2015.08.26

U-12ワールドチャレンジ、3年連続出場の川崎U-12の佐原秀樹監督「出る以上はどの大会でも、頂点を目指してやる」

インタビュー=小松春生
 

 27日に開幕するU-12ジュニアワールドチャレンジ2015は、スペイン育成の名門であるバルセロナとエスパニョール、アルゼンチンのデポルティーボ・カミオネーロス、U-12ベトナム代表の海外勢を招き、3度目の開催を迎える。日本勢はJリーグの下部組織や街クラブなど計12チームが参戦する。

 国内の子供たちには貴重な異国の選手たちとの対戦の機会となる同大会。開幕を控え、3大会連続での出場となる川崎フロンターレU-12の佐原秀樹監督に、選手の育成についてや大会の意気込みを聞いた。

【まずはしっかりと「個」を育てる】

――最初に川崎フロンターレの育成における基本的な方針や規模をお聞かせください。

佐原 現在は一番下の年代がU-10ですね。4年生、5年生、6年生がジュニアチームと言う形で、1学年12名が所属しています。4年生12名、5年生12名、6年生12名です。

――セレクションは随時行うということでしょうか?
佐原 新6年生に関しては、基本セレクションはやりませんが、4年生、5年生に上がるタイミングと6年生からジュニアユースに上がるタイミングであります。

――ベースとなる指導方針はありますか?
佐原 トップチームが技術を大事にしているので、そこは特に落としこむようにしています。ユース、ジュニアユース、ジュニアというところで、本当に基本的な「止めて蹴る」のような、一つひとつの基礎と言いますか、技術的なところに関しては継続していけるようにやっています。ジュニアからジュニアユース年代では、そこまでは大事に育てながら、という感じです。ただ、ジュニアユースからユースとなった時には、どうしても厳しい世界がある。ジュニアからジュニアユースでは、まずしっかり「個」を育ててという感じでやっていますね。

――では、佐原監督が指導されているU-12世代で強調している部分は「個」の能力を伸ばすことですか?
佐原 どうしても個人の技術的な部分を今のうちにやっておかないと、ジュニアユースに上がった時にも本当に苦しくなってきます。特に6年生は、身体的に大きくなる子が周りに多くなってきて、ジュニアは8人制サッカーなので、能力勝負みたいになってしまうことがありますが、それに頼らずしっかりと技術的なところで戦おうと考えています。

――佐原監督がU-12に携わるようになり2年ほど経ちましたが、これまでの指導者の方も同様にやってこられたのですか?
佐原 そうですね。まずはやっぱり個人です。ベースとしてトップチームがあるので。もちろんサッカーはチームスポーツですけど、でも、個人個人というところが見られて上まで登っていくと思いますし、個人の良いところをしっかり伸ばしてあげて、という指導を育成としてやっています。

――8人制と11人制の違いはありますが、ポジションは色々とやらせてみるのでしょうか?
佐原 4年生の時は結構いろいろやらせてみますが、6年生になると、例えばこの選手がジュニアユース、ユースに上がった時、「こういうところで勝負をしていかなければいけない」ということが、なんとなく見えてくるので。その適正という部分で僕は6年生に対しては「こういうところで勝負していかなければいけないんじゃないの?」とアドバイスなどしています。

【子供たちの自主性・社会性の定着を目指している】

――サッカーと並行して、教育と言う部分も育成では大切な軸となります。心掛けている点、注意深く見ている点は何でしょうか?
佐原 もちろんサッカー選手になる前に、一人の人間です。サッカーを通じての人間形成は僕らもしっかりやっています。その中でジュニアの子は、特に試合の場所などには基本、送迎禁止にして個人で来るようにさせています。また、4年生や5年生はキャプテンを頻繁に変えたりしています。6年生になると大きな大会もあるので、基本1年通してキャプテンは決まりますが、4年生、5年生に関しては1カ月、2カ月に一回は変えながらやって、そのキャプテンが主導権を持って、「この試合は何時キックオフだから、じゃあここに何時に集まって、何時の電車に乗って、何時のバスに乗って」ということを、到着の時間から逆算して、自分たちで来させるようにしています。最初は特に保護者の方も含めてですが「子供だけで行けるのかな」という不安などがありますが、やっていけば慣れてきます。そういう自主性、社会性の定着を目指しています。あとは時間を守ることや、挨拶に関しては厳しく言います。

――サッカー選手である前に社会人として成長させる、ということですね。
佐原 1学年に12名選手がいますけど、プロになれるのはその中で0か1人、多くて2人という世界なので、残りの10人、11人くらいは社会に出て行きます。そこでも当然、挨拶や時間を守るといったことができないといけませんから。

――やはり、厳しく叱りますか?
佐原 言いますね。練習時間に間に合わなかったりしたら、帰らせたりすることもあります。

――Jリーグの育成組織や強豪のクラブは意識をしっかり持ったご両親がほとんどだと思いますが、そういった厳しさに拒否反応を示す方も中にはいらっしゃるかと思います。
佐原 試合会場で見かけることもあります。もちろん立場は違いますが、両親がいろいろな手助けをする場面が、結構見られます。それは子供にとっていいことだとは思いませんし、自分のことくらいは自分でせめてできるようにならないと。遠征の準備もそうです。その中で忘れ物が出てくることもありますけど、そこから学んでいけばいいと思います。全部が全部、親が協力してしまうと、子供は育っていかないですし、そういうことが、ギリギリの戦いになったらピッチにも出ます。自分のミスを他人のせいにしたり。そうではなく、しっかりと自分に目を向けて、自分に厳しくではないですけど、考えて行動できる選手は、ピッチの上でもその先のこと、先の先ぐらいまで考えてプレーをできますし、ポジションを取ることもそうです。やはり日常生活でわかりますね。

【このチームで一番になれないと、まずプロはない】

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写真=川端暁彦

――両親が子供を守ってしまう状況に付随しますが、日本の育成段階では、フィジカルの強さ、ボールを激しく奪いにいく意識が少ないという声も聞かれます。
佐原 確かに。僕は高校を卒業して、ブラジルのグレミオに行った経験がありますが、正直その違いを感じる部分ではあります。ただ、日本と僕の行った南米もそうですが、サッカーの歴史も違います。向こうは自分がサッカー選手になることによって、親、兄弟、親戚までも面倒を見られるようになります。本当に懸けているものが違うんですよね。それを今の日本に置き換えたら環境の違いもあります。ただ、厳しいとは思いますが、サッカーの根底は戦いだと思いますし、その中でぶつかり合いは当たり前で。ジュニアの子でも、結構痛がったりする場面があります、でもそこは、「やれないなら出ていいから」と。見ていて「これはダメだ。本当にケガだ」という倒れ方、痛がり方は自分も選手としてやってきたから、わかります。そういう感じでなければやるか、やらないかを聞いて「やれないならピッチから出ていいから」と、そう僕は接しています。球際とかだと、簡単に痛がることがクセになってしまいますし。メンタルな部分含め、このジュニア年代からやっておいた方がいいと思います。

――そういった“戦う”という意識を、街クラブのお父さんコーチまで周知することが大切だということでしょうか?
佐原 そうですね。僕らはこれを仕事としてやっていますし、このクラブにいる以上、トップチームを目指す、という目で僕たちは見ています。なので、子供たちに最初に言うことは「このチームで一番になれないと、まずプロはない」ということです。ジュニア段階での8人制サッカーに対してチームには12名いるので、4人はスタメンで出られないという現実に直面します。僕は競わせて、どんな相手でも、どんな練習試合でも、最初の1試合目はその時点でベストのメンバーを組んで試合に臨むと伝えているので、最初から出たいのであれば、普段から練習をやらないといけないし、プラス、チームとしてみんなが練習している時間は一緒なので、足りない部分をどこで補うのかといったら、やはり練習のない日にどれだけボール触っているかということです。そこを含めて僕はアプローチをしているので、後は本人が本当に最初から試合に出たいのであれば、やってこないといけないし、もっと言うと、プロになりたかったらさらにやらないとダメだろうし。僕はその部分を最初から伝えています。

――今お話しされたことやキャプテンの持ち回りのことは選手の自主性を作っていくということですね。
佐原 はい。「別に俺がプロになるわけじゃないし、プロになりたいんだったら行動しなきゃいけないんじゃないの」と言っています。社会に出ることになってからも大切なことです。

――神奈川県はスクールの激戦区でもあります。レベルを維持するため、心掛けていることはありますか?
佐原 現状でもそうだと思いますが、神奈川県のトップの子は(横浜F・)マリノスさんに行くと思います。それはここまでの歴史や、文化として日本サッカーを引っ張っている実績もありますし、今年でなくなってしまいますが、みなとみらい地区にあれだけの施設があって。それを考えたら、そこに入りたいと思うのは当然ですし、実際僕もそう思います。川崎ではセレクションをだいたい、9月、10月にやりますが、僕らはジュニア、ジュニアユースを通して入ってきた子を6年間かけてしっかり育てていこうという思いで、選手を加入させています。将来性のある子を、ジュニアからなるべく多くのコーチが見て、育成していこうというスタンスでやっています。1人に長い年月をかけて育てていこうという思いで。

――1人の子に多く人の考えや力が注がれて、きちんと育てていくというところが哲学の1つなんですね。
佐原 そうですね。それを今、育成としてみんなそういう意識でやっています。僕たちは長い年月をかけて、しっかり育てていこうというスタンスでやっています。

【バルセロナ相手にどこまで通用するのか、正直楽しみ】

――話は変わりますが、目前に迫ったU-12ジュニアワールドチャレンジ2015のお話しをおうかがいします。川崎フロンターレU-12は過去2大会、ともに出場しています。まずは振り返っていかがですか?
佐原 海外のクラブも参加する大会ですが、僕たちは一昨年にリヴァプールと対戦(1-7で敗戦)しました。その時、僕はU-10のコーチだったので、サポート役でした。監督になって参加した去年の大会は組み合わせ上、国外のクラブとできず……。

――やはり、やりたかったですよね?
佐原 そうですね。今年は開幕戦でバルセロナとやるので、子供たちのモチベーションは高いです。ただ、去年、一昨年のバルセロナを見ていると、早生まれの選手も出てくる。この早生まれっていう存在も違いますね。一歳上ということになるので。

――去年の大会では9番の選手などすごい存在感でした。
佐原 ちょっとズルいんです(笑)。でも、それを含めていい経験になると思います。確実にボールは支配される。ただ、守ってカウンターということは僕も考えていないので、自分たちも、どこと対戦してもボールは保持するというサッカーをやっているし、どこに出てもボールは保持できるようになってきているので、バルセロナ相手にどこまで通用するのか、僕自身も正直楽しみですね。去年と一昨年のバルセロナのサッカーを見ていると、大人のサッカーですよね。トップチームのやっているサッカーが、選手が小さくなったくらいのイメージなので、ちゃんとポジションを取って、ポイントポイントには特徴のある選手がいて。

――その試合を点で終わらせるのはもったいないですよね。その後にダノンネーションズカップ2015(モロッコで10月に開催されるU-12のFIFA公認国際大会)もあります。まだ、対戦する前で見えてくるのはなかなかないと思いますが、その先にどういった形でつなげて行きたいですか?
佐原 今大会が11人制で、ダノンは8人制です。8人と11人だと違うこともあります。ただ、外国人の選手たちのサッカー観は、この年代になったら大人のようなんです。でも、それに付随してしっかりとした技術を持っているし、戦いに来ていることは伝わる。そういうことを子供たちに感じてもらいたいです。あまり日本の子はサッカーのことを話したりすることがないので。海外の子は主張をするし、「俺は今のタイミングで欲しかったんだ」とか、見ていても試合中にそういったやりとりも頻繁にしています。一方で日本の子はあまりない。僕は選手には「俺がサッカーをやっているんじゃないから、自分たちで何か問題があるんだったら、ゲームの中で話して解決してごらん」と伝えてはいるんですが、なかなか難しいですね。サッカー理解力という部分を含めて、自分がプレーしやすいように相手に伝えることも大事で、遠慮をしていたらそういう選手は残っていけないだろうし、主張することは主張して、それで何か問題あれば、僕から話をすると子供たちには言っていますけど、なかなか習慣にならなくて。試合のリズムが悪くて、ハームタイムにベンチへ帰ってきても誰も何も言わない。「今、チームとしてうまくいってないんでしょ。自分たちで何か言うことはないの?」と言われないと話さなかったり。そこは海外の選手と違うと思います。

――そういった部分が出てくれば、成長した時にもっと戦える選手になると?
佐原 4年生とかだとなかなか難しいですね。理解力という部分含めて。どうしても「自分が、自分が」ということがあって。

――やはり別の国、別の人種の子と小さい時から試合することはたくさん経験した方がいいと思われますか?
佐原 絶対にいいと思いますね。この大会は日本でやりますが、ダノンではモロッコに行けるので、その経験は素晴らしいものになると思います。

――モロッコは成人の一般の方でも、なかなか行かない場所です。
佐原 はい。ましてやジュニア年代で海外に出てゲームすることは、昔はあまりなかったことです。僕らの頃、実際にそうでしたし。

【海外での厳しい経験をした人がしっかりと子供たちに教えなければ】

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写真=川端暁彦

――海外のチームとの大切さを考える反面、指導者の方では「日本だって見方を変えれば海外の1つのチーム。あんまり海外のチーム上で日本が下と強く意識をしない方がいい」という考えをお持ちの方もいます。そういった部分は感じられますか?
佐原 普段、試合のできないチームや、異国の地から来た選手たちはサッカーも違います。だけど、サッカーはシンプルにゴールを奪い合うスポーツで、内容は違いますけど、そういう経験もすごく大切だと思います。国が違うとサッカーも全然違うんですよね。サイズがまず違ったり、球際もそうです。ずる賢くじゃないですけど、日本だけでやっていたら、経験できないことですね。

――その中で日本のジュニア年代の選手たちは世界を舞台に実績を残しています。何が上回っていますか?
佐原 ジュニア年代では技術に関しては日本の子の方がうまいです。「止めて蹴る」だったり、ボールを扱うテクニックは優れていると思います。ただ、海外に目を向けると、サイズがあることや、単純なキック力の差、もう一つは技術のうまい子は、飛び抜けて抜群にうまいです。日本の子は平均的にできますけど、海外の本当にうまい子は飛び抜けてうまい感じがあります。

――指導の違いなんでしょうか?
佐原 持って生まれた部分もあるかもしれません。あと、勝負事に関して貪欲ですよね。負けたくない気持ちが、すごく伝わってきますから。海外で上に行く、ステップアップする部分は、厳しいと感じます。本当にいい選手だけが残っていくような感じです。

――入り口が狭いということですか?
佐原 そうですね。日本よりもそのイメージが強いです。僕が行ったグレミオでも、一緒にやっていた子が翌日になったら急に来なくなったりという環境で。でも、それが多分当たり前の世界なんだと思います。ですから、必死さが違います。その日の練習でも紅白戦でも。そこが日本にはないですね。環境的な側面があると思います。そういう必死さはちょっと違いますね。日本ではサッカー選手になれなくても、別の仕事に就いたり、違う道があります。でも、海外の子供たちは人生を賭けているというか、その想いがあれば、一日一日の過ごし方も変わると思います。

――そこを変えるのは、やはり難しいのでしょうか?
佐原 自分がブラジルに行った10カ月で、そこは違うなと正直思いましたし、そういう経験をした人がしっかりと伝えていかないと、多分わからない世界だと思います。今、日本人の選手が海外の様々な国に出ていく時代になったので、そういう選手たちが引退して、指導者になった時に、伝えてあげないといけないと思います。

【自分たちのリズムで主導権を持って、プラス結果にこだわる】

――少し話が戻りますが、トップチームに川崎の育成組織出身の選手が増えていってほしいと思いますか?
佐原 ジュニア部門を立ち上げた時の1期生の子が、今年2人上がりました。三好康児と板倉滉なんですけど。僕らもトップチームに上げることを目標にやっていますし、どれだけの選手を上につなげていけるかも大切です。だから1期生2人が上がったことは、僕らだけじゃなく、スタジアムでメンバー紹介の時、すごく大きな拍手をもらっていましたし、サポーターの方の期待値も非常に上がっていると思うので。ただ、これは上げるだけではなく、上がった選手がどれだけ主力として、2、3年後にやれるかが大事で、トップチームに上がることは前提として、試合に出ないと、育成部の存在価値はありません。試合に出る選手をたくさん育てていければと思います。

――最初のお話に立ち返りますが、将来までの設計をしっかりしてあげるということですね。
佐原 そうですね。実際、子供たちもホームゲームは絶対見にいくということで、年間チケットを渡しています。

――練習も大事ですが、試合を見ることも大切です。土日に試合があって、見られないことも多かったりします。
佐原 どうしても試合で外に出る時もありますが、基本はゲームを見に行く前提で予定を組んでいます。トップチームのゲームは何時だから練習は何時、という風に合わせたりとか。見た方がイメージもできやすいこともあります。もっと言ってしまうと、今の子供たちは、あまりサッカーを見ないんですよね。動画でいいプレーだけを見たり、ハイライトしか見ないとか。そうではなく、トップチームのゲームを見て、自分がやっているポジションは子供たちはわかっていますから、同じポジションの選手がボールの来る前にどういう準備をしていて、どういう駆け引きをしているのかというところまで見ろと伝えています。

――最後におうかがいします。U-12ジュニアワールドチャレンジ2015は勝ちにいきますか?
佐原 僕自身、負けるのが嫌いなので、もちろん出る以上はどの大会でも、頂点を目指してやります。その中で、子供たちにも言っていますが、いい内容の試合をしようと。いい内容というのは、普段自分たちがやっていること、僕から求めていることもそうですが、守備が嫌いな子たちなので、ボールを大事にして、保持しながら、自分たちのリズムで主導権を持って、プラス結果というところも含めて、こだわろうと言っているので。当然、頂点は目指しますが、その中でいいサッカーをして、結果がついてくれば一番いいかなと思っています。

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