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「メイドインジャパン」と達成した世界制覇…王国の10番が愛した日本生まれの“相棒”とは?

2018.12.23

ブラジル代表のレジェンド、リバウドは日本のスパイクで世界の頂点に立った [写真]=Getty Images

 本田圭佑フェルナンド・トーレス、チャナティップ・ソングラシン、家長昭博……。彼らの名前を並べると1つの共通項が浮かび上がってくる。それは「ミズノ」だ。上述の選手たちはいずれも、ミズノ社製のスパイクを着用している。

 ご存知の通りミズノは日本で生まれた国産スポーツメーカーだ。1906年、大阪府で創業すると、洋品雑貨や運動着の製造業を開始。以降、スポーツ用品の製造販売で利益を上げると、サッカー、野球、陸上、ゴルフ、水泳、ウィンタースポーツと様々な商品を世界中に販売する総合スポーツメーカーへと成長を遂げた。

 ところが、以前、同じくミズノと契約する吉田麻也がこんなことを言っていた。

「ミズノは日本でこれだけブランドを確立しているにもかかわらず、ヨーロッパでのシェアは少ない。僕はそれが悔しくて……」

 日本国内でミズノが大きなシェアを持つように、海外では外資ブランドのシェアが大半を占める。ミズノは間違いなく国内最大級のスポーツメーカーだが、海外リーグを見渡せば、当然のように外資ブランドのスパイクを履いた選手ばかり。ミズノに全幅の信頼を置き、海外でプレーしているからこそ、吉田はその状況に歯がゆさを感じているという。一方で、“メイドインジャパン”に魅せられ、世界の頂点に輝いた選手がいることをご存じだろうか?

ブラジル全土に広まったジャパンブランド

リバウドはバルセロナ在籍時の1999年にバロンドールを受賞。当時の着用スパイクはミズノのモレリアだった [写真]=Getty Images

 遡ること1983年、ミズノは「3年後のメキシコW杯で自社のスパイクを履いた選手が活躍すること」を目標に、新たなサッカースパイクの開発に着手した。開発担当者をブラジルに送り、現地の選手を対象に試作と実戦テストを繰り返した。そして、1985年に新スパイク『モレリア』が誕生した。これをブラジル代表のカレカが着用すると、メキシコW杯で5ゴールを記録する大活躍を見せた。ミズノの悲願が達成されると同時に、サッカー王国に“メイドインジャパン”は広まった。その後、1990年イタリアW杯では、ブラジル代表の大半の選手がモレリアでプレーした。1993年に代表デビューを飾ったリバウドも、モレリアに魅せられ、ともにプレーした1人だった。

 数々の栄冠はモレリアとともに達成した。リバウドはバルセロナで1997-98シーズンからリーグ2連覇を達成。1998年フランスW杯では、ブラジル代表の10番として準優勝に貢献すると、1999年にはバロンドールを受賞した。

 ちょうどそのころ、ミズノにはある願望があった。モレリアに並び社の“柱”となる新スパイクの開発だ。そこで、日韓W杯を2年後に控えた2000年、リバウドと新たな一足を開発することを決めた。

“共同開発”で生まれた一足が世界一に導く

左:ミズノ大阪本社でデータ測定を行うリバウド 右:日韓W杯でミズノの『ウェーブカップ』を着用 [写真]=ミズノ、Getty Images

 まずは大阪本社にリバウドを招き、運動データを測定し徹底的に解析した。収集されたデータをスパイクに落とし込んでいき、リバウドが理想とする一足となるよう、何パターンもの実験テストを繰り返した。今では当たり前となっている製造過程だが、当時は陸上シューズの開発にのみ用いられていた方法で、サッカースパイクに取り入れられたのはこの時が初めてだった。

 さらに、モレリアの軽量・柔軟・素足感覚を踏襲し、独自開発したテクノロジーで安定性とクッション性も実現。最大限軽くなるよう不要な領域は削り、視覚的にも軽さを感じられるようホワイトをベースカラーとした。試行錯誤は約1年続き、リバウドのための一足『ウェーブカップ』が誕生した。完成したスパイクをスペインで待つリバウドの下へ届けると、その好感触を絶賛したという。

 メイドインジャパンを纏った王国の10番は躍動した。リバウドはウェーブカップとともに日韓W杯のピッチに立つと、グループステージで3試合連続ゴールを記録。ロナウド、ロナウジーニョと形成した“3R”を中心とした攻撃陣の勢いは留まるところを知らず、決勝トーナメントを勝ち進み決勝戦へと駒を進めた。そして、横浜国際総合競技場で開催された決勝戦では、ドイツ代表を2-0で下して勝利。こうして日本で生まれたスパイクは、ブラジル代表の10番とともに、王国を5度目の世界一へと導いたのだ。

リバウドはロナウド(中央)らとともに、日韓W杯優勝を果たした [写真]=Getty Images

名プレーを支える“モノづくり”の精神

リバウドが日韓W杯で着用したウェーブカップ [写真]=ミズノ

 今年も契約選手たちは大活躍を見せた。年間最優秀選手に輝いた家長をはじめ、中村憲剛、大島僚太、チャナティップはJリーグのベスト11に選出された。6月のロシア・ワールドカップでは吉田や本田の活躍で、日本代表は2大会ぶりの決勝トーナメント進出を果たした。

 ウェーブカップ開発時、徹底的にこだわり抜いた“モノづくり”の精神は現代まで受け継がれている。本田や吉田が履く「レビュラ」シリーズには、様々なテクノロジーを搭載。ボールタッチ、スピード、クイックネスとプレーヤーが求める全ての要素を向上させてくれる。上質なカンガルーレザーを使用し、改良に改良を重ね、抜群の履き心地を誇る「モレリア」は、シリーズ誕生から30年以上経った今でも、プロアマ問わず根強い人気を博している。

「進化する現代サッカーのトレンドは何か?」「選手がスパイクに求めるものは何か?」。リバウドとともに世界と戦う一足を作り上げたように、選手に対してミズノから提案し、ともに開発していく。そうして完成する逸品は、今後も数多くの名プレーを生み出してくれるはずだ。

文=サッカーキング編集部
写真=ミズノ、ゲッティイメージズ

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