[写真]=佐藤博之
文=安藤隆人
現行の国立競技場のラストは、あまりにも出来過ぎたシナリオが用意されていた。サッカーの素晴らしさと怖さ、国立という場所に君臨する『女神』と、潜む『魔物』。これをまざまざと見せつけられた。
試合終了間際まで、優勝の2文字は星稜にあった。しかし、87分のMF高浪奨のゴールで会場の雰囲気は一変し、ラストワンプレーで試合が終わるというときに、DF竹澤昂樹の突破を、星稜DF森下洋平が足を引っかけて倒し、PKを献上。これを大塚一朗監督の息子であり、キャプテンである大塚翔がきっちり決めた……。
まるでシナリオライターがいるかのような流れで、試合は2-2の振り出しに戻り、勝負は延長戦までもつれ込んだ。そして極めつけは、今まで一度もロングスローを投げたことがなかったDF城山典が、人生初のロングスローを繰り出し、それがMF村井和樹の決勝弾を生み出した。
やはり国立という名の魔物と女神が、面白いように『勝負の綾』を紡ぎ出している。時には必然に、時には気まぐれに。
全国の高校サッカー部員たちを魅了してやまない国立競技場。それが今大会を最後に改修に入る。新しい国立競技場の完成予定図を見せてもらったが、あの味のあるスタジアムとは違う、かなり近代的で、大きなスタジアムに変わる予定になっている。
『温故知新』。
その予定図を見て、正直悲しい気持ちになった。新しく生まれ変わることはいいが、趣が全くなくなってしまうのは残念で仕方がない。
今の国立に潜んでいる魔物と女神は、いったいどこに行ってしまうのか。来年からの決戦の地である埼玉スタジアムに引っ越しをするのか、それとも生まれ変わった国立に引き続きいてくれるのだろうか。
最後に強烈なフィナーレを見せてくれた国立と『彼』と『彼女』に思いを馳せながら、新しい歴史を受け入れる準備をしようと思う。
文=安藤隆人