2点目を決めたムシアラ(左)は圧巻のパフォーマンスを披露 [写真]=Getty Images
EURO2024・グループA第1節が14日に行われ、ドイツ代表とスコットランド代表が対戦した。
欧州王者を決める4年に1度の祭典、EURO2024の幕が上がる。ドイツで行われる今大会は、現地時間14日、開催国のドイツ代表とスコットランド代表のオープニングマッチでスタート。ドイツ代表は開催国のため予選を免除されたが、その期間に歴史的な不振に陥り、ハンジ・フリック前監督を解任。契約期間を残しての解任は、123年の歴史の中で史上初。だが、ユリアン・ナーゲルスマン監督の就任後は徐々に成績が上向き、2024年の国際Aマッチは3勝1分無敗。1996年大会以来、7大会ぶり4度目の優勝を狙う。
一方、スコットランド代表はEURO2024予選でグループAに組み込まれた。同居したスペイン代表を破るなど、開幕から5連勝と好スタートを切ったが、スペイン代表との“リターンマッチ”に敗れると、以降は2分で予選を終えた。それでも、ノルウェー代表を上回って2位通過。2大会連続4度目の本大会出場を決め、まずは初のグループステージ突破を目指す。
大会開幕戦に向けて、ナーゲルスマン監督は4-2-3-1の布陣を採用。“守護神”のマヌエル・ノイアー、右サイドバックに入るジョシュア・キミッヒ、右サイド2列目に入るジャマル・ムシアラという“バイエルン組”の3名に加え、センターバックのヨナタン・ター、中盤のロベルト・アンドリッヒ、左サイド2列目に入るフロリアン・ヴィルツという“レヴァークーゼン組”も3名入った。今大会終了後の現役引退を表明しているトニ・クロースも、中盤でタクトを振るう。一方で、スコットランド代表はキャプテンのアンドリュー・ロバートソンが左ウイングバック、キーラン・ティアニーが3バックの左に入る3-4-2-1のシステム。中盤の2枚はスコット・マクトミネイとカラム・マグレガーが務める。
試合はキックオフ直後、アントニオ・リュディガーからの1本のロングフィードで背後へ飛び出したヴィルツがチャンスを迎えたが、ここはGKアンガス・ガンが鋭い飛び出しでシュートを処理。その後もドイツ代表がボールを保持する構図に。スコットランド代表は5-4-1のミドルブロックを組み、コンパクトな陣形を維持しながらドイツ代表の攻撃を迎え撃つ。
ドイツ代表はロングボールを多用し、ムシアラ、ヴィルツ、イルカイ・ギュンドアンと2列目の選手がポジションを入れ替えながら背後のスペースを狙う。このような状況で迎えた10分、ピッチ中央やや左寄りの位置、フリーで顔を上げたMFトニ・クロースがロングボールで右サイドへ展開。高い位置をとっていたキミッヒが中央へ繋ぐと、遅れて顔を出したヴィルツが、ペナルティアークから右足一閃。ダイレクトで強烈なシュートを放つと、GKガンも反応したものの、ボールの勢いが勝ってゴールに吸い込まれた。
ブンデスリーガMVPのオープニングゴールで先手を取ったドイツ代表は、19分には細かいパスで中央を突破し、決定機を構築。ピッチ中央で前を向いたクロースがくさびのパスをつけると、うまく反転し、相手と入れ替わったギュンドアンがスルーパスを送る。抜け出したカイ・ハフェルツはボックス左でボールを収め、マイナスへ落とすと、ムシアラが見事なファーストタッチで相手をかわし、目の覚めるような強烈な一撃を叩き込んだ。
勢いに乗るドイツ代表は25分、左サイドを駆け上がったマクシミリアン・ミッテルシュテットがマイナスへ折り返すと、ボックス手前で前を向いたムシアラが相手のファウルを誘発。主審はPKを宣告したものの、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)を経て判定が変更。ファウルを受けた位置が外だったため、フリーキックに変更される。このフリーキックはボールをずらしてハフェルツが狙ったものの、GKガンにキャッチされた。
完全に流れを掌握したドイツ代表は、ボールを失っても激しいプレスで即座にボールを奪い返し、スコットランド代表の時間を作らせない。前半終盤に差し掛かると、42分にはキミッヒからのクロスボールをギュンドアンがヘディングシュート。枠を捉えた一撃はGKガンに阻まれたものの、こぼれ球にギュンドアンが反応。この場面で、ライアン・ポーテアスが足裏を見せたタックルへ行き、ドイツ代表にPKが与えられただけでなく、ポーテアスにはレッドカードが提示された。
このPKをハフェルツが難なく真ん中に沈め、ドイツ代表が3点をリード。スコットランド代表は前半シュートまで持ち込む場面を作れず、それどころか敵陣でプレーした時間もごくわずか。加えて後半は10人で戦うという厳しい展開を強いられ、ハーフタイムに入った。
後半に入ると、ドイツ代表は前半にイエローカードをもらっていたアンドリッヒを下げて、パスカル・グロスを投入。一方のスコットランド代表は、最前線のチェ・アダムスに代えて、センターバックのグラント・ハンリーを送り出し、まずは守備の安定を図る。
後半のスコットランド代表は中央を固める5-4のブロックを組み、まずはこれ以上の失点を避ける狙い。ドイツ代表は前半途中のように完全に崩し切るシーンが見られなくなり、63分にはレロイ・サネとニクラス・フュルクルクを投入。攻撃陣にフレッシュな面々を増やし、さらなるゴールを狙う。
守備を固めた上で、徐々に前へ出るシーンも作れるようになったスコットランド代表は、67分にケニー・マクリーンとビリー・ギルモアを投入。中盤に新たな選手を加えたが、交代選手が結果を出したのはドイツ代表の方だった。68分、敵陣左サイドタッチライン際でドリブルを開始したムシアラが、中央へ持ち出して斜めのパスを差し込むと、ゴール前へ走り込んだギュンドアンにはうまく収まらなかったものの、なんとかボールを後方に残す。引き取ったフュルクルクが右足で弾丸シュートを突き刺した。
4点をリードした後、ドイツ代表は74分にムシアラに代えてトーマス・ミュラーを投入。まだまだ点を取りに行く選手交代を敢行すると、直後の76分には左サイドのミュラーからのクロスボールにフュルクルクが反応し、胸トラップでボールを持ち出す。相手のクリアがフュルクルクに当たってクロスバーに当たると、跳ね返りをフュルクルク自ら押し込んだが、ここはクロスボールを受けた場面でのフュルクルクがオフサイドポジションにいたため、ゴールは認められない。
終盤に入るとスコットランド代表が一矢報いる。87分、敵陣左サイドでフリーキックを獲得すると、ロバートソンが左足でカーブのかかった一撃を蹴り込む。このボールがフュルクルクの頭に当たってファーサイドへ流れ、スコット・マッケンナが頭で折り返すと、これがリュディガーに当たってゴールネットを揺らす。オウンゴールで1点を返した。
ドイツ代表は1点を返されたものの、後半アディショナルタイムは敵陣へ押し込む状況のなか、ミュラーからの落としを受けたエムレ・ジャンが狙い澄ましたミドルシュートを沈める。追加招集でメンバー入りを果たしたジャンが早速結果を残し、再びリードを4点に広げた。
試合はこのまま5-1でタイムアップ。ドイツ代表は1点を返されたものの、初陣から大量5ゴールを記録。試合を通して完成度の高さを見せつけ、優勝への期待を抱かせるようなパフォーマンスを披露した。
次節は19日に行われ、ドイツ代表はハンガリー代表と、スコットランド代表はスイス代表と、それぞれ対戦する。
【得点者】
1-0 10分 フロリアン・ヴィルツ(ドイツ代表)
2-0 19分 ジャマル・ムシアラ(ドイツ代表)
3-0 45+1分 カイ・ハフェルツ(PK/ドイツ代表)
4-0 68分 ニクラス・フュルクルク(ドイツ代表)
4-1 87分 アントニオ・リュディガー(OG/スコットランド代表)
5-1 90+3分 エムレ・ジャン(ドイツ代表)
【スターティングメンバー】
ドイツ代表(4-2-3-1)
GK:ノイアー
DF:キミッヒ、リュディガー、ター、ミッテルシュテット
MF:アンドリッヒ(46分 グロス)、クロース(80分 ジャン);ムシアラ(74分 ミュラー)、ギュンドアン、ヴィルツ(63分 サネ)
FW:ハフェルツ(63分 フュルクルク)
スコットランド代表(3-4-2-1)
GK:ガン
DF:ポーテアス、ヘンドリー、ティアニー(78分 マッケンナ)
MF:ラルストン、マクトミネイ、マクレガー(67分 ギルモア)、ロバートソン
FW:マッギン(67分 マクリーン)、クリスティー(82分 シャンクランド);アダムス(46分 ハンリー)
By サッカーキング編集部
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