スペイン代表では主軸となりつつあるイスコだが… [写真]=Getty Images
27日に行われたアルゼンチン代表との国際親善試合で、キャリア初のハットトリックを達成したスペイン代表MFイスコ。同代表では定位置を確保しているが、所属するレアル・マドリードでは直近の公式戦11試合でスタメン出場が5試合に留まるなど控えに甘んじることも多い。なぜ、代表とクラブでこれほど対照的な立場にあるのか。28日付のスペイン紙『アス』が3つの理由を挙げている。
■監督からの信頼
同紙がまず挙げたのは、監督からの“信頼”の差だ。アルゼンチン戦後のイスコのコメントは象徴的である。同選手は「ロペテギ監督は僕に出場機会を与えることで信頼を示してくれる。レアル・マドリードでは選手が必要とする信頼が得られていない。それはおそらく、信頼を勝ち取れていない僕に問題があるだろう」と語った。
2013年のU-21欧州選手権で優勝したスペイン代表を率いたのは、ロペテギ監督だった。イスコは当時の教え子に当たる。同監督はその頃からイスコを“お気に入りの選手”として扱い、A代表の監督就任以降も「彼は好きな選手」だと公言してきた。
昨年9月に行われたイタリア代表とのW杯予選でも、ロペテギ監督はイスコを先発起用。すると、同選手は2ゴールを挙げて、3-0の勝利の立役者となった。「イニエスタとイスコは2人でとてもうまくプレーできる」。試合後に指揮官がそうコメントしたように、同タイプのバルセロナMFアンドレス・イニエスタとの共存も成立させた。
一方、レアル・マドリードのジネディーヌ・ジダン監督も、基本的にはイスコを気に入っているという。過去には「自分に似ている選手」と発言したこともある。しかし、昨シーズンの終盤に好パフォーマンスを見せ、チャンピオンズリーグ(CL)の連覇達成に貢献したにも関わらず、今シーズンはすでに23試合で途中交代を命じている。最近ではスタメン落ちも珍しくなく、イスコを全面的に信頼しているとは言い難い。
■4-3-3との相性
同紙は次に、レアル・マドリードが採用する4-3-3との相性が悪いと指摘している。現状、中盤の3枚はブラジル代表MFカゼミーロ、ドイツ代表MFトニ・クロース、クロアチア代表MFルカ・モドリッチの3選手が不動。そのため、前線3つのポジションを、ポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウド、フランス人FWカリム・ベンゼマ、ウェールズ代表FWギャレス・ベイルの“BBC”と争わなくてはならない。イスコにとっては高いハードルとなっている。
昨シーズンの終盤、ベイルの負傷離脱によって中盤を1枚増やした4-4-2が採用されて以降、イスコが好パフォーマンスを見せたことは示唆に富む。ただし、今シーズンのCLパリ・サンジェルマン戦で4-4-2が採用された際には、スペイン代表FWルーカス・バスケスや同代表FWマルコ・アセンシオ、またクロアチア代表MFマテオ・コヴァチッチらに先発出場のチャンスが与えられ、同選手はベンチスタートとなった。それだけポジション争いが激しいとも言えるが、レアル・マドリードでは絶対的存在のC・ロナウドに合わせた戦い方が優先されることも、イスコにはハンデになっていると、同紙は指摘している。
■プレースタイル
そして最後に同紙が挙げた理由は、プレースタイルだ。スペイン代表は選手同士の流れるようなパスワークをベースにした連携プレーで相手陣内に攻め入るのに対し、レアル・マドリードはより選手個々の能力に頼った直線的なサッカーを志向している。そのため、スピードがあり縦への突破力に優れるL・バスケスが、クラブではイスコを一歩リードしているとされる。
またスペイン代表には、相手の出方を“待つ”ことでプレーを選択する「ラ・パウサ」の使い手が多いことも、イスコにとってはプラスに働いていると、同紙は指摘する。アルゼンチン戦では45本のパスを試み、失敗したのはわずか2本だけ。ボールを奪われたのも5回だけだった。一方、レアル・マドリードでは、1試合平均12回のボールロストを記録しているという。一方的に仕掛けるのではなく、相手の動きの逆をとることでボールを奪われるリスクを軽減する。そのスタイルが、イスコの良さを引き出しているという。
得点数にも違いが表れている。ロペテギ監督就任以降、イスコはスペイン代表で13試合に出場して9ゴールをマーク。出場75分につき1ゴールを奪っている。一方、レアル・マドリードでは今シーズン、1ゴールを奪うのに327分のプレー時間を必要としているという。
代表とクラブで“2つの顔”を持つイスコ。今後、レアル・マドリードでも好パフォーマンスを見せることはできるのか、注目が集まる。
(記事/Footmedia)
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By Footmedia