ドルトムントとの新契約締結を拒否したギュンドアン [写真]=DFL via Getty Images
文=鈴木智貴
日本代表MF香川真司が所属するドルトムントは4月30日、ドイツ代表MFイルカイ・ギュンドアンとの間に締結されている2016年夏までの契約を更新しないことを発表した。クラブ側は「年俸650万ユーロ(約8億7750万円)で2019年まで」という大型の契約延長を申し出たが、同選手から断られたことがその理由だ。
当然と言うべきか、ファンの怒りという形に発展した。ドイツ代表MFマリオ・ゲッツェやポーランド代表FWロベルト・レヴァンドフスキら主力選手が毎年のようにクラブを離れていき、それは決して喜ばしいことではなく、裏切りとさえ解釈されてしまう。“可愛さ余って憎さ百倍”の言葉通り、なんと10万5000もの回答が集まったドイツ紙『ビルト』のオンライン調査では、約75%が「彼は恩知らずなやつだ」とし、『Facebook』のドルトムント公式ページでは「負傷していた1年半ずっとお前をサポートしてきたクラブに対する感謝の気持ちがそれなんだな」と皮肉のコメントを記すユーザーまで現れた。
数十年前からプロの世界に身を置き、それがどういうものかを熟知しているドルトムントのミヒャエル・ツォルクSDは、近い将来訪れるに違いないギュンドアンとの別れを惜しみつつも、同選手の考えに一定の理解を示している。
「我々はイルカイや彼の家族と、正直に、フェアに、そして透明性のある対話をしてきた。もちろん違う結果になることを願っていたが、イルカイはこれまで一度も間違ったプレーをしてこなかったという点に価値を置いている。『感謝の気持ちがあるかどうか』というのはここではテーマではない。それにイルカイがけがをしていた14カ月、彼の給料を支払っていたのは我々ではない」
『ビルト』によると、ブンデスリーガのクラブは労災保険組合に加入しており、条件を満たせば額面の80%ないし手取りの全額が支給される。つまり、負傷で1年以上プレーをしていなかったギュンドアンの年俸はドルトムントではなく、同組合が支払っていたことになり、少なくとも“給料泥棒”というわけではないとのことだ。
しかし、お金に関する事実がどうであれ、サポーターの怒りはそう簡単に静まらない。「記事を読まないようにしていたけど、もちろん友人たちから多少は聞いている。多くの人間が見せたリアクションについて、『ショックを受けていない』と言えばそれは嘘になってしまう」と困惑しているギュンドアンの移籍先について、サッカー市場の動向を伝える専門サイト『transfermarkt.de』ではマンチェスター・Uが52%、アーセナルとアトレティコ・マドリードが26%と続き、4位と5位はバイエルンとヴォルフスブルクでそれぞれ23%、21%としている。
「国外ならまだしも、ゲッツェやレヴァンドフスキと同じ選択をするのはやめてくれ」、そう思っているサポーターは決して少なくないはずだ。
By 鈴木智貴