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戸田和幸氏が語る“エル・クラシコ”…両者の課題、キーマン、注目すべきポイントは?

2019.12.18

戸田和幸氏がクラシコについて語った

 今シーズン最初の“エル・クラシコ”がいよいよ、18日に開催される。本来は10月26日に行われる予定だったが、カタルーニャ自治州内の情勢不安によって延期となっていた注目の大一番。第16節消化時点の順位はバルセロナが首位、レアル・マドリードが2位となっているが、勝ち点は「35」で並んでおり、まさに首位決戦だ。

 サッカーキングでは、スポーツ・チャンネル『DAZN』でこの試合の解説を務める戸田和幸氏にインタビューを行い、両クラブの現状やクラシコを楽しむためのポイントなどを聞いた。

――直近の試合では、バルセロナはレアル・ソシエダと、レアル・マドリードはバレンシアと、それぞれ引き分けに終わり連勝がストップしています。
どちらもアウェイゲームで苦手な場所だったということもありますし、単純に今シーズンのソシエダはすごくいい。バレンシアも今、調子がいいですよね。だから、簡単には勝てない相手だったということだと思います。

――今シーズンのバルセロナは、やや失点が多いですよね。
シーズン序盤は単純に人が揃っていなかったので、まず攻撃の質が高くなかったと思います。そこが原因で切り替えの守備や、全体的にうまく守れないという課題が出ていました。(1-3で敗れた)レバンテ戦も、ハイプレスを受けた時に打開することができずにやられています。本来は(セルヒオ)ブスケツを中心に全体の距離を保ったまま攻撃をして、ボールを失ったとしてもすぐに奪い返すことができる守備が望ましいのですが、それができていなかった。バルセロナは守備時に「4-4-2」の形になりますが、どうしても“4-4”のツーラインだけでは守りきれないところが出てきますよね。16試合で20失点という数字は、各国リーグの一番上にいるチームというレベルで考えると少し多いので、守備面での課題はあると思います。ただその分、得点をとっていますからね。

――レアル・マドリードは逆に、得点力に課題を抱えているように感じます。
中盤の構成的に、インテリオールのひとり(トニ・クロース)はパサーで、もうひとり(フェデリコ・バルベルデ)はダイナミックに動くことができるけど、攻撃でつねに圧倒するという感じではないですからね。(カリム)ベンゼマはゴールを量産していて状態はすごくいいですけど、チャンスメーカーの役割も担っているので点を取ることだけに専念しているわけではない。あとは(エデン)アザールがもう少しフィットしてくれば点は増えるかもしれないですけど、破壊力という点ではバルセロナのほうが上ですね。

ベンゼマ

ベンゼマは好調だが、得点力は課題か… [写真]=Getty Images

――アザールは残念ながら負傷で欠場、マルセロも復帰が間に合わず招集メンバーから外れました。左サイドからの攻撃はレアル・マドリードの大きな武器になっていただけに、やはり影響は大きいですか?
影響はあると思います。組織を打ち破るには個の力が必要ですから。アザールがいれば左サイドでボールを持つことができて、そこから右に展開するとスペースを有効に使うことができる。一つの手としては、(ギャレス)ベイルを起用すれば、突破力や強力なキックがあるので変わるのかもしれないです。いる選手の中でどういう組み合わせにするのかということになりますよね。あとは左サイドバックにナチョ(フェルナンデス)を起用するとしたら、彼が高い位置まで出てきたとしても左足のクロスの質はあまり高くないので、そこをどう考えるか。(フェルランド)メンディなら攻撃面は任せられるけど、守備に重きを置くならナチョのほうが適任なのかもしれないですね。

――レアル・マドリードがアザールを欠く一方、バルセロナにはメッシがいます。彼はどうやったら止まるのでしょうか(笑)。
止まらないですよね。なので、そこにボールを持っていかせないような守備をする必要があります。バルセロナが負けた試合は、すごくコンパクトにプレッシャーをかけられて、攻撃の途中で奪われて失点というパターンが多いです。だから、レアルは全体の守備が重要になります。アザールがいたらそこはちょっとゆるくなる。いないならいないで、スタンスとしては「守備から」という気持ちは作りやすい。アウェイですしね。サッカーは攻撃と守備、どちらから入るかによって全然変わります。そういう意味では、レアルは人選も含めて、より守備からというのを考えると思います。そのなかでも、これまではカゼミーロが一手に引き受けていた広い空間をカバーする仕事を、今はバルベルデもシェアできるようになった。なおかつ彼は深い位置まで走ることができるので、守備の局面、さらにはそこからの攻撃という意味では、バルベルデのような選手が鍵になる可能性はあると思います。

メッシ

メッシは止まらない…? [写真]=Getty Images

――お話にあがったバルベルデの特徴や強みをもう少し詳しくお聞かせください。
まず、恵まれた身体は間違いなく持っていますね。走るスピードもありますし、止まることもできる。あそこまで走力があるとは思っていなかったです。あとは規律をしっかり守りながら、求められるタスクをこなすことができるし、攻守ともに切れ目なく動くことができる。意外にボールを運ぶスピードもすごいです。ボールを持っていても持っていなくても、必要なことができる、現代サッカーに合致した選手だという印象です。

バルベルデ

チームに欠かせない存在へと成長を遂げたバルベルデ [写真]=Getty Images

――一方のバルセロナはグリーズマンが徐々にフィットしてきているように感じます。
僕はそう見ています。でも点を取らないと、なかなか印象には残らないですよね。

――フィットするまでに要した時間は長かったですか?
長くはないと思いますよ。過去にフィットできなかった選手はたくさんいましたから。まだ加入して半年も経っていないですからね。これまでのキャリアを振り返れば、脇役をこなせる選手だということは間違いない。アトレティコでは点取り屋のような存在になりましたけど、レアル・ソシエダ時代はサイドハーフもやっていたので。バルセロナでは、どうしたってメッシが主役だというのはわかっていたはずだし、スアレスになれるわけでもない。そのなかでどう共存するのか、ということをちゃんと考えられる選手です。彼はワールドカップでも前線で黒子に徹していたし、そういうことが当たり前にできる。自分が望んで行ったクラブで何を求められているのかがはっきりわかっている、というプレーに見えますね。本当に阿吽の呼吸でバチッとはまるっていうところまではもう少し時間がかかるでしょうけど、彼の場合はオン・ザ・ボールではなく、オフ・ザ・ボールで違いが出せる部分も強みだと思います。メッシのように“オン”がすごい選手にとっては、“オフ”が得意な選手っていうのはすごくありがたいんですよ。なので、明確な王様がいて、その人と共存しながら自分のいいところもしっかり表現するという意味では、僕はいい方向に来ていると感じています。

グリーズマン

徐々に存在感を増しているグリーズマン [写真]=Getty Images

――同じく今シーズンから加入したデ・ヨングの印象もお聞かせください。
個人的にはピボーテとしてプレーする選手ではないなと思いました。アヤックスでのプレーを見ていればわかりますが、動ける選手だからこそ、ちょっと動きすぎてしまう。バルセロナのピボーテは、ある程度ポジションを守りながら全体に対して効果的にボールを供給していくことも大事です。だけどデ・ヨングはけっこうボールを持ちますよね。それが彼の強みなんですけど、それならピボーテではなくもう一つ前のポジションのほうがいい。ブスケツと横並びで出ていた試合もありましたけど、今のようにブスケツがピボーテにいて、デ・ヨングとラキティッチがインテリオールという並びのほうが、より補完性はとれていると思います。あとはやっぱり、ブスケツがいないバルセロナを見させてもらって、秩序やゲームコントロールのところが失われているように感じましたね。

――やはりブスケツは欠かせない存在ということですね。
そう思います。身体的に衰えたとかスピードがないとか言われますけど、もともと、かけっこが速い選手じゃないですから。できないことを言うな、ということです。あれだけサッカーを理解していて、なおかつ判断の正確さと的確な技術がありますので。足は速くないけど、守備の局面ではしっかりいるべき場所にいるし、重要な切り替えのところではちゃんとボールを奪うこともできる。誰かが走ればいいわけですから。走らなくていいポジションは走らなくていい。と言っても、彼もかなり走ってますけどね。やっぱりメッシ、スアレス、グリーズマンに対して“今”っていうタイミングでパスが出せるのはブスケツだけなんですよ。デ・ヨングはボールを持つから少し遅れるし、ラキティッチはそこまで繊細ではなく、ランニングで周りを生かす選手なので。ブスケツは身体的に衰えたわけじゃなく、もともとそういう選手なんです。「4-4-2」の守備になったときに、チームとしてどうするかという課題はありますけど、実はブスケツではなく、周りの選手の守備アクションに問題があったりもしますからね。

ブスケツ

[写真]=Getty Images

――クラシコは世界中が注目するビッグマッチです。やはり選手が受けるメンタル面での影響は大きいですか?
僕が経験したことがあるのは静岡ダービーくらいなので、比較にはならないし、わからないですけど(笑)。ただ、とても大きい試合なのは間違いない。「シーズンのなかの1試合だ」と言っても、後々まで語り継がれる試合になる。そういう意味で力は入るでしょうし、場数を踏んできた経験が生かされることになると思います。とは言ってもメッシなんかは若い頃から活躍していたので、“何を持っているか”で決まると思いますね。経験値だけじゃなく、その人が何を持っているのかが問われる試合です。だから17歳でも活躍しちゃうかもしれないし、こういう試合で活躍すれば1つ上のステージに行ける。そうやって伸びていく選手が、ひょっとしたら若い選手の中から現れるかも知れないですよね。

――ちなみに戸田さんは静岡ダービーやワールドカップなど、ビッグマッチの前は燃えるタイプでしたか?
はい、燃えていました。

――それは現在の解説のお仕事でも同じですか?
そうですね。すごく昂ります。僕は、それをなるべく普通に出すようにしています。あまり淡々と話してもしょうがないので。ナチュラルにですけどね。

――そういう意味では、今回のクラシコは非常に多くの視聴者が観戦するビッグマッチですが、話す内容も試合によって変わるものなのでしょうか。
内容は変わらないです。起きていることを話すのが仕事なので。実際に起ったことを、できるだけ正しく伝えるのが仕事ですから。そこは、「たくさんの人が見るからちょっと地上波寄りに持っていこう」とかはないです。たしかにいろんな人が見ます。でも、その試合の魅力をできる限り漏らさずに伝えるのが義務なので。見せ方を間違えてしまうと、サッカーが間違って伝わってしまう。変に、イベント的に軽くするのもダメだと思いますしね。すごく重厚な歴史があって、だからこそ世界で一番大きな試合と言われているわけです。僕はサンチャゴ・ベルナベウでクラシコを見ているんですけど、やっぱり決して軽い盛り上がりではなかったです。ドシッとしたところから盛り上がっているものなので、今回スタジアムは違いますけど、そういうのを思い出しながら話をしようと思います。

――最後に改めて、今回のクラシコで戸田さんが注目しているポイント、そして視聴者に注目してほしいところを教えて下さい。
延期になったからこそ、成熟度だったりフィットしてきた選手の活躍が見られそうな気がするので、そこは楽しみですね。それからサッカーは4局面(攻撃、守備、攻→守の切り替え、守→攻の切り替え)なので、攻撃がメインなのか守備がメインなのかで作り方が変わります。バルセロナレアル・マドリードはどちらも攻撃がメインのチームですけど、普段しないことをどれだけやるかが試合に大きな影響を与えると思います。なので、バルセロナだったらメッシとスアレスの守備から始まる部分もある。そして、こういう試合は本当に1つのミスや1つのビッグプレーで決まります。僕がサンチャゴ・ベルナベウで見た試合では最後の最後にメッシが決めてバルセロナが勝ちましたけど、現地ではセルジ・ロベルトが自陣からボールを運んだ時点で、マルセロがファウルをしてでも止めるべきだったと言われていました。本当に最初の起点のところだけど、そこを止められなかったらゴールに繋がってしまうというのが世界トップレベルなんです。そういう一瞬の決断。判断というより決断ですよね。百戦錬磨の、世界トップの人たちがいろいろなものを積み上げてきた先の一瞬で決まります。なので、僕はまず、そういうのをきちんと伝えたいですし、皆さんにはそういう切れ目の瞬間をしっかり見ておいてもらいたいです。4局面のなかでどういう駆け引きがあるのか。攻撃、守備、そして切り替えのところですね。これはちゃんと見ていないとわからないです。いつ切り替わったのか、守備から攻撃、攻撃から守備というのは切れ目なくシームレスに動いているので、サッカーにグッと入り込みたい人は、そうやって前のめりで見てほしいです。そうでない層の人は、メッシやベンゼマをはじめ、ビッグな選手たちがどういう形で輝くのかを単純に楽しんでもらえたらいいと思います。

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