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リーガに異変? 財布のひもが固い今夏、市場閉幕ぎりぎりで補強ラッシュか

2016.08.07

ウォームアップをするバルサの選手たち。スタンドはまだがらがらだ [写真]=Getty Images

 試合開始1時間前のスタジアムはがらがらだ。スペインでは試合前に選手たちがピッチでウォームアップを始めても、スタンドの4分の1も埋まらいのがほとんど。観衆は近くのバルで互いの近況を伝え、くだらない冗談を飛ばし、愛するチームについて正解のない議論を交わしてからビール瓶をカウンターに置いて、やっとスタジアムに足を向ける。そして選手入場の3分前ほどに席に着く。スタンドが埋まるのは、だいたいキックオフの直前だ。

 今夏の移籍市場における各クラブの補強も同じだろうか。

 バルセロナレアル・マドリードを除けば、昨夏よりもリーガ・エスパニョーラの各クラブの懷は潤った。プロリーグ機構が放映権料を管理することで、以前よりも少しは均等に配分されるようになったからだ。

 しかし、潤ったはずの各クラブの財政は、移籍市場に反映されていない。

 7月23日付のスペイン紙『エル・パイス』はリーガのチームが今夏の選手獲得に使った金額は2億8300万ユーロ(約319億円)で、5億7800万ユーロ(約653億円)を使っているプレミアリーグには遠く及ばず、4億2400万ユーロ(約479億円)のブンデスリーガ、3億2600万ユーロ(約368億円)のセリエAよりも少ないと報じていた(7月23日時点なので、ユヴェントス移籍のアルゼンチン代表FWゴンサロ・イグアイン、アトレティコ・マドリード移籍の元フランス代表FWケヴィン・ガメイロらの移籍金はこの数字に含まれていない)。

 移籍市場が閉まるまであと約40日ある時点での数字だが、2億8300万ユーロは近年のリーガ所属クラブが投資した額と比べても少ない。リーガの各チームは過去3シーズン、移籍市場で5億7155万ユーロ(約645億円/2015-16シーズン)、4億5800万ユーロ(約517億円/2014-15シーズン)、4億1100万ユーロ(約634億円/2013-14シーズン)のお金を使ってきた。

 今夏は放映権料の分配により近年で最も予算の余裕があるはずだが、クラブは財布のひもを固く閉めている。特にレアル・マドリードの補強は、ユヴェントスからスペイン代表FWアルバロ・モラタを買い戻したぐらいだ。もしかしたら、スタジアムにやって来る観衆同様、移籍市場が閉まるぎりぎりになってから、積極的な補強を始める腹づもりなのかもしれない。

 とはいえ、昨夏にレアル・マドリードがスペイン代表GKダビド・デ・ヘアを市場閉幕ぎりぎりで獲得しようとして失敗に終わったことを、スペイン人はまだ忘れていないはず。それを教訓として、各クラブは時間に余裕を持って今夏の補強を進めていくことだろう。観衆は娯楽でスタジアムを訪れるため、キックオフ後にシートに座っても許されるが、移籍はそうはいかない。

文=座間健司

By 座間健司

フリーライター&フォトグラファー。フットサルとサッカーを中心にスペインで活動中。

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