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【コラム】負けじ魂を燃やす南野、浅野、小林祐…欧州組若手世代が日本代表底上げの鍵を握る

2016.12.22

欧州で活躍する南野拓実(左)、浅野拓磨(中央)、小林祐希(右)[写真]=Getty Images

 2018 FIFAワールドカップロシア アジア最終予選突入後、若返りが着々と進みつつある日本代表。前半戦の天王山だった11月のサウジアラビア戦(埼玉)では、アルベルト・ザッケローニ監督時代からの攻撃3枚看板だった本田圭佑(ミラン)、岡崎慎司(レスター)、香川真司(ドルトムント)が揃ってスタメン落ち。清武弘嗣(セビージャ)と原口元気(ヘルタ・ベルリン)らロンドン・オリンピック世代がゴールという結果を出し、本大会切符を得られる2位以内を辛うじて確保。後半戦に向けてようやく希望が見えてきた。

 前半戦で4戦連続得点を奪い、一躍、代表の救世主となった原口も「やっとサコちゃん(大迫勇也=ケルン)とか俺とかが代表でも力を出せるようになってきた。ワールドカップまでの1~2年が勝負」と強調していた。2017年はこうした面々が一段と存在感を強めていくと見られるが、彼らよりも若い20代前半の世代も負けじ魂を燃やしている。

 その筆頭が浅野拓磨(シュツットガルト)だ。リオデジャネイロ五輪の後、欧州挑戦の一歩を踏み出した彼は、9月6日のタイ戦(バンコク)で値千金の2点目をゲット。苦境に瀕していたチームを救う働きを見せた。直後の9月9日にはハイデンヘイム戦でドイツデビューを飾り、ここまでブンデスリーガ2部13試合に出場。2得点という結果を残している。しかし本人は「前半戦の結果には少しも満足していない。毎試合1本は必ずチャンスがあるので、そこで決めきれる力をつけていかないとチームの勝利に貢献できない。自分は(アーセナルから)レンタルで来ている身で次の目標があるんで、今のままではそこに辿り着けないと思う」と強い危機感を抱きつつ、ドイツでのタフな日々を過ごしている。

 新天地に赴いてからの浅野は3-4-3、あるいは4-4-2の左サイドでプレーすることが多い。が、年内最終戦だった12月18日のヴュルツブルク・キッカーズ戦は久しぶりに右サイドで先発。細貝萌と10試合ぶりに同時スタメンとなり、爆発が期待された。しかし、スリッピーなピッチ状態に苦しんだのか、簡単にボールを失う場面が目立ち、決定機らしい決定機もなし。まだまだ自らアクションを起こして試合の流れを引き寄せるほどの存在感は示せないのが実情のようだった。

「正直、今のままだったら代表は外れるだろうし、次はないと思う。定着したなんてこれっぽっちも思っていないので、本当にクラブで結果を残さないといけない。代表の右サイドは本田さんもいるし、久保(裕也=ヤング・ボーイズ)君もいる。自分はその中で前線のどこでもできるところをアピールしていきたい。融通の利く選手もチームには大事。これまでは裏への抜け出しにこだわってきましたけど、ボールを運んだりお膳立てしたり、中に入ってパス出しをするなど、いろんな仕事ができるようになっていきたい」と浅野は来年に向けての命題を掲げていた。

 その浅野同様、代表定着に近づいているのが、今夏にエールディヴィジのヘーレンフェーンに移籍した小林祐希。6月7日のボスニア・ヘルツェゴビナ戦(吹田)で初キャップを飾った後、しばらく呼ばれなかったが、新天地でコンスタントに試合出場を重ねていることをヴァイッド・ハリルホジッチ監督が評価。11月11日のオマーン戦(鹿嶋)で再招集され、豪快ミドル弾で代表初ゴールを飾ったのだ。

 ジュビロ磐田時代の小林はトップ下に君臨し、得点に直結する仕事を担っていた。今季J1前半戦だけで5ゴールという数字を見ても、彼の攻撃面での重要性がよく分かる。しかし新天地では4-3-3の左インサイドハーフという一列低いポジションでプレーしている。年内最終戦だった12月16日のヴィレムⅡ戦を見ても、ヘーレンフェーンの中盤3枚はキャプテンマークを巻くオランダ代表MFスタイン・スハールス(6番)がアンカー気味に陣取り、右インサイドのU-20オランダ代表MFイェレ・ファン・アメルスフォールト(19番)が前がかりになる形で、小林はどうしてもバランスを取る役割がメインになる。本人はそれを受け入れたうえで、守備意識を高め、チーム全体をコントロールするように努めているのだ。

「この前半戦でかなりプレーの質が上がってきたと感じている。自分のプレースピードや戦術眼、ポジショニング、相手のスピードやパワーへの対応といった戦術理解を早いうちからできたのはいいところ。守備意識もJにいた頃とは全然違う。ここは行くべきなのか止まるべきなのかといった判断、コースを切るだけの守備と取りに行く守備の区別をつけられるようになってきたと思います」と彼自身も言うように、守備的中盤としてのツボを体得してきたのは確かだ。

 もともと小林はパス出しやシュートといった攻撃センスが頭抜けている選手。左足のキックも魅力だ。こういった長所に守備やサポート力といった新たな武器を加えていけば、代表ボランチとして一気に定位置を確保できる可能性も大いにあるだろう。

「そう言われると『トップ下じゃムリ』って言われてるような…(苦笑)。まあどこで出るにしても最低限の仕事っていうのはある。体を張るところ、気持ち、失点した後の姿勢や振る舞いなんかは本当に重要だと思う。そういうことの重要性を再認識したのは確かです」と彼は黒子になってチームを支えることを覚えつつある。こうした姿勢を代表でも示せれば、長谷部誠(フランクフルト)のパートナーに急浮上することも考えられる。この個性派MFの今後に期待したいものだ。

 今年はA代表から遠ざかったものの、リオ五輪世代の中で最初に日の丸予備軍の仲間入りを果たした南野拓実(ザルツブルク)も虎視眈々とハリルジャパン入りを目論んでいる。2015年1月にいち早く渡欧し、すでに3シーズン目を迎えているが、今シーズンはリオ五輪出場で序盤戦を欠場したことが多少なりとも響いたという。

「今季は最初の10試合くらいを丸々五輪で抜けることになった。チームがCL(チャンピオンズリーグ)に向けて大事な試合をこなしている中、自分がいなかったマイナスの部分はあると思います。戻った直後は4-2-3-1の右サイドに入ったけど、すぐ試合に出られなくなった。(オスカル・ガルシア)監督から見ると、守備の部分が足りないように映ったんでしょうね。自分自身も周りの選手と何が違うかを考えて、11月くらいから試行錯誤しながら改善に取り組んだ結果、ようやく出場時間が増えてきました。最近は4-4-2のFWで使われることが多いので、ゴールという結果がより求められる。2年連続リーグ戦2ケタゴールを奪って、そのくらいコンスタントに得点できる選手ってことを証明したいと思ってます」と南野は語気を強めた。

 その言葉通り、年内最終戦だった12月17日のヴォルフスベルガーAC戦では今シーズン2度目の1試合2得点をゲット。リーグ戦通算ゴール数も6となり、後半戦の巻き返しに弾みをつけた格好だ。

「A代表ももちろん意識してます。『何で俺を選ばへんのや。俺も行ったらできるで』って気持ちはつねに持ってる。だけど選ぶのは監督ですから、監督が使いたいって思う選手になるためには、ここで結果を残すしかない」と彼もクラブでの実績作りを第一に考えている。同じリオ世代の久保が自分より一足先に最終予選デビューできたのも、今季のクラブで数字を残しているから。その現実をしっかりと認識して、南野は自己研鑽に励んでいくという。

 彼ら欧州組若手世代が一気に台頭してくれば日本代表の選手層はより厚くなる。2017年はその流れを加速させてほしいものだ。

文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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