創部初のインカレ決勝に臨む関西学院大 [写真]=内藤悠史
第63回全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)決勝が21日11時に味の素フィールド西が丘で開催。初の決勝進出を果たした関西学院大学(関西第3代表)は、日本一の座を懸け流通経済大学(総理大臣杯優勝枠)と対戦する。
今季は兵庫県代表として出場した天皇杯2回戦で、J1のヴィッセル神戸を破る金星を挙げた関西学院大。しかし、「関西制覇・日本一」を目標に掲げながら関西学生リーグは3位、総理大臣杯全日本大学サッカートーナメントはベスト4に終わり、成山一郎監督は「決勝で勝つために全部員で取り組んできた」と、並ならぬ思いで決戦に臨む。
準決勝までの4試合でわずか1失点と守備の堅さが際立つが、主将のDF福森直也(4年・金光大阪高校出身、大分トリニータ新加入内定)は「やられてもおかしくないシーンはたくさんあった」と振り返る。2回戦の鹿屋体育大(九州第1代表)戦では、相手に2度PKを与えたが、ゴールポスト、GK村下将梧(3年・東海大付属仰星高校出身)の好セーブに救われた。準々決勝の仙台大(東北代表)戦は、前半こそ相手を圧倒したものの、後半は選手交代を機に仙台大がペースを握る。何度もゴールに迫られながらも、最後はDF陣が体を張り1-0でしぶとく勝利をつかみ取った。福森は「最後まで諦めず、少しでも相手にプレッシャー与える守備ができた結果。そういった細かいプレーが失点1に繋がっている」と、手応えを口にしている。
守備の安定は、心理的にもチームに良い影響をもたらしている。関西対決となった準決勝の阪南大(関西第1代表)戦は、開始早々2分に今大会初失点を喫したが、成山監督が「阪南大は強いので0-1は許容範囲内」と言うように、失点後もチームの士気が下がることはなかった。後半の半ばまでは拮抗した展開が続いたが、システム変更で修正を図った関西学院大は72分に同点、87分に勝ち越しと鮮やかな逆転勝利を収める。決勝点を決めたFW池田優真(3年・作陽高校出身)が、「失点してもDFラインが落ち着いて耐えてくれていた。いつも通り自分たちのサッカーをしていたら逆転できると信じてやり切れた」と言えば、DF福森は「チームの雰囲気は最高。前線には特長のある選手がいるので、後ろが抑えれば1試合に1点は取れる。後半は徐々に自分たちの流れになったので、とにかく後ろは頑張ろうと声を掛けていました」と、チームは一つにまとまっている。
決勝の相手は、夏の総理大臣杯準決勝でPK戦の末、苦杯をなめた流通経済大だ。選手たちも当時の悔しさを鮮明に記憶しており、特にエース呉屋大翔(3年・流通経済大付属柏高校出身)は「大学に入って初めて準決勝まで行って、自分は何もできずにPKも外して、悔しい思いをした。チームとして勝ちたいのはもちろん、個人的に一番勝ちたいチーム」と、人一倍リベンジに燃えている。流通経済大には自身の特徴を熟知する高校時代のチームメイトが多く、これまで以上に厳しくマークされることが予想される。「動き出しや技術よりも、最後はゴールに対する執着心で決まると思う。(総理大臣杯)準決勝ではですごい抑えられた印象なので、今回は(相手DF陣が)どうしても手をつけられないような状態になりたい。僕が何とかしたい」(呉屋)。また、福森は「前回は呉屋に頼り切りのサッカーをしてしまった。流経は守備が堅く、攻撃も特長のある選手が多い印象ですけど、自分たちは(総理大臣杯で)延長まで守りきれたので、1点取れれば無失点で勝てる自信はあります」と意気込む。
決勝戦では、ここまで全試合に出場してきたMF徳永裕大(2年・ガンバ大阪ユース出身)とMF小林成豪(3年・ヴィッセル神戸U-18出身)が出場停止となる。しかし、福森は「ずっとチームの中心としてやってきた選手なので痛いですけど、誰が出ても同じようなパフォーマンスができる自信はあります。選手層の厚さは流経にも負けてないですし、代わりに出た人が違った特長を出してくれれば、また違った関学、強い関学を見せられる。登録メンバー20人でそういうサッカー見せていきたい」と不安を吹き飛ばした。
攻守ともに前に前に。チーム全員が意志統一して取り組んできたアグレッシブな関西学院大のサッカーを決勝でも見せることができるのか。「勝ってみんなで喜ぶことだけを想像してやっていきたい。90分とか延長とかPKなんてどうでもいいから、とにかく勝てればいい、それだけ」(成山監督)。『関西代表』としてのプライドを懸け、なりふり構わぬ覚悟でインカレ初制覇を目指す。
(取材・文=平柳麻衣)