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“らしさ”あふれる大会…南米王者を決める『コパ・アメリカ』とは?

2015.06.11

2011年大会を制したのはウルグアイ [写真]=LatinContent/Getty Images

文=河治良幸

 1916年に前身となる南米選手権の第1回大会が行われたコパ・アメリカは現在でこそワールドカップと同じく4年に1回のサイクルで開かれているが、過去には3年に1度、2年に1度、毎年など何度か変則的な開催があり、今回のチリ大会で44回目となる。

 大会のレギュレーションとしては南米選手権からコパ・アメリカに名前を変更した1975年の第30回から3大会に渡り、特定の開催国ではなくグループリーグから決勝まで全てホーム&アウェーで行われる方式が用いられた。当時は10カ国で行われていたが、前回の優勝国は準決勝までシードされたため、3カ国を3つのグループに分けたこともあった。

 南米サッカーの2大国であるブラジルとアルゼンチンのどちらかがほとんどの大会で優勝を分け合っていると思いきや、前回王者のウルグアイが最多の15回を誇り、アルゼンチンが14回。ブラジルは8回で、以下はペルーとパラグアイが2回、ボリビアとコロンビアが自国開催の時に1度優勝を経験している。

 特にボリビアは戦力的には歴史的にも最弱国の1つだが、標高3600メートルのラ・パスがメイン会場となる自国開催では無類の強さを誇り、1963年のボリビア大会で優勝しただけでなく、2回目の自国開催となった1997年にも決勝でブラジルに敗れたものの、準優勝に輝いている。

 南米は10カ国であるが、1993年から2カ国が招待される形で参加国が12に。これまでにメキシコ、コスタリカ、ホンジュラス、米国、そして1999年のパラグアイ大会では当時のフィリップ・トルシエ監督が率いる日本代表が招待された。しかし、ペルー、パラグアイ、ボリビアを相手に1分2敗、2得点8失点という南米の洗礼をあびる結果となった。

 日本は東日本大震災の余波で辞退した2011年の代わりに今回のチリ大会も招待を打診されたが、アジアカップと同年に当たり、ベストチームを派遣できない事情などから断り、中国も受けなかったため、ジャマイカが初めてコパ・アメリカに参加することとなった。

 2011年のアルゼンチン大会ではウルグアイが優勝したが、その立役者となったディエゴ・フォルランは1959年と1967年に監督をつとめた祖父(フアン・カルロス・コラソ)と1967年に選手だった父親(パブロ・フォルラン)に続き、3世代でコパ・アメリカに優勝するという偉業をなしとげた。

 隣国アルゼンチンで優勝を果たしたウルグアイのイレブンは喜びのあまり、守護神のフェルナンド・ムスレラが撮影したYoutube動画にマルティン・カセレスの全裸が映り、アップされるという珍事件がおきている。

 また停電や乱入者は南米の試合ではコパ・アメリカに限らず日常茶飯事だが、2011年大会の準々決勝アルゼンチンvsウルグアイで、サッカーのビッグイベントに乱入することで有名なジミー・ジャンプが試合中のセルヒオ・アグエロに帽子をかぶせ、キスする珍事件を起こしている。

 その準々決勝でウルグアイにPK戦の末に敗れ、開催国ながら早期敗退となったアルゼンチンのサッカー協会は決勝の翌日に理事会を開き、セルヒオ・バティスタ監督を解任。後任がすぐに決まらなかったことと敗退のショックから、8月に予定していたルーマニアとの親善試合を中止にするという身勝手な決定をしている。言い換えればそれほどコパ・アメリカの結果は重要であり、アフリカネーションズカップと並び、監督の首がよくとぶ大会としても知られる。

 コパ・アメリカは開催国の運営が常に課題にあがる大会でもある。2001年のコロンビア大会では開幕の直前に開催国の革命軍がサッカー連盟副会長を誘拐する事件が起こり、安全面の懸念からアルゼンチンと招待国で参加予定だったカナダが辞退。急きょ、コスタリカとホンジュラスを招待し、警察を大動員して治安を守るという処置で乗り切った。

 今回のチリ大会に向けては会場の1つであるコンセプシオンのエステール・ロア競技場の建設の遅れを理由に抽選会が1カ月延期された。会場を減らして開催するプランもあった様だが、準々決勝、準決勝、3位決定戦の3試合で使用する形でまとまった。

 また来年には100周年を記念してアメリカで北中米カリブ海サッカー連盟から6カ国の招待国を加えた、アメリカ大会全体での特別大会が開催される予定になっているが、放映権をめぐりスポーツマーケティング会社から南米連盟の幹部に3000万ドルもの賄賂がわたった疑惑が起こり、また先日のFIFAの事件で逮捕されたジェフリー・ウェブなどが開催に大きく関わっており、大会の開催そのものが危ぶまれている。

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