2019.06.18

U20の「世界2位」に高まる期待…逸材ひしめく韓国代表の“黄金世代”

[写真]=Getty Images
1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮大学校外国語学部卒業後に朝鮮新報社記者として、社会、スポーツ分野のほか、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)・平壌での取材など幅広い分野で取材を展開。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本側から初めて平壌で取材することに成功(『Number』に寄稿)。現在は日韓両国でサッカーやゴルフなどのスポーツを中心に取材し、週刊誌やWEBで執筆中。

 アジア勢として初優勝の快挙は成し遂げられなかった。

 FIFA U-20ワールドカップ ポーランド2019の決勝戦で、U-20韓国代表はU-20ウクライナ代表と対戦し、1-3で敗れた。

 試合は5分、韓国の選手がペナルティエリア付近で倒されたあと、主審がVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)判定でPKを獲得。これをイ・ガンイン(バレンシア)が決めて先制。だが、この早い時間での先制点が、韓国の試合運びを難しくさせた。

 その後の展開はウクライナが完全にゲームを支配。34分に同点弾が決まって1-1。後半に入ってもウクライナ優勢に変わりはなく、52分、89分に韓国は追加点を奪われた。

 アジア勢としては1999年大会の日本以来の決勝だったが、初優勝は果たせなかった。韓国のチョン・ジョンヨン監督は試合後の会見で「前半で早く得点を決めたあと、選手たちが全体的なバランスを取ろうとしたのか、下がり気味に試合を進めてしまった。給水タイムにこれだけ下がってしまってはセットプレーを与えてしまうので、ラインを上げていこうと伝えていた」と振り返っている。

決勝戦はテレビ局3社が同時生中継…合計視聴率は30.4%に

初優勝は果たせなかったが、韓国は1999年大会の日本以来の準優勝に輝いた [写真]=Getty Images

 思いがけない形で先制点が転がり込み、その後の試合運びやゲームプランを明確にできなかったことが敗因と分析した。韓国のサッカー専門サイト『フットボリスト』も「先制点を決めながらも、相手に主導権を握られての敗北だっただけに、悔しさは大きい」と伝えている。

 ここまでの韓国の戦いぶりを振り返ると、まさに死闘の連続だった。グループFに入った韓国は初戦のポルトガル戦に0-1で敗れ、グループリーグ突破に暗雲が立ち込めていた。だが、2戦目は南アフリカに1-0で勝利。3戦目は強豪アルゼンチンを2-0で退け、グループ2位で決勝トーナメントに進出した。決勝トーナメント1回戦の相手はアジアのライバル日本。試合は韓国が1-0で日本を下してベスト8へ進出した。準々決勝の相手はセネガル。試合はVARが7回も飛び出して判定が覆るなど、一進一退の攻防が続いた。90分の時点でセネガルリードの1-2で試合終了かと思われたが、アディショナルタイムに韓国がCKから劇的な同点弾を決める。延長戦は韓国が追加点を決めたが、後半アディショナルタイムに再びセネガルに追いつかれて3-3。その後、PK戦で勝利した韓国が準決勝に進出した。そして、準決勝ではエクアドルを1-0で下し、1983年以来の36年ぶりのベスト4入りを果たした。

[写真]=Getty Images

 決勝戦の結果を見る限り、ウクライナの実力のほうが一枚上手だったのは、試合内容を見ても明らかだった。そもそも20歳以下の韓国代表は、好成績を期待されていなかった。それだけに今回の準優勝は韓国内では快挙として伝えられている。

「韓国、ウクライナに1-3の逆転で敗北“悔しいがよく戦った!”」(『news1』)

「ポーランドで新たな歴史を作ったU-20太極戦士たち、韓国サッカーの未来を照らす」(『ニュースピム』)

 韓国内ではこの試合をMBS、SBS、KBSのテレビ局3社が同時生中継しているが、『デイリーアン』によれば、合計視聴率が30.4%だったというのだから、いかに国民の関心が高かったのかがうかがえる。

今大会での韓国の快進撃を伝える際、もっとも話題になっていたのがバレンシア所属のイ・ガンインだった。それもそのはずだ。先輩たちを差し置いて、18歳ながらエースナンバーの背番号10を託され、実力通りに2ゴール4アシストを記録。アジア人として初めて大会MVP(ゴールデンボール)に輝いたからだ。

収穫はイ・ガンインを中心とした“黄金世代”の発掘

背番号10を託されたイ・ガンインは2ゴール4アシストを記録し、アジア人初の大会MVPを獲得した [写真]=Getty Images

[写真]=Getty Images

 イ・ガンインが注目を浴びる一方で、元韓国代表MFで、横浜F・マリノスや柏レイソルでもプレーしたユ・サンチョルもたびたびメディアに登場した。というのも、イ・ガンインが幼少期に出演した「ナララ(飛べ)、シュットリ」というテレビ番組で、ユ・サンチョルがコーチ役として指導していたこともあり、韓国が勝ち上がるたびにコメントを求められていた。そこでユ・サンチョルはこんな話をしている。

「彼を知る立場とはいえ、私が育てたわけではありませんから。イ・ガンインが努力してがんばった結果です。それに彼が最大限に能力を発揮できた理由は、隣にいるチームメイトががんばったからですよ」

 メンバーの顔触れを見ると今回招集された21人中、15人がKリーガーでそのほかは大学サッカー部と海外組で構成されていた。海外組にはイ・ガンインを筆頭に、ハンブルガーSVのGKチェ・ミンス、ディナモ・ザグレブのDFキム・ヒョヌ、オーストリアのリーフェリング所属のMFキム・ジョンミンがいたが、そのほとんどが所属チームでは中心選手ではない。ほとんどの選手がKリーガーということを考えると、もっと国内組が注目されてもいいのかもしれない。

 特にアルゼンチン戦と日本戦でゴールを決めたオ・セフンが所属する牙山ムグンファFCは2部のチームだ。彼は193センチの長身FWで空中戦を得意とするが、自ら切り込んで強烈なシュートも打つなど、相手の脅威となっていた。だが、代表での活躍がなければ、これだけ世間に注目を浴びることはなかったに等しい。

 こうして無名選手を新たに発掘したことから、サッカー専門誌『Best Eleven』は「今大会ではイ・ガンインを中心とした“黄金世代”を発掘した」と評価。さらに「試合ごとにスターを誕生させ、韓国サッカーの明るい未来を照らした」と伝えている。

パク・チソン、ソン・フンミンとは違う“エース候補”ともう1人の逸材

チームの諸事情でU-20W杯招集が見送られたチョン・ウヨン(中央)も今後の活躍が期待されている逸材だ [写真]=Getty Images

 今大会で若き韓国代表が世界に与えたインパクトは十分だった。それに今回の準優勝メンバーが次の2022年カタールW杯で、A代表に名乗りを上げる選手がいてもおかしくはない。そこで期待されるのが“第2のソン・フンミン”の登場だ。その筆頭はもちろん、イ・ガンインであることに疑いの余地はない。

 総合ニュースサイト『news1』は「酸素タンクと呼ばれた豊富な活動量のパク・チソン、速く力強いドリブルから両足でシュートを打てるソン・フンミン。そんな二人と違う新たなスタイルを持っているのがイ・ガンインだ。瞬間的な爆発力で相手に競り勝ち、狭いスペースでのキープ力もある。決定機を作り出す判断とパス、セットプレーの正確なキックとシュートで攻撃のポイントとなった。献身的にチームプレーに徹することができ、攻撃的MFだが守備力が高いのも珍しい」と、次世代エースの登場を称賛している。

 また、今大会はチームの諸事情で招集が見送られたバイエルンのチョン・ウヨンも、今後の活躍が期待されている逸材だ。そんな彼らが欧州のビッククラブのトップチームで激しいポジション争いに勝ち、ピッチに立つ回数が増えれば、ソン・フンミンのように今年のチャンピオンズリーグ決勝の舞台に立つ日も決して夢ではないだろう。今大会準優勝のU-20韓国代表メンバーが、今後どのように成長し、アジアや世界の舞台で名乗りを上げるのか。期待はふくらむばかりだ。

文=金明昱

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