2017.01.05

2年前は応援団長…前橋育英の苦労人・FW人見大地が“最後の冬”に放つ存在感

滝川第二戦でゴールを挙げた人見 [写真]=兼子愼一郎
世界各国を放浪するサッカージャーナリスト。巷ではユース教授と呼ばれる。

 1年時は応援団長、2年時は一度もトップチームでプレーできず、3年生になっても秋までレギュラーをつかめなかった男が、上州のタイガーブラック集団の最前線で絶大な存在感を放っている。

 前橋育英の3年生FW人見大地は、ベスト4を懸けた第95回全国高校サッカー選手権大会準々決勝、滝川第二戦でもパワフルかつ正確なポストプレーと裏への抜け出しで、前線で起点となり続けた。22分には、ロングフィードを高い打点のヘッドで中央に飛び込んだMF長澤昴輝に正確に落したことで、PKを誘発。1-0で迎えた77分には、自ら得たPKをきっちりと決め、自身待望の選手権初ゴールを挙げるなど、2-0の勝利に貢献した。

 屈強なフィジカルと正確なポストプレーが最大のウリの彼だが、もともとフィジカルが強い方ではなかった。だが、高1の11月に内側靭帯を負傷した時、リハビリの先生から体のバランスの悪さを指摘され、そこから意識的に筋トレや体幹トレーニングに打ち込んだ。「彼は非常に真面目。黙々とトレーニングできる選手」と山田耕介監督が評したように、指摘されたことは真摯に受け止め、地道に積み上げられる人物だからこそ、高校で戦えるだけのフィジカルを手に入れることができた。

 それでも高2の時はBチームで県リーグを戦う日々を送り、3年になってもエースストライカー・馬場拓哉の陰に隠れる形で、コンスタントに出番を得ることができなかった。しかし、その馬場が負傷したことで、チャンスがやってきた。

「拓哉は絶対に負けたくない仲間だし、これまでやってきたことを出し切ろうと思った」

 相当たる覚悟で彼はこのチャンスをモノにした。選手権県予選で先発出場すると、2回戦の難敵・伊勢崎商業戦でゴールを記録。それ以降はゴールこそなかったが、前線で体を張り続け、選手権県予選3連覇に貢献した。

 彼が山田監督の信頼をがっちりつかんだのは、11月26日のプリンスリーグ関東第16節、桐光学園戦だった。この試合で彼は鮮やかな先制弾を叩き込んだ。試合は2-2の引き分けに終わったが、彼の存在感は際立っていた。

「ようやく来てくれた感じだね。最後の最後で来てくれた。だから、今大会も24番という大きな番号なんだよ」と、山田監督が目を細めたように、今大会でもけがから復帰した馬場をサブに回して、堂々とスタメンでプレー。馬場が途中出場から結果を残す中でも、彼は初戦からずっとスタメンを張り続け、2回戦の市立船橋戦、3回戦の遠野戦ではフル出場。さらにすべての試合で途中から馬場と2トップを組み、スムーズな連携を見せた。

 そして、チームのために前線で起点を作り続けたことで、冒頭で述べたように、滝川第二戦でついに選手権初ゴールが舞い込んできた。1-0で迎えた77分、カウンターからドリブルで仕掛けると、鋭い切り返しが相手DFのハンドを誘い、PKを獲得。これを冷静に決めて、勝利を確実にチームに引き寄せた。

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「両親からの教えで、『諦めずに努力しろ』と小さい頃からずっと言われていた。小さい頃からの教えが今に生きていると思います。これまで悔しい気持ちばかりでしたが、それが今につながったと思います」

 次なるステージは埼玉スタジアム2002。高1の時、人見は埼玉スタジアムのスタンドで応援団長として声を張り上げた。2年の歳月が経ち、今度は自らが声援を浴びる番になった。さらに、準決勝で対戦する佐野日大は彼の出身地である栃木の代表校。中学時代のチームメイト、MF野澤陸もいる故郷の代表を相手に、彼は再び存在感を示し、ゴールを決めることができるのか。

「負けたくないです。最初からゴールを奪いにいきたい」

 3年間、コツコツと積み上げてきた苦労人が、埼玉スタジアムで有終の美を飾るべく、さらなる爆発を誓った。

文=安藤隆人