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京都橘のエース小屋松知哉 『最注目株』として迎えた今大会の最後

2014.01.11

[写真]=大木 雄介

文=安藤隆人

 小屋松知哉の3年間は終わった。昨年、選手権の主役の一人となり、得点王&準優勝という、サプライズを起こした。

 今でこそ、小屋松の存在は全国に知れ渡っているが、あの選手権までは『無名』な存在だった。

 京都橘というチームは良いチームではあった。ここ数年、プリンスリーグ関西で力をつけ、いずれかは全国に出てくるだろうと思っていた。その流れの中で、小屋松知哉というスピード溢れる2年生ストライカーの存在を耳にし、実際にプレーをチェックしに関西にも行った。

 だが正直、ここまでのスターになるとは思わなかった。その年の京都で代表権を取る有力候補は東山と目されていたし、京都橘は3番手だった。しかし、代表権を勝ち取ると、小屋松と3年生FW仙頭啓矢(現・東洋大)の2トップが、選手権で大暴れ。彼はその才能を一気に開花された。

 彼の成長を促したのは“自信”だった。自分は全国でも十分通用するという確信を得たことで、これまで眠っていた自分の潜在能力を一気に目覚めさせた。彼の変化を中学時代のチームメイトも感じており、京都府内のライバル校に進学したある選手は「知哉は間違いなく選手権で変わった。今じゃ堂々とプレーしている」と驚いていたほどだった。

 選手権で得た自信はプレーだけでなく、ピッチ外の言動も大人した。もともと彼はクールで、しっかりと考えて言葉を発することが出来るが、この1年間彼を取材してきて感じたことは、言葉のバリエーションや落ち着きぶりが着実に大人の雰囲気になったことだった。

 『最注目株』として迎えた今大会。強烈なプレッシャーの中でも、彼は自信を持って自分のプレーを披露した。最大のハイライトは準々決勝で、優勝候補筆頭の市立船橋を、高い技術を集約させた2ゴールで粉砕した。

 そして、迎えた2年連続の国立。昨年は大きく躍動した舞台で、彼は星稜MF平田健人の徹底したマンマークと、寺田弓人と藤田峻作のCBコンビの連動した守備に苦しみ、無得点のまま準決勝敗退となった。

 「マンツーマンをやって来るとは、思っていなかった。でも、そこで周りを活かしたり、結果を残せなかったという事は、まだまだ力不足だと感じましたし、最後の試合で決めることが出来ず悔しいです」と、試合を振り返ってこう話すと、ここからが彼らしかった。

 記者から「優勝を義務づけられているような中での戦いでしたが、どうでしたか?」という質問を受けると、「周りからはそのような意見もありましたけど、サッカーには絶対というのはないのですし、これが高校サッカーの面白いところだと思いますので、それがこのような形で出たのかなと思います」と冷静に返した。

 最後まで彼らしさをみせた。この先、名古屋に入団しても、ステップアップしていく過程の中で、彼らしさを貫いてほしい。もちろん自信と落ち着きを年々増大させて……。

文=安藤隆人

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