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トップ4を目指すトッテナムの“ジョーカー”はヴェルナー? 冬の補強とスパーズの10年間

2024.03.27

ティモ・ヴェルナーはトッテナムにCL出場権をもたらせるか [写真]=Getty Images

 今季のプレミアリーグも終盤戦に差し掛かり、アーセナル、リヴァプール、マンチェスター・シティによる“三つ巴”の優勝争いだけでなく、トップ4最後の1枠を巡る争いも過熱している。

 現在4位につけるアストン・ヴィラは、29試合を消化した時点で勝ち点「56」を獲得。彼らを「3」ポイント差で追うトッテナムは消化が1試合少ないため、状況を考えるとほぼ互角と言っていい。さらに、トッテナムの「6」ポイント下には巻き返しを目指すマンチェスター・ユナイテッドも控えている。

 残り試合の難易度を考えると、マンチェスター・ユナイテッドが有利との見方が強いが、アストン・ヴィラとの「9」ポイント差を埋めるのは決して簡単ではない。データサイト『Opta』のスーパーコンピューターによると、4位の確率が最も高いのはトッテナムで「47.8%」だという。次いでヴィラの「46.1%」、ユナイテッドはわずか「3.9%」となっている。

 データ上では本命の“スパーズ”にとっては、シーズン終盤にカギを握るのは冬に加入した選手かもしれない。昨年11月にヨハン・ランゲがテクニカルディレクター(TD)に就任したトッテナムは、1月の移籍市場でライプツィヒからドイツ代表FWティモ・ヴェルナーを買い取りオプション付きレンタル移籍で獲得。ジェノアからルーマニア代表DFラドゥ・ドラグシンも約2600万ポンド(約4900億円)の移籍金で戦力に加えた。前者はマンチェスター・ユナイテッド、後者はバイエルンとの競合の末、獲得に成功したという。

 なかでも期待が寄せられるのはヴェルナーだ。2020-21シーズンから2年間在籍したチェルシーでは、プレミアリーグ56試合の出場でわずか10ゴールという成績にとどまり、「失敗」の烙印を押されたため、トッテナムが獲得を発表した時も疑問視する声が聞かれた。だが、出場7試合目となった3月2日の第27節クリスタル・パレス戦(○3-1)でゴールを奪うと、続くアストン・ヴィラ戦でもネットを揺らし、プレミアリーグでは直近3試合で2ゴール。さらに守備でもチームに貢献している。今季のトッテナムはアンジェ・ポステコグルー監督のもと、ハイプレスの指標とされる「OPPDA」(敵陣で守備アクションをするまでに敵に許したパス数)がリヴァプールを抑えてリーグ1位だ。ヴェルナーも快速を活かして積極的にプレスをかけており、彼がさらにチームに馴染めば、トッテナムもトップ4入りに大きく近づくだろう。

ティモ・ヴェルナー

パレス戦で加入後初ゴールを決めたヴェルナー [写真]=Getty Images

 冬の新戦力がスパーズをトップ4に導くかもしれないということで、過去10シーズンの彼らの冬の補強と、それぞれのシーズンの行方を振り返ろう。

■2014-15シーズン

補強選手:デレ・アリ(移籍元:MKドンズ)

デレ・アリ

翌年から正式に合流したデレ・アリトッテナムの一時代を築くアイコンに [写真]=Getty Images


 
 サウサンプトンで手腕を評価されたマウリシオ・ポチェッティーノを監督に迎えたトッテナム。冬の移籍市場では、MKドンズ(当時3部リーグ)から18歳のデレ・アリ(現:エヴァートン)を獲得したのみだった。デレ・アリはそのままローンバックでMKドンズに残留認め、実質の補強は0人で終了。しかし。未来への投資を怠らなかったトッテナムは、このシーズンにハリー・ケイン(現:バイエルン)がブレイクを果たし、公式戦で31ゴールを決めてチームの得点王に。最終的にはプレミアリーグを5位で終えた。

■2015-16シーズン

補強選手:なし

ハリー・ケイン

ケインはその得点力に磨きをかけたシーズンだった [写真]=Getty Images

 ポチェッティーノ体制2年目の夏の移籍市場では、同監督の御眼鏡に適わなかった選手を大量放出。一方で、現キャプテンのソン・フンミンや、キーラン・トリッピアー(現:ニューカッスル)、トビー・アルデルヴァイレルト(現:ロイヤル・アントワープ)を加え、“ポチェッティーノ色”を一気に濃くした。トップ4での年越しに成功したトッテナムは、冬には補強を一切行わなかったが、2月上旬には2位に浮上。しかし最後の2試合で連敗を喫し、2位アーセナルとわずか勝ち点「1」差の3位でシーズンを終了。個人成績ではケインが25ゴールを決めてプレミアリーグの得点王に輝いた他、加入1年目のデレ・アリも2桁得点を記録した。

■2016-17シーズン

補強選手:なし

トッテナム

ケイン、デレ・アリら攻撃陣が躍動したシーズン [写真]=Getty Images

 チャンピオンズリーグ(CL)はグループステージ敗退に終わったが、リーグでは好調のシーズンだった。ポチェッティーノ監督の下で円熟味を増したチームは、攻守が上手くかみ合い、冬に戦力をいじる必要はなかった。リーグ最多得点、そして最少失点でシーズンを終了したが、アントニオ・コンテ率いるチェルシーに「7」ポイント及ばず、初優勝とはならなかった。それでもケインが2年連続で得点王のタイトルを獲得しただけでなく、デレ・アリとソン・フンミンも2桁ゴールを達成し、プレミアリーグではクラブ史上最高位となる2位でフィニッシュ。トッテナムの未来は明るいと多くの人が信じていた。

■2017-18シーズン

補強選手:ルーカス・モウラ(移籍元:パリ・サンジェルマン)

ルーカス・モウラ

この冬加入したルーカス・モウラは、翌年のCLで躍進の原動力となる [写真]=Getty Images

 新スタジアム建築のために『ウェンブリー・スタジアム』をホームとして戦ったシーズン。レアル・マドリード、ドルトムントと同組だったCLのグループステージを首位通過したトッテナムは、ポチェッティーノ体制下で初めて本格的な冬の補強を実施した。しかしパリ・サンジェルマン(PSG)から2500万ポンド(当時のレートで約39億円)で獲得したブラジル代表FWルーカス・モウラ(現:サンパウロ)がスタメン起用されたのはFAカップのみで、戦力として機能したとは言えず。それでも、マンチェスター・シティが早い段階に独走態勢に入ったシーズンのなか、大崩れすることなく3位でシーズンを終え、CL出場権を手にしている。

■2018-19シーズン

補強選手:なし

トッテナム

初のCL決勝ではリヴァプールの前に屈した [写真]=Getty Images

 既存の戦力で戦うことを選択したトッテナム。夏の移籍市場ですら一切の補強を行わなかったが、リーグ戦は2位で折り返すことに成功した。しかし2月後半からはCL決勝トーナメントとの並行に苦しみ、プレミアリーグはマンチェスター・シティとリヴァプールの一騎打ちに突入。『トッテナム・ホットスパー・スタジアム』のオープンに伴い、シーズン終盤に本拠地を移す慌ただしさのなかでは、トップ4の座を死守するのが精いっぱいだった。しかしCLでは準々決勝でマンチェスター・シティ、準決勝でアヤックスをそれぞれアウェイゴール差で下して決勝へ進出。ファイナルではリヴァプールに0ー2で敗れたものの、ポチェッティーノ体制5年目は華々しく幕を閉じた。

■2019-20シーズン

補強選手:ステーフェン・ベルフワイン(移籍元:PSV)、ジェドソン・フェルナンデス(移籍元:ベンフィカ)

ステーフェン・ベルフワイン

ベルフワインはデビュー戦でゴールという鮮烈なスタートを切る [写真]=Getty Images


ジェドソン・フェルナンデス

ジェドソン・フェルナンデストッテナムでは本領発揮とはならず [写真]=Getty Images

 大きな決断を下したシーズンだった。開幕12試合でわずか3勝しかあげられず、14位に転落したタイミングで、5年半にわたって相思相愛の関係にあったポチェッティーノ監督に別れを告げたのだ。直後に新監督として発表されたのは、チェルシーで3度のプレミアリーグ制覇を経験しているジョゼ・モウリーニョだった。監督が変われば当然のことながら移籍市場でも動きが生まれる。トッテナムはこの冬、PSVからオランダ代表FWステーフェン・ベルフワイン(現:アヤックス)を2700万ポンド(当時のレートで約39億円)で獲得。ベンフィカからポルトガル代表MFジェドソン・フェルナンデス(現:ベシクタシュ)もレンタル移籍で加えた。一方で、2013年夏に加入してから中心選手として活躍し続けたクリスティアン・エリクセン(現:マンチェスター・ユナイテッド)がチームに別れを告げた。

 コロナ禍の影響で3月から6月までリーグ戦が中断するという異例のシーズン。さすがのモウリーニョ監督もチームを完全に立て直すことはできずに、最終順位は6位に。5シーズンぶりにCL出場権を逃した。
 

■2020-21シーズン

補強選手:なし

ジョゼ・モウリーニョ

モウリーニョ体制最終年はうまくいかなかった [写真]=Pool via Getty Images

 前半戦は完璧だった。開幕戦ではエヴァートンに敗れたものの、その後は11試合連続で無敗をキープ。10月にはモウリーニョ監督の古巣でもあるマンチェスター・ユナイテッドに『オールド・トラフォード』で6ー1の大勝を収め、翌月にはマンチェスター・シティにも勝利。11月下旬には首位に浮上した。

 しかし冬の補強を行わずに迎えたシーズン後半にチームは大失速。1月下旬からの1カ月間に行われたリーグ戦6試合で5敗を喫し、9位まで転落。ヨーロッパリーグ(EL)もベスト16で敗退した。マンチェスター・シティとのEFLカップ決勝を6日後に控えた4月19日、クラブはモウリーニョ監督を解任。ライアン・メイソン暫定監督の下、7位でシーズンを終えた。

■2021-22シーズン

補強選手:デヤン・クルゼフスキ(移籍元:ユヴェントス)、ロドリゴ・ベンタンクール(移籍元:ユヴェントス)

デヤン・クルゼフスキ

クルゼフスキとスパーズの物語は今も続く [写真]=Getty Images


ロドリゴ・ベンタンクール

加入早々中盤に彩りをもたらしたベンタンクール [写真]=Getty Images

 開幕前にウルヴァーハンプトンを離れ、新監督に就任したヌーノ・エスピリト・サントは、冬の移籍市場を迎えることすらできなかった。開幕10試合で5敗を喫したトッテナムは、傷口が広がる前に監督交代を決断。ヌーノ監督を解任した翌日の11月2日に、夏の段階でインテルを退任してフリーになっていたアントニオ・コンテを招聘した。

 コンテ監督が最初の移籍市場で戦力に加えたのは、自身の古巣でもあるユヴェントスのウルグアイ代表MFロドリゴ・ベンタンクールとスウェーデン代表MFデヤン・クルゼフスキだった。両選手とも加入直後からレギュラーとして活躍。チームはプレミアリーグで4位に終わり、CL出場権を無事に獲得。リーグで23ゴールを決めたソン・フンミンは、リヴァプールのモハメド・サラーと共に得点王に輝いた。

■2022-23シーズン

補強選手:アルノー・ダンジュマ(移籍元:ビジャレアル)、ペドロ・ポロ(移籍元:スポルティング)

アルノー・ダンジュマ

ダンジュマはトッテナムでは本来の得点力を発揮できず [写真]=Getty Images


ペドロ・ポロ

ポロは今やトッテナムに欠かせない存在に [写真]=Getty Images

 ワールドカップがシーズン中に開催され、全チームが苦戦した1年だった。加えて、トッテナムは10月にフィットネスコーチのジャン・ピエロ・ヴェントローネが逝去。コンテ自身も胆のうの摘出手術の為、1月下旬にチームを離脱するなど、激動のシーズンを送った。

 そんな中で迎えた冬の移籍市場ではビジャレアルからオランダ代表FWアルノー・ダンジュマ(現:エヴァートン)をレンタル移籍で獲得。さらに、右サイドバックのマット・ドハーティ(現:ウルヴァーハンプトン)とジェド・スペンス(現:ジェノア)を放出してまで、同ポジションのペドロ・ポロをスポルティングから買い取り義務付きのレンタル移籍で加えた。

 しかし、トッテナムは3月下旬、記者会見でクラブへの不満を爆発させたコンテ監督と袂を分かつことに。後任には同氏のアシスタントのクリスティアン・ステッリーニを暫定的に据えるも、CL出場権を争うニューカッスルに1-6の大敗を喫した後で解任。2シーズンぶりに暫定監督のメイソンの下でシーズンを終えることになった。

(記事/Footmedia

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By Footmedia

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