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国宝は法王、マラドーナ、それからメッシ! W杯はアルゼンチンの熱い夏

 2018年ワールドカップ、はじまりますね! そこで海外ZINEでは、世界各地のサッカー事情について調査&レポート。アルゼンチンはサッカーの超強豪国。予選とかどうでもいい、優勝以外はすべて敗者。うーん、猛者! そんなアルゼンチンの人たちと貴重なサッカー観戦……ふだんは温厚な友人が、とんでもないことに!

記事執筆・提供=奥川 駿平/「海外ZINE」編集部

■強豪の目標はW杯優勝のみ! 準優勝では喜ばないアルゼンチン人

 こんにちは、奥川です。今回はアルゼンチンのサッカー事情について紹介するのですが、まずなにより、アルゼンチンはサッカーが超強いんです。一説によると、強さの秘密は僕が飲んでいるソウルドリンク・マテ茶にあるそうです。栄養満点のマテ茶を回し飲みすることで、強靭な体を作りつつ、チームワークを深めたのかもしれません。

「サッカー強豪国だからワールドカップ開催が近づくにつれて、国中がお祭りムードになるんだろうなあ」と思っていましたが、4月現在のところ特別な盛り上がりはありません。もちろん、予選は盛り上がりましたし、代表に関する報道もされています。でも思い描いていたほどではなく、至って平凡な日常が流れています。そこで友人たちにその理由を聞いてみました。

 多くのアルゼンチン人にとって、「優勝だけ目指す」「準優勝は他の敗者と何ら変わりはない」と本気で言う人々に出会うと、サッカー強豪国にいると痛感します。一番だけを目指しているからこそ、開催前に盛り上がる理由はないのかもしれませんね。

 ちなみに予選時に、アルゼンチン代表公式スポンサーNOBLEXという企業がプロモーションを行いました。内容は、2017年8月24日~31日の購入者限定で、アルゼンチン代表が予選落ちしたらTV代全額返金というもの。こういった大胆なプロモーションができるのも、ワールドカップ出場が当然のアルゼンチンならでは。今回は予選で苦しんだので、企業はひやひやしていたかもしれませんが。

スーパーで見つけたワールドカップを意識したお菓子

 ただし、最も人気のあるスポーツはサッカーですが、全員がサッカー好きと言うわけではありません。僕のアルゼンチン嫁はサッカーに全く興味がなく、彼女の友人の多くも、サッカーは一切見ないそう。熱狂的なファンか無関心の両極端に分かれるようです。

前回大会でのアルゼンチン戦、パブリックビューイングの様子

 しかし、その盛り上がりもワールドカップが始まると別。前回大会では、アルゼンチン戦の日には学校に大型テレビが置かれ、サッカー観戦が行われたそうです。

アルゼンチンの国旗のフェイスペイントを施し、家族・友人と応援

 準決勝と決勝戦は仕事を休みにする人が多かった様子。義父はサッカーに興味がないのですが、部下にサッカーファンが多かったため、試合当日は休みにしました。本戦がはじまり、アルゼンチンが駒を進める度に、熱気は増すことでしょう。

■観戦時は豹変! 国籍、貧富、あらゆる壁を越えるアルゼンチンサッカー

 いつもは嫁がアルゼンチン情報を教えてくれるのですが、今回ばかりは興味がないことなのでどうしようもありません。そこで強力な助っ人を呼びました。強豪チーム、リーベル・プレートのサポーター歴18年のフランコです。

フランコ18歳の誕生日を迎えたときの写真。温厚なナイスガイ

 フランコと彼の父親リーゴとサッカー観戦をしながら、アルゼンチンのサッカー事情について語ってもらいました。試合は4月8日、リーベル・プレートVSラシン。リーベル・プレートは人気・実力ともにトップクラスのクラブ。ライバルのボカ・ジュニオルスとの試合は、『スーペルクラシコ』と呼ばれるダービーマッチとして知られています。

 リーゴ「アルゼンチン流のサッカー観戦なら、キルメスの安ビールかフェルネットは欠かせないな。キルメスはアルゼンチンの国民的ビールで、サッカー代表のスポンサーなんだよ」

青と白のアルゼンチンカラーのビールがキルメス。かなりライトな飲み心地なので、水のようにごくごく飲めちゃいます。値段は1リットル45アルゼンチンペソ(約240円)

こちらがフェルネット・ブランカ、右はコーラを混ぜたもの

 アルゼンチンはワインが有名ですが、パーティーやクラブではフェルネットというリキュールとコーラを混ぜたものがよく飲まれます。フェルネットの苦みとコーラの甘みが絶妙に混じった爽やかな味わい。お酒とおつまみの準備をしていたら、あっという間に試合開始のホイッスルが鳴りました。

左からリーベルのユニフォーム、代表ユニフォーム、色違いのリーベルのユニフォームを着たアルゼンチンキッズたち。親の応援を見て子供も自然と同じチームを応援するように

フェルネットとフライドポテトを食べながら試合観戦。右はフランコの姉

 肝心の試合内容ですが、前半はゴールこそ生まれなかったものの、超攻撃的なサッカーは見ていて飽きません。普段は温厚で汚い言葉を一切使わないフランコとリーゴが、「プータ(売春婦)」や「ミエルダ(くそ)」と常に言っていたのは気になりましたが……。※「プータ」の使用は絶対に避けましょう。「イホ・デ・プータ」は「売春婦の息子」という意味になり、現地で見知らぬ人に使うと危険な目に遭います。

 後半開始直後も、なかなかボールがネットに突き刺さらず、汚い言葉を聞き流す時間を過ごします。今日はゴール見れないかもなと思っていると、

 2人の大絶叫が僕の耳をつんざく。ゴールの喜びよりも、2人の豹変した姿に圧倒されてしまいました。まだ心臓がバクバクと早い鼓動を続けていると、

試合後は伝統料理アサード(BBQ)で勝利を祝う

 僕と嫁はサッカーに無関心、かつ国内戦視聴には追加料金を支払う必要もあるため、3年間の移住生活で国内ゲームを観たことは数回のみ。でも、ゴルーと叫んだ時の快感に魅了され、何よりフランコとリゴーの「もうリーベルのファンだよな」という無言の圧力をかけられたので、今日から僕はリーベルの大ファンです。これから毎週リーベルの試合を楽しみたいと思います。

■メッシ由来の単語が辞書に!? メッシはアルゼンチン人の神だった!

©Oleg Bkhambri(Voltmetro)

「アルゼンチンの宝はマラドーナ、パパ・フランシスコ、そしてメッシなんだよ」、これは友人の言葉。マラドーナは言うまでもなく伝説のスタープレーヤー。パパ・フランシスコはアルゼンチン出身の現ローマ教皇です。

©Agencia de Noticias ANDES

 若者とセルフィーを撮ったり、ツイッターを楽しんだりと、何かと話題の欠かないパパ・フランシスコは大のサッカーファンでもあります。特にブエノスアイレスのボエド地区に本拠を置くサン・ロレンソの熱心なサポーター。

 そんな2人と肩を並べるのが、世界一いやサッカー史上最高の選手と言っても過言ではないリオネル・メッシ。その完璧なプレースタイルを賞賛するかのよう、Santillanaという辞書にはメッシ由来の単語が載っています。その単語は”inMESSIonante”、意味は「史上最高のサッカー選手」や「完璧なサッカースタイル」。自分由来の単語ができるなんてすごすぎる……。

 メッシについて面白いエピソードがあります。メッシの大ファンの父親が、生まれた子供に「メッシ」と名付けたところ、国内で大きな議論が巻き起こったのです。なぜなら、スーパースターの名前を子供につけるのは万国共通ですが、「メッシ」はファミリネーム。「リオネル」が名前で「メッシ」は名字です。アルゼンチンでは混乱を招くため、名字を名前として使用することは法律で禁止されています。

 しかし、この一件以来、子供に「メッシ」と名付けたいと願う親が続出。そのため、メッシが生まれたサンタフェ州は「子供にメッシと名付けることは法律で禁止されている」と発表しました。

©Armand Tovar

 そんな、アルゼンチンサッカー界のスーパースターであるメッシが目指すものが、ワールドカップ優勝という栄光。それには理由があります。メッシとマラドーナはよく比較され、プレーで甲乙つけるのは難しいですが、マラドーナの方が優れているという声が多々あるのです。

 それは彼が1986年のワールドカップで華々しい活躍を見せ、アルゼンチンを2度目の優勝に導いているから。対してメッシは代表戦では思うような活躍ができていません。そのため、ときに厳しい批判にさらされることがあります。

 南米地域のサッカー選手権であるコパ・アメリカで、メッシ率いるアルゼンチンは決勝でチリと対戦。試合はPK戦にまでもつれこむも、メッシもPKを外してチリに王者の座を渡す結果に。そして上の写真は、メッシが代表引退を発表後、僕の友人がFacebookに投稿したもの。「(メッシ)下を向かないで。王冠が落ちちゃうよ」と、なんともエモい文章。

©Casa Rosada

 アルゼンチンのイケメン大統領マクリ。前述の、ボカ・ジュニオルスの会長を12年間務めるという異色の経歴の持ち主。おそらく世界一サッカー好きの大統領です。

 試合後、メッシは代表引退を示唆するコメントを発表したところ、アルゼンチン中が大騒ぎに。SNSでは”#NoTeVayasLeo(メッシ行かないで)”がトレンドとなり、全国各地でメッシ代表引退撤回を促す運動が起きました。

 ついには、マクリ大統領がメッシに説得の電話をかけるほど。大統領はメッシを「神からの贈り物」と称し、「メッシはアルゼンチンが持つ最も偉大な宝であり、私たちは彼をもっと丁寧に扱わなければいけない」と言及。

■アルゼンチンの宝は祖国に最高の栄誉を持ち帰り、歓喜の涙を流せるのか

6月20日の『国旗の日』の写真。アルゼンチンサッカー名物と言えば紙吹雪、写真の何百倍もののスケールで紙吹雪がスタジアムを舞います

 アルゼンチン人にとってサッカーはただのスポーツではありません。文化であり、日常であり、そして誇りなのです。

 ワールドカップ予選通過を決めた試合で、メッシはハットトリックを決め、各メディアは「Gracias D10S, Messi(サッカーの神様メッシ、ありがとう)」と報じました。正しくはDIOS(神)ですが、メッシの背番号「10」と掛け合わせ「D10S」としたのです。おそらく今回のワールドカップがメッシにとってラストチャンスとなるでしょう。アルゼンチンの宝は、悲願の「ワールドカップ優勝」に輝けるのでしょうか?

 アルゼンチンでスタジアム観戦をする際には、十分に注意してください。クラブへの愛が行き過ぎるあまり、サポーター同士の争いによる死亡事故が毎年のように起きています。トラブルに巻き込まれないように注意しつつ、その熱狂的な応援を楽しみましょう。

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