2018.10.27

【ラ・リーガツアー/2日目】エスパニョールは大志を抱く

誇り高きエスパニョールは下部組織を強化している。いつか、「夢」が叶うと信じて。
サッカーキング編集部

 僕はこの原稿をホテルの自室で書いている。ラ・リーガツアー2日目の全工程が終了したのが18時半、ホテルに戻ってきたのが19時ちょうどだ。一日に一本記事を上げることが今回のツアーにおける僕のタスクの一つだが、このあと21時からは、通訳をお願いしているムツさんと夕食を食べに行くことにしている。それまでに、何とかこの原稿を仕上げておきたい。

 渡航前にツアーのスケジュール表を確認した時、僕はこの2日目を密かに楽しみにしていた。この日、僕たちジャーナリスト一行を迎えてくれるのはエスパニョール。バルセロナを拠点とする、青と白のユニフォームが特徴的なクラブだ。

 僕がリーガにのめり込みはじめた2000年頃、エスパニョールは決して強いクラブではなかった。いや、むしろエスパニョールが無類の強さを発揮した時代は、過去をさかのぼっても見当たらないと言っていいだろう。コパ・デル・レイを4回制し、UEFAカップ(現UEFAヨーロッパリーグ)で準優勝を成し遂げたことはあるものの、リーガでは中位が基本ポジションで、残留争いに巻き込まれることも珍しくなかった。

 だが、侮ることなかれ。エスパニョールは強固な育成組織を持ち、多くの優秀な選手を育て上げてきた「育成のクラブ」なのだ。今回のツアーでは、彼らがどのような育成メソッドを持っているのかについて知ることができそうだと思ったし、自前で育てた選手を信頼するクラブの風土に以前から好感を抱いていた僕は、純粋にエスパニョールの哲学に直接触れてみたいと望んでいた。この日を楽しみにしていたのは、そういった理由からだった。

 ホテルを出発したバスが、エスパニョールのホームスタジアム『エスタディ・コルネリャ=エル・プラット』に到着した。バルセロナの市街地から少し離れたところに、2009年に開場した近代的なスタジアムだ。

バルセロナ市内を抜けて高速道路を走ると、エスパニョールの本拠地が見えてくる。

 スタジアム内に入ってまず気になったのは、クラブカラーである青と白の壁に囲まれた縦長の部屋。そこに置かれたミニチュアのスタジアム模型の横に、献花がされてあった。

ネームプレートの傍に、控えめな白い花が飾られていた。

 実はこれ、亡くなったソシオ(ファンクラブ)会員の遺骨を安置している供養台なのだそうだ。遺族が希望した場合、正式な手続きを踏めば、故人はここで眠ることができる。このスペースに入れるのは、試合開始の2時間前から。遺族は週末にここで手を合わせ(スペインでは手を合わせる風習はないかもしれないけど)、エスパニョールの試合を観て、故人をしのぶ。サッカーが人々の生活に、人生に根付いているスペインならではのエモーションを感じた。

直訳すると「追憶の空間」。試合を観に行くことが、故人の供養につながっている。

 スタジアムを後にして、メッシやイニエスタらも訪れたレストラン『Les Marines Restaurant』で昼食をとる。お腹が満たされたところで、次の目的地である『シウタ・エスポルティバ・ダニ・ハルケ』に向かった。

『シウタ・エスポルティバ・ダニ・ハルケ』はエスパニョールの練習場だ。バルセロナに生まれ、エスパニョールの下部組織で頭角を現し、キャプテンも任されながら、2009年に急性心筋梗塞で急死したダニエル・ハルケの名前が刻まれている。

 会見場でしばらく待っていると、下部組織のコーディネーターであるアルベルト・サウスがやってきた。アルベルトは、僕たちの前に現れるや否や熱を帯びた口調でこう語りかけた。

「私たちには夢があるんだ」

 キ〇グ牧師かな? などと野暮なツッコミを入れてはいけない。彼は続けざまに、僕たちに向かってこう言い放った。

「2020-21シーズンまでに、エスパニョールはトップチームを100%下部組織出身の選手たちで構成したいと思っている」

 相当難しいことではあるんだけど、と彼は付け加えたが、クラブが本気でこの高難度のミッションを達成しようとしているのはよく分かった。事実、現在のトップチーム23人の中で、下部組織で鍛え上げられた選手は10人にも及んでいる。

エスパニョールには、夢がある。

 ユースチームが使用する練習場には、『Orgull perico』という文字が書かれた青い看板が立っていた。Orgullは『誇り』、pericoはエスパニョールの総称で『インコ』という意味だが、そんなメッセージ性の強い看板を、トップチームが使う練習場ではなく、下部組織の選手たちが汗を流すグラウンドに立てるあたりに、クラブの矜持を感じずにはいられない。もっとも、これは僕の言葉ではなく、ムツさんが言った言葉である。

――ふと時計に目をやると、ちょうど21時を指していた。良かった。夕食の約束には間に合ったようだ。ホテルから徒歩約5分の距離にあるという、メッシの親族が経営するレストランにアポなしで突撃してみようと思う。

文=松本武水

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