FOLLOW US

カタールでは誰が歴史に名を刻む? C・ロナウドは記録更新へ…ワールドカップにおけるハットトリックの回顧録

2022.11.11

W杯におけるハットトリックの歴史 [写真]=Getty Images

 ワールドカップの開幕まで10日を切り、日に日に大会ムードが高まっているが、果たして今大会はどんな選手がスタジアムを沸かすのだろうか? 
 
 1930年に産声を上げたワールドカップでは、第1回大会のグループステージ第2節にアメリカ代表のバート・パテナウデがパラグアイ戦でハットトリックを達成して以降、これまで21大会で実に計52回ものハットトリックが生まれている。1大会に約2.5回の計算となる。これまで一度もハットトリックが見られなかったのは、2006年大会の一度だけ。ということは、確率的に考えても今大会はハットトリックが見られるはずだ。
 
 では、今大会の開幕を前に、ワールドカップにおけるハットトリックの歴史をおさらいしておこう。

[写真]=Getty Images
 

■1試合最多ゴール

ロシア代表FWオレグ・サレンコ


 
 ワールドカップの歴史において、一人の選手による1試合最多ゴールは5得点で、過去に一人しか達成していない。それが1994年アメリカ大会のロシア代表FWオレグ・サレンコだ。ブラジルやスウェーデンと同組に入ったロシアは、開幕2連敗を喫して早々に敗退が決定。そんな状況の中で、カメルーンとのグループステージ第3戦を迎えた。
 
 するとサレンコは、前半15分にこぼれ球を決めて先制すると、そこからゴールショーを披露。PKによる1ゴールを含め、全てボックス内でのワンタッチシュートという、いかにも点取り屋らしいゴールを積み重ね、気づけば5ゴールを奪っていた。これが未だに破られぬワールドカップにおける1試合最多ゴール記録となっている。
 
 試合は6-1でロシアが勝利するも、彼らはグループステージで姿を消すことに。それでも、第2戦のスウェーデン戦でも1得点していたサレンコは、ブルガリアの英雄、フリスト・ストイチコフと並び6ゴールで大会得点王に輝いた。大会後、スペインのバレンシアに加入したサレンコは、バルセロナに所属するストイチコフとリーグ戦で対戦した際に冗談を言い合ったという。ストイチコフが「俺がもう1点取らなくて良かったね」と声をかければ、サレンコは「君の方こそ僕に感謝すべきさ。僕がカメルーン戦で6点目を決めなかったことをね!」と言い返したという。
 
 サレンコは、そのカメルーン戦が代表でのラストゲームとなった。代表キャリアは8試合で6ゴール。彼がロシア代表で決めたゴールは、94年のワールドカップでの6ゴールだけなのだ。だから、一発屋と勘違いされがちだが、実はサレンコは1989年のワールドユース選手権(現在のU-20ワールドカップ)でも5ゴールで得点王に輝いていた! ワールドカップとU-20ワールドカップの両方で得点王に輝いている唯一の選手だ。
 
 ちなみに、サレンコが記録を打ち立てたカメルーン戦では、もう1つ偉大な記録が誕生していた。それがワールドカップの最年長ゴール記録である。1990年大会で4ゴールを決めて一躍人気者になったカメルーンのFWロジェ・ミラが、4年後の大会でもネットを揺らしたのだ。「42歳39日」でのゴールは、未だに破られていない最年長ゴール記録なのだ。
 

■最速ハットトリック

FWキッシュ・ラースローのハットを含む10得点を挙げたハンガリー代表

 
 ワールドカップで歴代最速ハットトリックを記録したのはハンガリーのFWキッシュ・ラースローだ。キッシュは1982年スペイン大会に出場すると、グループステージ初戦のエルサルバドルで偉大な記録を打ち立てた。ベンチスタートのキッシュは後半10分に投入されると、そこからゴールを量産。69分にネットを揺らすと、72分、76分にもゴールを決めてハットトリックを達成。「7分42秒」での3得点はワールドカップ史上最速ハットトリックだ。ちなみに、ワールドカップの歴史において途中出場からハットトリックした選手もキッシュしかいない。
 
 その試合はハンガリーが10-1でエルサルバドルを圧勝しており、「10得点」というのは1試合での1チームによる最多得点記録だ。そして「9点差」というのは、ワールドカップにおける最多得点差試合の1つなのだ(他の9点差は1954年ハンガリー9-0韓国、1974年ユーゴスラビア9-0ザイール)。
 
 ちなみに、最も早い時間帯でのハットトリックとなると、1954年大会のオーストリア代表FWエーリッヒ・プロブストが達成している。プロブストはチェコスロバキア戦で開始4分にゴールを奪うと、前半24分までにハットトリックを決めて見せた。この大会、オーストリアは同国史上最高の3位に入り、プロブストも大会得点ランク2位となる6ゴールを決めている。
 

■最年少ハットトリック

最年少記録のペレ(左)と最年長記録のC・ロナウド(右)


 
 ワールドカップの歴史において、ハットトリックの最年少記録を持つのは“サッカーの王様”ことブラジルの英雄ペレだ。ペレは、1958年大会の準決勝フランス戦で3ゴールを叩き込んでチームを決勝に導くと共に「17歳244日」で今も破られぬ最年少ハットトリックを達成した。ペレは決勝のスウェーデンでも2ゴールを奪い、「17歳249日」という決勝戦の最年少出場記録を打ち立てて世界の頂点に立った。
 
 10代でハットトリックを達成した選手はペレ以外に1人しかいない。1934年大会にドイツ代表のエトムント・コーネンが、ベルギー戦で「19歳198日」にしてハットトリックを達成した。
 
 一方で、最年長ハットトリックの記録を持つのはポルトガル代表のFWクリスティアーノ・ロナウドだ。前回の2018年ロシア大会、ロナウドは3-3のドロー決着となったグループステージのスペイン戦で、チームの全ゴールを一人で叩き出した。そして「33歳130日」の最年長ハットトリック記録を打ち立てた。
 

■大会別ハットトリック

ハンガリー代表FWシャーンドル・コチシュ


 
 過去21大会で52回のハットトリックが生まれているが、実に半数の26回が最初の8大会で達成されている。理由としては、出場国の実力差が大きかったことが考えられるだろう。とりわけ1954年スイス大会はハットトリックの年だった。ハンガリー代表のシャーンドル・コチシュが2度も達成するなど、わずか26試合で計8回ものハットトリックが見られた。全体の15%のハットトリックがこの大会で生まれたことになる。
 
 一方で、冒頭にも説明したが1度もハットトリックが見られなかった唯一の大会が2006年のドイツ大会だ。ゴールキーパー大国のドイツで開催されたためか、この大会は64試合で147ゴールしか決まらなかった。1試合平均2.3ゴールは、カテナチオの国であるイタリアで開催された1990年大会の「2.21ゴール」、2010年南アフリカ大会の「2.23ゴール」に次いで、歴代3番目に平均ゴール数が少なかった。
 

■曜日別

月曜日にハット達成のポルトガル代表FWペドロ・パウレタ


 
 ワールドカップで最もハットトリックが見られるのは日曜日だ。そもそも開催された試合数が多いということもあり、日曜日に22回もハットトリックが生まれているという。2番目に多い土曜日(11回)の2倍もの数だ。ちなみに最もハットトリックが見られないのは月曜日。全52回のハットトリックのうち、月曜日のハットトリックは1度だけ。2002年日韓大会でポルトガル代表FWペドロ・パウレタがグループステージのポーランド戦で決めた1回だ。
 
 ちなみに、ワールドカップの決勝戦では過去に1度しかハットトリックが達成されていない。それを決めたのは1966年の母国開催の決勝で、西ドイツを相手にハットトリックを決めてイングランドを頂点に導いたジェフ・ハーストだ。
 

■複数ハットトリック

ゲルト・ミュラー(左)とガブリエル・バティストゥータ(右)


 
 ワールドカップでの最多ハットトリック記録は2回で4名いる。そのうち3名が、1大会に2度のハットトリックを達成した。前述のハンガリー代表FWシャーンドル・コチシュ(1954年)のほか、フランス代表FWジュスト・フォンテーヌ(1958年)、ドイツ代表FWゲルト・ミュラー(1970年)だ。一方で、大会をまたいで2度のハットトリックを達成した選手は一人だけ。1994年と1998年大会でハットトリックを決めたアルゼンチン代表FWガブリエル・バティストゥータだ。
 
 果たして今大会はどんなハットトリックが生まれるのか? ワールドカップで最も新しい52番目のハットトリックを達成したイングランド代表FWハリー・ケインも健在なので、今大会は様々なハットトリック記録の誕生に期待が寄せられる!

(記事/Footmedia)

SHARE

LATEST ARTICLE最新記事

SOCCERKING VIDEO