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泥臭さと伝統の流儀で印象付けた強さ…“最強のチャレンジャー”となった静岡学園

2015.01.02

佐賀東戦に先発した静岡学園のメンバー [写真]=内藤悠史

 スコアは6-0。“静学強し”を強烈に印象付ける完勝だった。

 4年ぶりの出場となる静岡学園だが、今季は決して期待値の高い世代ではなかった。川口修監督は「例年に比べるとかなり技術的に落ちる」とこのチームを評する。一方で「真面目に謙虚に守備をしながら、一つのチャンスをモノにしていく」(川口監督)という味わいもある。傑出した個はいなくても、泥臭く戦えるところが今年の特長だ。佐賀東戦でも前から足を緩めず、全員でしっかりボールを追うハードワークが光った。

 攻撃は6ゴールをそれぞれ別の選手が挙げたように、「どこからでも点を取れる」(川口監督)という強みがある。今季はJクラブに内定している選手がおらず、特別なエースも見当たらない。しかし見方を変えれば粒揃いで、潰しどころのないチームだ。

 九州の強敵・佐賀東を相手にスコアはもちろん、シュート数も17対2と圧倒した。前半に3点を挙げても攻める姿勢を緩めず、交代選手が入ってもクオリティを落とさなかった。指揮官も「みんなで献身的に前から守備をしながら、追加点も取れた。課題の決定力不足も、今日は6点取れて出来過ぎ」と快勝に頬を緩める。

 チームは5月の総体予選で聖隷クリストファー高に屈したあと、布陣を4バックから3バックに変更した。DFラインの中央を任される石渡旭主将は「(4バックのときは)サイドバックが上がった後を突かれていた。3バックになってから割り切れるようになった」と違いを口にする。薄くなりがちだった最終ラインに人を割くことで、守備の安定感が増したのだという。

 とはいえ泥臭く、守備的といっても彼らは静学。今日もMF名古新太郎がヒールリフトで場内を沸かせ、DF加佐怜人は最後尾からドリブルで攻め上がっていた。“静学基準”では抑え気味でも、出場校の平均値と比べれば彼らは間違いなく上手くアグレッシブ。手堅さを追求するのでなく、楽しいプレーで“魅せる”姿勢は、40年に渡って維持されてきた彼らの流儀である。

 3回戦の相手は優勝候補筆頭の東福岡に決まった。守備へ過剰に人数を割き、自陣で耐える戦い方は静学の良さを出すモノでない。川口修監督は「強いのは分かっています。だけど次は個の勝負、個の技術で相手を上回りたい」と3回戦に向けた抱負を口にする。

 静学は東福岡と違ってJリーグに内定した選手がおらず、フィジカル面も劣勢は明らかだ。夏の高校総体で全国を制した東福岡に対して、静岡学園は県8強止まりだった。しかし技巧に泥臭さ、手堅さがブレンドされた今季の静学は、敵に回すと厄介なチームへと一皮むけている。佐賀東戦は低い期待値を跳ね返し、5月の苦杯から這い上がってきた彼らが、“最強のチャレンジャー”になったことを証明した試合だった。

文=大島和人

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