが日本でもできたら楽しいのにと、このイギリス人は思いますよ(笑)」

 イギリス人ならではのサッカーの楽しみ方を知るベンさんは、日本ならではのサッカーの楽しみ方、日本サッカーのとある側面については好意的に思っている。

「遠藤にボールが届いたら『遠藤! 遠藤!』って楽しそうに叫ぶ学生さんがいっぱいいて、面白いですね。ヨーロッパのスタジアムにはそういった方はあまりいないので。最初のきっかけとしてはいいと思うんですよね。そこからハードコアなファンになっている人もいますし。マスコミがアイドル扱いするのは問題かもしれませんけど、日本の文化でもある。それによってサッカーファンが育つこともありますから、いいと思いますよ」

 幼いころから慣れ親しんだイギリスと、留学を含めて9年日本の成長を見届けている。二つの文化を肌で感じ理解をしたハイブリッドな存在となっていた。

日本代表、Jリーグを世界に配信したい

 今年、ワールドカップ出場を一番乗りで決めた日本代表は、コンフェデレーションズカップでイタリアを苦しめた。ベンさんが海外のメディアに語る機会は「コンフェデレーションズカップの後すごかった」そうだ。

「ヨーロッパのクラブチームでの日本人選手の活躍がその大きな原因の一つだと思いますけど、Jリーグ強くなりましたねとか言われますし。日本代表とJリーグを説明するのはすごくうれしいんですよ」

 喜びはやりがいにもなっていた。「まだまだ日本のサッカーは知られていないけど、興味は持っていてくれている」いう海外に日本を伝えたいと願うようになる。

「日本サッカーはまだまだ世界中にそんなに配信していません。日本のサッカーを英語で伝えている人が少ないですし。日本語以外の言葉での配信に、僕も貢献できたらと思いますね」

 ベンさんは日本で活動しながら、その目は世界を見ていた。そしてサッカーを超えた世界も見えていた。

「世界中でもっと盛り上がりそうな、そんなプロジェクトに参加できればなあと。もっとイギリスに日本サッカーだけじゃなくて日本のことも知ってもらいたいですし、逆に日本人にイギリスのこと知ってもらいたい。イギリスと日本の国際関係にも貢献したいですね」

 夢は大きく膨らむ。だが、彼の根っこの部分にある夢も忘れてはいない。大人になってできた大きな夢に、幼いころの夢が自然と重なり合う。

「プレミアの解説はこれからもしたいですけど、実況もしたいとすごく思っています。実況は夢でしたし、今も変わってないんです。日本語での実況は難しいですけど、例えばJリーグの実況を英語でして、海外に発信できたらなと思いますよ」

 日本生まれの方ですか?と思うほど日本に馴染んでいる雰囲気を持つ。だが、もちろん生まれ育った母国への思いはある。

「いつかは帰りたいと思ったりもしますけど、でも帰りたいけど日本を離れたくない。一番の理想はどちらにも家を持ってどちらでも仕事をしたいですね。それは一生できないかもしれないけど(笑)」

 欧州の島国から極東の島国にやってきたベンさんは、英語と大阪弁交じりの日本語を駆使して、愛するイギリスと大好きな日本に、そして世界へ発信を続ける。

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インタビュー=飯塚健(サッカーキング・アカデミー 関西スクール
構成=佐藤功
写真=瀬藤尚美(サッカーキング・アカデミー

●サッカーキング・アカデミー「編集・ライター科」の受講生がインタビューと原稿執筆を、「カメラマン科」の受講生が撮影を担当しました。
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