2014.07.08

決戦ベロオリゾンテ…母国優勝に突き進むブラジルか、12年越しのリベンジ狙うドイツか

2002年日韓大会決勝を知るスコラーリ監督(左)とクローゼ(右) [写真]=Getty Image、FIFA via Getty Images

 鬼門突破の代償は、あまりに大きかった。

 ブラジルは優勝した2002年大会以来、3大会ぶりとなる準決勝進出を果たしたが、キャプテンのチアゴ・シウヴァが通算2枚目の警告を受けて次戦は出場停止となり、エースのネイマールが腰椎骨折で離脱を余儀なくされた。

 決勝進出をかけた大一番で対するのは、優勝3度の大国ドイツ。事実上の決勝戦とも称される一戦で、攻守の核を欠いて臨むにはあまりに強大な相手となる。ところが、イギリス最大手のブックメーカーであるウィリアムヒル社は、意外な数字を弾き出した。

 同社は、開幕前に優勝国予想における配当倍率で、開催国のブラジルを4.0倍の本命とし、ドイツを6.5倍の3番手に推していた。準決勝の勝ち抜けを予想では、優勝候補同士の対戦で戦力ダウンのブラジルを劣勢と見るかと思われたが、7日時点ではブラジルが2倍、ドイツは1.83倍とほぼイーブンと言える数字を発表している。

 ブラジルの主力2選手の欠場により、わずかにドイツ有利に傾いようだが、準決勝のもう1カードの勝ち抜けオッズでは、優勝国予想で5.5倍の2番手だったアルゼンチンを1.61倍、オランダを2.25倍に設定。ブラジルとドイツの一戦は、より拮抗していると見られている。

 なお、両国は長いワールドカップの歴史でも、対戦したことは2002年大会の決勝のみ。当時はブラジルが2-0で勝利して5度目の優勝を遂げたが、12年の時を経た2度目の対戦でも、当時を知る2人がキーマンとなりそうだ。

 悲願の母国優勝を目指すブラジルでは、2002年大会でもチームを率いていたルイス・フェリペ・スコラーリ監督の手腕に注目が集まる。

 華麗さが代名詞の王国だが、指揮官は勝利のために現実主義を貫くことを厭わない。準々決勝のコロンビア戦では相手エースのハメス・ロドリゲスを封じるべく、フェルナンジーニョを中心に激しい守備を敢行。サイドに流れるプレーを警戒してか、右サイドバックを守備に緩慢さが見られたダニエウ・アウヴェスからマイコンにシフトしてきた。

 果たして、ハメスをほぼ抑え込み、2大会連続で敗退していた鬼門の準々決勝を突破した。90分間、絶えずコーチングを続けて、センターバックでコンビを組むダヴィド・ルイスの好調ぶりを支えていたチアゴ・シウヴァを欠くのは相当の痛手だが、流動的に動くドイツのアタッカー陣を止めるべく、どのような策を講じるかが見ものだ。

 また、守備陣がスピード不足を抱えるドイツ相手に爆発的な速度を誇ったネイマールを欠く中、スピードのあるベルナルジやテクニカルなヴィリアンなど、交代策を含めてタイプの異なる選手でどれだけネイマールの穴を埋められるかが、勝利を手繰り寄せるポイントになりそうだ。

 一方、ドイツでカギを握るのはミロスラフ・クローゼか。両国含めて12年前にもピッチに立っていた唯一の選手は、36歳になった今も勝負強さは健在。今大会でも唯一ビハインドの展開だったグループ第2戦のガーナ戦では、途中出場から2分後に同点ゴールを挙げてチームを救った。準々決勝のフランス戦に続く先発出場は微妙なところだが、拮抗した展開でヨアヒム・ レーブ監督が頼りにするのは、酸いも甘いも噛み分けてきた大ベテランだろう。

 才気溢れる若手がひしめくドイツだが、史上初の4大会連続となるベスト4入りを果たした一方、ユーロを含めてメジャー大会の優勝から離れている。スマートな選手が急増する中で、かつて元イングランド代表のゲーリー・リネカー氏が、「フットボールは単純だ。22人がボールを奪い合い、最後はドイツが勝つ」と称したほどの勝負強さは薄れてきている。

 クローゼはガーナ戦の得点でワールドカップ通算15ゴール目となり、元ブラジル代表のロナウド氏と並び、歴代トップに立った。現代表でも古き良きゲルマン魂を漂わせるクローゼが、怪物の記録を抜き去ることで王国を沈めるという12年越しの壮大なリベンジは決して絵空事ではないはずだ。

 悲願。誇り。因縁。

 様々な感情が絡み合う優勝5度のブラジルと同3度のドイツ。決戦の地は、ブラジル南東部に位置する同国人口第4位の都市であるベロオリゾンテ。

「美しい地平線」を意味する地で、南米と欧州を長年リードしてきた超大国同士の衝突が実現する。

文=小谷紘友

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