2017.02.16

【コラム】アイデンティティを失いつつあるバルサ…新たなスタイルは結果につながるのか

メッシ
アイデンティティが薄れつつあるバルセロナ [写真]=Anadolu Agency/Getty Images
フリーライター&フォトグラファー。スペインで活動中。

 ボールの保持率を上げて、決定機をつくるポゼッション・サッカー。今は亡きルイス・アラゴネス監督がスペイン代表でユーロ2008優勝という成果を出し、そのチームの中軸であったシャビ、アンドレス・イニエスタに、リオネル・メッシという天才を加え、ジョゼップ・グアルディオラ監督が発展させ、バルセロナは1つの完成形を見出した。

 ボールとともに主導権を握り、試合をコントロールするスタイルは、バルセロナの代名詞となった。グアルディオラ監督はバルセロナを去った後もバイエルン、マンチェスター・Cで築き上げたスタイルをかたくなに貫いている。一方、「カンテラ」というワードとともに「ポゼッション・サッカー」がクラブのアイデンティティと喧伝されたバルセロナだが、今はその両方を失いつつある。

 かつてはバルセロナの試合が行われる度に、決定機の数や試合の流れ、対戦相手の戦略意図も考慮せずに「ボールポゼッション、脅威の80パーセント」という見出しが飛び交った。バルセロナと言えば、中盤のパスワークを中心にしたボール保持率の高さだった。今は違う。リーガ・エスパニョーラ第21節アスレティック・ビルバオ戦でのボールポゼッションは54パーセント、コパ・デル・レイ準決勝アトレティコ・マドリード戦では51パーセントだった。どちらもホームゲームだった。バルセロナのスタイルは変わった。今の彼らのサッカーを見て思い浮かぶ単語は「スター」であり、「カウンター」だ。

 今、カンプ・ノウのスタンドが腰を浮かせるのは、パスを回している時ではなく「カウンター」になった時だ。メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの3人が形成する“MSN”が広大なスペースを前にボールを持った時、観衆は得点を期待する。メッシはカンテラ出身だが、スアレスとネイマールは天文学的な移籍金を払って獲得した「スター」選手だ。

 ルイス・エンリケ監督は、MSNを活かそうと攻守の切り替えの速さをチームに求めた。手にする食材の良さを最大限に活かそうとするシェフと同じだ。シャビがいない中盤にかつてのクオリティはない。昨夏にアンドレ・ゴメス、デニス・スアレスを獲得し、中盤の選択肢は増えたが、クオリティは以前の水準に達していない。イニエスタ、セルヒオ・ブスケツは不動のレギュラーで、あとの1枚は試合ごとに顔ぶれが変わっている。中盤のレギュラーは固定されていない。また近年はブスケツ、ペドロ・ロドリゲス、クリスティアン・テージョ、イサーク・クエンカのようなカンテラからの底上げもない。下から選手を昇格させるかどうかは指揮官の意思も大きいが、バルセロナはチェルシーへ移籍したペドロに代わる第4FWとして、23歳のパコ・アルカセルを3000万ユーロ(約36億円)で獲得した。他のビッグクラブと何ら変わらないお買い物ぶりだ。アイデンティティは薄れてきている。

 ただソシオはタイトルを勝ち取れば満足だ。だからタイトルを手にするための補強に大金を使わなければならないことも理解し、前線のスターを活かす中盤を省略したサッカーを受け入れた。2014-15シーズンに3冠を達成し、会長退任が濃厚だったジョゼップ・マリア・バルトメウが54.8パーセントの投票を手にし、シーズン後の選挙で再選したことで実証されている。

 バルセロナは今シーズン、タイトルを勝ち取れるのか。

 リーグ戦では、現時点で消化試合が2つ少ないレアル・マドリードよりもポイントは少ない。さらにエンリケ監督が「完全な失敗だった」と公言するようにチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦ファーストレグでパリ・サンジェルマンに0-4で敗れ、崖っぷちだ。

 パリ・サンジェルマン戦はポゼッションでは57パーセントと上回ったが、枠内シュート数はホームチーム9本に対してバルセロナはたった1本と、数字が示すように効果的なパスワークはなく、決定機はカウンター時のネイマールのドリブルから生まれたシーンだけ。完敗だった。

 序盤はプレスを攻略できず、リードを許すとカウンターを警戒して後方に敷く相手も崩せなかった。かつてのような相手のMFとDFの間に生まれるスペースを活かしたパス交換はなく、バルセロナの選手がパスを受けても常に目の前にはセンターバックを後方に従えた相手MFがいた。前半途中にゲームを落ち着かせるために中盤に下がってきたメッシだったが、前半のボールタッチ数は17回と、ここ4年で最もタッチ数が少ない45分間だったとスペイン紙『ムンド・デポルティーボ』が伝えていた。セビージャよりも高いクオリティの陣容を手にしたスペイン人監督ウナイ・エメリに骨抜きにされた。バルセロナは「ポゼッション・サッカー」はもとより「カウンター」も仕掛けられず、頼りの「スター」もひらめかなかった。

文=座間健司

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