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“不死鳥”の歩みで辿り着いた初のプレミアリーグ…ルートン、奇跡の残留へのカギは?

2023.08.09

クラブ史上初のプレミアリーグに挑むルートン [写真]=Getty Images

 今週末に開幕するプレミアリーグに初挑戦するクラブがある。それが29年ぶりにトップリーグ復帰を果たしたルートンだ。それでは新シーズンを前にルートンについて知っておきたいことを確認しよう。

[写真]=Getty Images
 

■クラブ史


 
 ルートンの歴史は波乱万丈の連続。ロンドンから北に50㎞ほど、人口約22万人の町ルートンに本拠を置くのがルートン・タウンFCだ。138年前に設立されたクラブは、イングランド南部で初めてプロ化したクラブであり、それまで中部・北部のクラブで運営されていたフットボールリーグにも参入するようになった。
 
 経営難もあり一時は地域リーグに落ちるも、フットボールリーグに復帰するとプロリーグに定着。下部リーグでの暮らしが続いたが1955年に初めてトップリーグに昇格。1959年にはクラブ史上初にして今のところ唯一のFAカップ決勝にも進出した。ノッティンガム・フォレストに敗れて栄冠を逃すも、ルートンにとっては黄金期だった。その頃のチームを支えたのはクラブの英雄、シド・オーウェンだ。1998年に他界した元イングランド代表DFは通算420試合以上に出場し、ルートンの選手として唯一、記者協会の年間最優秀選手を受賞している(1958-59)。
 
 しかし、その後はプロリーグの最下層である4部まで降格したことも。それでも不死鳥のように蘇ると再びトップリーグに返り咲く。そんなルートンのクラブ史を語る上で欠かせないのが、のちにトッテナムを率いたりメディアで活躍することになるデイヴィッド・プリート監督だ。彼の元で1982年にトップリーグに復帰し、彼が退任した翌年の1986-87シーズンには1部リーグで7位と躍進。これが今のところルートンのクラブ史上最高位となっている。さらに1987-88シーズンにはリーグカップ決勝でアーセナルを3-2で下してクラブ史上初となるタイトルを獲得した。しかし1991-92シーズンの最終節、勝てば残留の望みがあるなかで敗戦を喫し、翌シーズンに華々しい開幕を迎えるプレミアリーグという金脈にありつけなかった…。
 
 そこからルートンの暗黒時代が始まる。4部まで降格すると、財政難により行政管理下に置かれて勝ち点剥奪。さらに代理人への違法な支払いも発覚して2008-09シーズンには10ポイントの減点処分を受けて5部リーグへ降格。89年間在籍したフットボールリーグ(イングランド上位4リーグ)に別れを告げ、5年間もノンリーグで過ごすことになった。
 
 それでも2015年に4部リーグに復帰したルートンは、着実にステップアップを果たして2019年には2部まで昇格。そして昨シーズン、29年ぶりにトップリーグ昇格を決めるのだった。
 

■監督

初昇格に導いたエドワーズ監督


 
 クラブを初めてプレミアリーグの舞台に導いたのは昨年11月に就任したばかりのロブ・エドワーズ監督だ。40歳の指揮官は、現役時代にウォルヴァーハンプトン(ウルヴズ)などで活躍した元ウェールズ代表DF。怪我のため30歳で現役を引退すると指導者の道に進み、マンチェスター・Cのアカデミーを手伝ったあとにウルヴズの下部組織で手腕を発揮し、イングランドの年代別代表の監督も任された。その後、2021-22シーズンに4部リーグにいたフォレスト・グリーン・ローヴァーズをクラブ史上初の3部昇格に導くと、シーズン後には2部のワトフォードに引き抜かれた。だが昨年9月、就任からわずか4カ月で解任されてしまった。
 
 その頃、ルートンも転機を迎えていた。2021-22シーズンにチームを2部リーグで6位まで引き上げたネイサン・ジョーンズ監督の元、再び上位進出を目指していたのである。しかしシーズン途中の昨年11月、サウサンプトンに指揮官を引き抜かれてしまう。そこで宿敵であるワトフォードを去ったばかりのエドワーズに声をかけたのだ。実は、ルートンとワトフォードは30㎞ほどしか離れておらず苛烈なライバル関係にあるため、両クラブを率いる監督が誕生したのは84年ぶり史上2人目のことだった!
 
 エドワーズは、就任時10位にいたチームを3位まで浮上させると、昇格プレーオフを制してクラブ史上初のプレミアリーグ昇格へと導いたのだった。チームのスタイルは3バックのショートカウンター型。ポゼッション率は2部リーグでも下位の方だったが、運動量の多いプレスで相手を追い込んで高い位置でボールを奪いチャンスを作り出した。それからセットプレーを得意としており、今オフにはセットプレーコーチを招聘してさらに磨きをかけている。
 

■スモールクラブ

本拠地『ケニルワース・ロード』


 
 チームの規模は極めて小さい。今オフにはアイルランド代表FWチドジー・オグベネ、DFマッツ・アンデルセン、MFタヒス・チョンなど昨季2部や3部リーグで活躍した選手を加えたが、それでも世界中のタレントが集まるプレミアリーグの中では最弱の戦力。データサイト『Transfermarkt』によると、ルートンのスカッド全体の市場価値は5200万ポンド(約95億円)。これはマンチェスター・Cやアーセナルの20分の1。それどころか、FWアーリング・ハーランド(一人で1億5000万ポンド)の3分の1の価値なのだ…。
 
 当然、降格候補の最有力である。ブックメーカー『William Hill』によると降格オッズは大本命の「1.33倍」。そのため残留するためには奇跡が必要だが、そのカギを握るのが本拠地ケニルワース・ロードだろう。同会場は収容人数「1万356人」でプレミアリーグ史上最小のスタジアムになるはずだったが、今オフに1000席以上を増やす改修工事でボーンマスの「11,307人」を超える予定。その工事のせいでシーズン序盤は本拠地を使用できず、ホーム初戦となるはずだった第2節のバーンリー戦は延期が決まっている。
  
 だが、その“狭さ”が彼らの強みかもしれない。ケニルワース・ロードのピッチサイズは「100.6m×65.8m」。これは標準の「105m×68m」をかなり下回るサイズとなっており、ルートンが得意とするハードワーク、フィジカル、プレスを存分に活かせるはずだ。
 
 プレミアリーグ初挑戦となるルートンは、ホームで勝ち点を稼いで残留を目指すことになる!

(記事/Footmedia)

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