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起死回生の同点弾…青森山田がメンタルの強さを発揮して“ベスト16の壁”を撃破

2016.01.03

青森山田が桐光学園を下し、ベスト8に進んだ[写真]=兼子愼一郎

 ずっと青森山田高校にとって立ちはだかり続けていた『ベスト16の壁』。この壁を劇的な展開で打ち破った。

 全国高校サッカー選手権において、青森山田はこれまで9回も3回戦の壁に阻まれてきた。2002年度から2006年度にかけて、実に5年連続ベスト16敗退。2007年度から2008年度は2年連続で初戦敗退。そして2009年度に柴崎岳鹿島アントラーズ)、櫛引政敏清水エスパルス)の2年生タレントを擁し、この壁を打ち破って準優勝を果たし、ついにその壁を払拭したかと思われたが、その翌年から4年連続でベスト16敗退。そして昨年度は初戦敗退を喫した。

 黒田剛監督が就任してから、昨年度までで18年連続で選手権に出場している中で、11回もベスト16に進んでいること自体がすごいことだが、ここまで阻まれ続けると、もはや『鬼門』としか言いようがなかった。

 19年連続出場となった今大会、12度目のベスト16に進出すると、後半アディショナルタイムに入る前までは、「またこの壁に阻まれるのか」と誰しもが思う展開だった。

 32分、43分と桐光学園高校のU-18日本代表で来シーズンのジュビロ磐田加入が内定しているエース・小川航基に2ゴールを許し、その後も攻めこまれる厳しい展開だった。しかし、ドラマの伏線はあった。それは58分の出来事。小川の突破をGK廣末陸が倒し、PKを与えてしまう。しかし、小川のキックはバーの上を越えていった。

 この瞬間、これまで鬼門であったベスト16の一戦が、青森山田に微笑みかけたのだ。このチャンスを青森山田の選手たちは逃さなかった。GK廣末を中心とした守備で最後のところは体を張り、ボールを奪うと素早く前線につないでエースの神谷優太を軸に、カウンターを狙い続けた。さらに黒田監督はMF吉田開田中優勢、FW成田拳斗と攻撃的なカードを次々と切って、攻めきる姿勢を打ちだした。

 後半アディショナルタイムが4分と提示される。だが、選手たちに諦めるという言葉はなかった。80+2分に右CKを得ると、GK廣末がゴール前に走っていく。「ヘッドで合わせる技術はないけど、少しでも相手のブラインドやマークを引きつけられたらいいと思っていた」と、MF高橋壱晟のキックにゴール前に飛びこむと、DFが引きつけられ、ファーが空いた。ファーでDF近藤瑛佑がヘッドで折り返すと、ここに成田が飛びこみ、ヘッドで押しこんだ。

 1点差。さらに攻め立てる青森山田は、80+4分に左スローインを得た。脅威の40メートルスローを投げるDF原山海里がボールを持つと、再び廣末が上がってきた。ゴール前に放たれたロングスローは、ファーサイドで待つ吉田の頭に吸いこまれ、起死回生の同点弾が生まれた。この時、時計の針はアディショナルタイム4分(厳密に言うと4分59秒)の数秒前だった。

 再開直後にタイムアップのホイッスル。ベスト16の壁を打ち破ろうとする青森山田の強い意志が、勝負をPK戦までもつれこませた。そして、PK戦では全員成功で迎えた桐光学園5人目、小川のキックを廣末がセーブし、勝負あり。

 この劇的な結末は、決してフロックではない。なぜならば、今年は苦しい試合をモノにできる強さが持ち味だったからだ。高円宮杯U-18サッカーリーグ2015プレミアリーグEASTでも、何度も土壇場で追いついたり、試合をひっくり返してきた。その強さがチームとしての『鬼門』で発揮されたことは、大きな意味を持つ。

「この勝利は大きい。全員でつかみ取ることができた勝利」と廣末が語ると、黒田監督も「選手たちが最後まで投げださずに勝利を求めてくれた。それはプレミアリーグなどで、自分たちが何度もこういうことを起こしてきたからこそ。その自信が出たと思う。彼らの心の勝利だ」と、彼らの精神に拍手を送った。

 突き破った壁の先に、見えるもの。それは先輩たちが成し遂げられなかった冬の頂点に立つこと(インターハイは優勝経験あり)。諦めることを知らない彼らの歩みは、まだまだ止まらない。

文=安藤隆人

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