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昨年の悔しさを糧に延長戦での2得点…出し切る姿勢を貫いた星稜FW森山泰希

2015.01.12

延長後半で逆転弾を含む2ゴールを挙げた森山泰希 [写真]=瀬藤尚美

 95分、そして110分――。森山泰希が昨年の悔しさを生かした、延長戦の2ゴールだった。

 昨年の第92回高校サッカー選手権の決勝戦も、森山は先発出場。後半25分にはリードを2点に拡げるPKも決めている。その後の3失点は、森山が後半30分に交代でピッチを退いてからだった。

「今年はフル出場できる選手になる、という目標を最初に立てた」と森山は振り返る。練習試合、プリンスリーグ北信越と、時には実力差のある相手に“流せる”展開もあっただろう。しかし森山は「どこまで続けられるのかというのをどんな相手でも、どんな展開でも意識してやっていた」と自分のプレーを振り返る。ただフル出場するのでなく、“出し切る”姿勢を貫くことで、自らの成長を促す。それこそ森山が自らに課してきたハードルだった。

 木原力斗監督代行は「森山のいいところは得点を取る以上に、チームのために必死に走ること。誰よりも身体を張って、チームを勢いづけるという、彼にしかできない役割がある。今日も2点を取ったけれど、そこまで必死に守備もしていた」と森山の特長を評する。前半から相手ボールを追い、味方を生かすための無駄走りもしつつ、延長戦になっても強烈なシュートで二度もネットを揺らせる。そんな疲れ知らずのプレーが、森山の本領だ。

 準決勝まではノーゴールと、結果だけ見るとFWとして物足りない状況が続いていた。しかしチームが守備に追われ、前線が薄い中でも、星稜の2トップは味方のクリアやロングボールを実によく生かしていた。「最初は合わなかった」という大田賢生との2トップの連係が、今大会は攻守でチームを助けた。

 森山は「ハイボールなら、賢生が逸らせるときは裏に出る。相手が勝ちそうだなと思ったら、後ろについてこぼれを拾う。こういうときはこうしようと、一個一個のプレーで言い合っていた」と、ここまでの積み重ねを振り返る。2人が縦関係になるときは森山が後方に付き、セカンドボールの確保や相手ボランチのチェックに走る。そういう忠実さが光っていた。森山は間違いなく、大田の3ゴールと星稜の決勝進出を支えていた。ジャガイモのように武骨な風貌、がっちりした体躯から森山は“オラオラ型”に見えるかもしれない。しかし実は“気遣い”ができるタイプだ。

 愛知県生まれで、名古屋のアカデミー出身。苗字は森山で、ゴリゴリ仕掛けるプレースタイルが特徴――。そこはどうしても、名古屋グランパスなどで活躍した往年のストライカー・森山泰行とイメージがダブる。しかし彼は森山氏のプレーを生で見たことがなく、血縁についても「息子とか言われるんですけれど、全然関係ない」とのこと。

 森山が目標に挙げるのはイングランド代表FWウェイン・ルーニーだ。ピッチ狭しと駆け回り、味方を活かしつつも、豪快なシュートを決めるガッチリ体型のアタッカー。森山とルーニーの間には、そういう類似点がある。この決勝戦も「ちょっとだけルーニーを意識してやっていました」(森山)。

 逞しく動き回り、味方を助ける。ここぞという場面では豪快に決める――。そういうプレーが、仲間や指揮官に好まれないはずはない。日本体育大学に進む森山だが、次のステージでは悔しさでなく優勝の喜びを糧に、また新たな成長を見せてくれるはずだ。

文=大島和人

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