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ドルトムントの番記者が香川を分析…新シーズンは再ブレイクの予感

2015.07.27

プレシーズンマッチでは安定したパフォーマンスを披露している [写真]=Borussia Dortmund/Getty Images

文=高尾太恵子/通訳=小林幸帆

「まあ、良しとしよう」

 そう言って、2014-15シーズンの香川真司を総括した。ドイツ誌『キッカー』の番記者として20年以上ドルトムントを追い続けるトーマス・ヘンネッケ氏の目に、日本代表の10番はどう映っているのか――。川崎フロンターレとのプレシーズンマッチを取材していた同氏に、香川の新シーズン展望を聞いた。

 ジグナル・イドゥーナに“シンジコール”が響き渡ったあの日、ヘンネッケ氏も「シンジは何も変わらない。以前ドルトムントにいたときのようにグッドパフォーマンスだ!」と胸を躍らせたという。

 2014年9月13日、古巣ドルトムントへ帰還した香川はフライブルク戦に先発出場すると、自らの復帰を祝うゴールを挙げ、約8万人のファン・サポーターからは大歓声が轟いた。ドイツメディアも香川の復帰ゴールを大絶賛。『カガワ祭りだ!』との見出しを付け、こぞって取り上げた。

 それは誰もが待ち望んだカムバックだった。マンチェスター・Uでの不遇に苛立ちを覚えていたドルトムントファンは、SNSを使って「#FreeShinji」のタグを世界中に広めるほど香川の将来を心配し、古巣への復帰を願っていた。香川自身もドルトムントでの再出発を望み、移籍が実現。フライブルク戦でのゴールには、復活を期する香川の思いが感じられた。

 しかし、“いい波”は続かなかった。復帰の瞬間に歓喜したヘンネッケ氏だったが、「ユナイテッドから戻ってきたシンジの調子は安定しなかった。試合で50〜60分を過ぎると足が止まり、フィジカルに問題を抱えていることは明らかだった」と冷静に分析する。香川はここから約半年もの間、ゴールから遠ざかることとなる。

「ウインターブレイクが明けた後半戦は、状態が良くなった」

 ようやくトンネルを抜け出したのは、今年3月のハノーファー戦だった。フル出場を果たし、1ゴール1アシストで勝利に貢献した。4月15日には恩師ユルゲン・クロップが退任を表明。この退任騒動も香川の復調に少なからず影響を与えたことだろう。発表から3日後のパーダーボルン戦、続くフランクフルト戦で2試合連続ゴールを挙げ、最終節のブレーメン戦では全得点に絡む活躍で恩師のホーム最終戦に花を添えた。最終的にリーグ戦で5ゴールを記録した香川について、「ユナイテッドではコンスタントに試合に出ることができなかった。実戦を重ねるにつれパフォーマンスも向上し、ゴールやアシストを決めるようになり、我々も『以前のシンジが戻ってきた』と楽観的な雰囲気になったよ」と笑顔を浮かべる。

 そもそも香川に対するドイツメディアの評価は高い。ヘンネッケ氏も「ドルトムントでプレーした2年間は、ドイツの“シューティングスター”だった。運動量が豊富で、見事なパスを出し、シュートもうまい。まだ伸びしろがあるし、再びブンデスリーガのスターになるだけのポテンシャルがある」と本来の能力を認める。

 だが、再ブレイクするためにはトーマス・トゥヘル新監督の信頼を勝ち取るという新たなハードルを乗り越えなければならない。試合中も頻繁にシステム変更をすることで有名な新監督について、「常に同じシステムで戦うクロップとは違う。どのシステムを採用するかによって起用選手は変わってくる。クロップのときは9人くらいの固定選手がいたが、マインツ時代のトゥヘルを見ると試合毎に起用選手を変えるのは当然のことだった。シンジがレギュラーになれるかどうか…答えるのは難しいね」と険しい表情でレギュラー確保の難しさを指摘した。

 実際、トゥヘル監督は試行錯誤を繰り返している。7月上旬のアジアツアーでは香川とマルコ・ロイス、ピエール・エメリク・オーバメヤンとヘンリク・ムヒタリアンのユニットを前後半で使い分けた。17日のボーフム戦では4人を同時に先発起用。21日のルツェルン戦では再び2人ずつに分けて出場させるも、25日のユヴェントス戦では香川以外の3選手を先発で起用し、後半からムヒタリアンに代えて香川を投入した。ポジション争いは激化の様相を呈している。

「新監督の下、勝負のシーズンになる。積極的に、そして貪欲に勝利と結果を求めてチャレンジしていきたい」と強い覚悟で新シーズンのスタートを切った香川は、プレシーズンマッチ5試合を消化して3ゴール3アシスト。現段階では安定したパフォーマンスを披露し、指揮官の評価も及第点といったところか。今シーズン最初の公式戦は30日に迫っている。ヴォルフスベルガー(オーストリア)とのヨーロッパリーグ予選3回戦ファーストレグで先発出場できるかが、ひとつのポイントになるだろう。

 ヘンネッケ氏は、熾烈なレギュラー争いを予想しながらも「シンジのようなグッドプレーヤーであれば、どの監督の下でも上手くやれるはず。トゥヘルの下でシンジが大きな役割を担うようになると確信している」と再ブレイクを信じてやまない。「もう一度、ブンデスリーガのスタープレーヤーになれる」という言葉からも、期待度の高さがうかがえる。香川の活躍が、昨シーズン7位と低迷したドルトムントを復活へと導く手助けになることは間違いない。ファン・サポーター、そしてドイツメディアまでもがピッチで躍動する香川を待っている。

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