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ミャンマーサッカーのカリスマ、東南アジアでその手腕をこれから 2017ミャンマーサッカーを振り返って

提供:ミャンマーサッカー協会

 ミャンマー、2017年2月。首都ヤンゴンが驚きと歓待であふれた。FIFA会長のジョヴァンニ・ヴィンチェンツォ・インファンティーノ氏の姿がそこに。ミャンマーサッカー界で念願のミャンマーフットボールアカデミーの開校記念式典にのために来緬した同氏。今、世界のサッカー界の中心人物である同氏の隣に、ミャンマーサッカーを今まで、そしてこれからも牽引していくであろうリーダー、ミャンマーサッカー協会会長のZaw Zaw氏が。
 
同氏はサッカー関係者にとどまらず民衆からも人気のあるカリスマとして、近年のミャンマーサッカーの改革に取り組みんできた。今回のミャンマーフットボールアカデミー設立にあたっても、設立費用5億円のうち半分以上を同氏が管理するAyeyarwady財団が拠出したという。同氏の取り組みが少しづつ、しかし確実に国内外に成果として表れてきたことを感じた1年をここで振り返ってみたい。

■国内リーグ:Myanmar National League

 12チームで2017シーズンをスタートしたMyanmar National Leagueだが、観客動員やチーム運営などまだまだ改善を目指すべき課題があるものの(今シーズン途中で1チームが財政難によりリーグ撤退)、毎年進歩をみせている。代表の活躍が同国サッカー界一番の起爆剤であることは以前変わらないが、今シーズンは国内リーグ2巨頭のYangon UnitedとYadanarbonをおさえてShan Unitedが初優勝を。国内選手層が厚くなり、現地サッカー界の次のステージにむけたエコシステムが好転し始めた兆しともとらえられる。

 6月、そのミャンマーサッカー界のポテンシャルに日系企業が反応した。Myanmar National Leagueのリーグスポンサーに、クレジットカード事業を展開するJCBが名乗りをあげる。ミャンマーでの事業本格スタート以来、現地でCSR活動にも力をいれてきた同社は早くからミャンマーでのサッカー人気を評価。今回の決定にふみきったその背景には前述のミャンマーサッカー協会会長Zaw Zaw氏の親日も追い風となっているようだ。

 同氏は若いころに渡日し、その時に日本で皿洗いなどの仕事をして貯めた資金で事業をスタートさせ、同じく日本で経験し東南アジアでは実現が難しいといわれる日本の商習慣、特に仕事の質にならい事業を大きく育て、現在はグループ全体で従業員1万7千人をこえ10種類の事業にとりくむコングロマリット、Max Myanmar Holding Co.,Ltdの会長を務める生きる伝説のような人物。

 JCBのリーグスポンサードは、ミャンマーのサッカー人気、ビジネスシナジー、そしてZaw Zaw氏との人としての信頼関係、これらが見事にマッチングした結果といえる。

■未来への投資:SEA Games、そしてSuzuki Cupへ

 2017年の代表のハイライトは、8月にマレーシアで開催された東南アジア各国で競われる東南アジアのオリンピックともいわれるSEA Games(東南アジア競技会)だ。ミャンマーU22代表はこのSEA Gamesにそなえ、事前の6月にKBZ Cupと称してカンボジアU22、香港U22、そして日本大学選抜チームを招待して大会を開催した。

 そして7月にはマレーシアU22との親善試合、さらに日本の流通経済大学とも親善試合を実施し、十分な実戦経験を踏んで大会にのぞんでいる。大会の成績は予選リーグを突破したものの前回大会よりもふるわず4位で終了したが(前回2015年大会は準優勝)、各試合で勝利の後はピッチ上でただちに勝利ボーナスがサポーター(主にはミャンマー有力企業)から振舞われるなど、代表への期待、コミット、熱量の高さがうかがい知れる様子がfacebook上に飛び交った。

 さらに8月、U18ミャンマー代表はイタリアの名門とホームで試合をすることになる。Zaw Zaw氏が保有するAyeyarwady銀行の創立7周年にあわせ、Inter MilanのU18をミャンマーに招待。U18とはいえ世界に名だたる名門クラブの招致に成功し、貴重な国際試合の経験を積むことになる。そして12月には日本のJFL選抜との試合も開催。下のカテゴリーでは地方都市マンダレイのアカデミーで元Jリーグ磐田で活躍した古賀琢磨氏が監督としてU12の指導にあたっている。

 前述のSEA Gamesより興味深いコメントを紹介したい。「タフで速い。準決勝のミャンマー戦が一番難しい試合だった」。今年のSEA Gamesで優勝を決め今や東南アジアで頭ひとつぬけたポジションを確立しつつあるタイのチームマネージャーが大会を振り返って答えたインタビュー内容だ。ミャンマーの今までの投資が少しづつ実を形になりつつある、といえるのでは(年代は異なるが12月にベトナムで開催された 2017 International U-21 Thanh Niên Newspaper Cupではそのタイに勝って3位に入賞している)。

 そして11月、さらなるビッグニュースが舞い込んだ。日系の航空会社、ANAがミャンマー代表のスポンサリングを発表した。吉本興業を代理店とし、ANAによる代表チームのオフィシャルエアラインスポンサーが実現した。ミャンマー代表は今後の活動に向け、文字通り力強い大きな翼を得たことになる。これも親日のZaw Zaw氏だからこそ実現したスキームと感じてしまうのは筆者だけだろうか。

 2018年は11月に東南アジアの各国代表が戦うSuzuki Cupがひかえている。今から楽しみで仕方がない。

■ミャンマーサッカーの今後、カリスマのこれから

 9月、インドネシアのバリで行われたAFF Football Awards 2017(筆者ブログ参照)。グランド内外での活動がAFF(東南アジアサッカー協会)への貢献として評価された者に与えられるASEAN Good will Awardに、Zaw Zawが表彰された。今後、ASEANでより存在感を高め影響力が増していくことが予測されるが、冒頭のアカデミー開校式典でFIFA会長をミャンマーに招待できたほどの手腕。さらなる改革にむけ大鉈がふるわれていくことが期待される。

 年末にはトップ代表のエースで国内No1の人気を誇るKway Ko Ko選手(元Yangon United)がタイのChiangrai Unitedに移籍を発表。おなじくSEA Gamesで得点王タイの結果を残したAung Thu選手(元Yadanarborn FC)がタイのPolice Tero F.C.への移籍を発表した。ミャンマーサッカー界に希望が広がるトピックスだ。彼らの国外での活躍は、更なる代表人気を押し上げることは間違いない。

 そんなスター選手にあこがれる子供たち、グラスルーツへの働きかけも全国で活発だ。担当者と話す機会を持てた筆者だが、熱のこもった将来にむけた計画を語っていたのが印象的であった。このグラスルーツでは、国内リーグのスポンサーとなったJCBとMyanmar National League自体が現地サッカー協会と協力し、日系のサッカー事業会社GFAのオーガナイズのもと代表選手も交えたサッカー教室を12月に実施している。

 課題とみるか、伸びしろとみるか。たとえば2017は代表でタイトルにつながる成果はなく、またAFF選出のベストイレブンにミャンマー選手はゼロだ(タイ4名、インドネシア4名、ベトナム1名、マレーシア1名、シンガポール1名)。まだまだ国際舞台で勝っていくためには進むべき道のり、乗り越えるべき壁があるのが現実だ。

 最後に、2017年の冒頭に外国メディアFox Sportsより発表された記事でしめたい。

A⁻ タイ
B ミャンマー
B⁻  フィリピン、インドネシア
C シンガポール、カンボジア
D ブルネイ、ラオス

 東南アジア各国サッカーをABCDで評価したところ、ミャンマーサッカーはBとのこと。筆者個人的には納得感のある内容だが(筆者ブログ参照/外部リンク)、この評価、とてもカリスマが満足しているとは思えない。つい5年ほど前は通信インフラもままならかったミャンマーでは急速な経済発展がすすみ、世界の他国同様にもれなくスマホも浸透しだした。サッカーの進化はどれだけスピードがあがり、どこまで進むのか。そしてミャンマーサッカーのカリスマは東南アジアでもカリスマとなりえるのか。2018年もミャンマーサッカーから目が離せない。

文=斉藤泰一郎
協力=アジアサッカー研究所

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