インス氏の参入で6人に！　EFLで監督を務める元イングランド代表戦士たち

　チャンピオンシップ（イングランド2部）で下位に低迷するレディングは20日、元イングランド代表MFポール・インス氏が暫定監督に就任したと発表した。2014年にブラックプールを退任して以降、8年ぶりに現場復帰を果たしたインス氏。22日に迎えた初陣では、元イングランド代表MFリー・ボウヤー氏が率いるバーミンガムを2－1で下し、白星スタートを切っている。

　イギリスメディア『ミラー』によれば、インス氏の参入により、EFL（イングランドの2部から4部）でイングランド代表歴のある監督は全部で6人になったという。そこで今回は、EFLで指揮官として奮闘中の“元イングランド代表”を紹介する。この中から近い将来、上のカテゴリーへステップアップする監督は出現するのだろうか。

[写真]＝Getty Images

■スコット・パーカー（ボーンマス／2部）

イングランド代表キャップ数：18

　今回紹介する6人の中で、プレミアリーグに最も近いのがスコット・パーカーだ。現役時代はウェストハムやトッテナムでセントラルMFとして活躍したパーカー。2010年ワールドカップでは候補に選ばれながら、大会登録メンバーに入ることができなかった。しかし、ロイ・ホジソン氏が監督を務めたEURO2012では、全4試合に先発出場を果たしている。

　2017年に現役を引退すると、トッテナムのU－18チームで指導者のキャリアをスタート。翌年、現役時代の最後を過ごしたフルアムのアシスタントコーチに就任すると、クラウディオ・ラニエリ氏が解任された2019年2月から暫定監督を務めることに。降格を免れることはできなかったが、オーナーのシャヒド・カーン氏はパーカーを正式に監督に任命。元イングランド代表MFは期待に応え、1シーズンでクラブをプレミアの舞台に戻すことに成功した。しかし、2020－21シーズンを18位で終え、2度目の降格に立ち会ったパーカーは、シーズンオフにフルアムを退任。その数時間後、ボーンマスの新監督としてパーカーの名前が発表された。現在、チャンピオンシップで昇格争いを演じるボーンマス。消化試合が2つ少ない状況ながら、首位フルアムと勝ち点9差の2位につけている。

■リー・ボウヤー（バーミンガム／2部）

イングランド代表キャップ数:1

　私生活のトラブルがなければ、もっと順調なキャリアを歩めたかもしれない。リーズの主力として活躍していた2000年1月、チームメイトのジョナサン・ウッドゲイトと共に、アジア人学生への暴行容疑で起訴されたリー・ボウヤー。最終的にボウヤーは無罪になったものの、招集間近と言われていた代表入りのチャンスは遠ざかってしまった。イングランド代表として初めてピッチに立ったのは、2002年のワールドカップ後に初めて行われた親善試合のポルトガル戦。デビュー戦でアシストも記録したが、キャップ数が「1」から増えることはなかった。

　試合中にチームメイトと殴り合うなど、その後もプレー以外の行動でメディアを賑わせたボウヤー。引退後は自身の原点であるチャールトンで指導者の道をスタート。2018年3月に暫定監督に抜擢されると、翌シーズンの開幕後に監督の座を射止めた。正式に指揮官となった最初のシーズンにリーグ1からチャンピオンシップへの昇格に成功したボウヤーだったが、1年で3部に逆戻り。昨年3月15日にチャールトンの監督を辞任すると、その翌日に古巣バーミンガムの監督に就任したことが発表された。2011年を最後にプレミアリーグから遠ざかっているバーミンガム。現在はチャンピオンシップの18位に低迷しているが、選手時代に天国と地獄を味わったボウヤーの下でチームを再生し、1つでも上の順位を目指したいところだ。

■ウェイン・ルーニー（ダービー・カウンティ／2部）

イングランド代表キャップ数：120

　選手時代の実績は6人の中で群を抜いているのがウェイン・ルーニーだ。マンチェスター・Uの歴代最多スコアラーとして名を残し、クラブに主要タイトルを12個ももたらしたルーニー。イングランド代表では当時の史上最年少となる17歳と111日でデビューを果たすと、18歳で参加したEURO2004では大会ベストイレブンに選出された。EUROとワールドカップに3回ずつ出場したレジェンド。引退までにイングランド代表で歴代最多となる53得点をマークした。

　2020年1月にチャンピオンシップのダービー・カウンティにコーチ兼任プレーヤーとして加入したルーニーは、同年11月からフィリップ・コク氏の後任として暫定監督を務めることに。その2カ月後、正式にダービーの監督に任命され、現役引退を発表した。今季はここまで33試合を戦い終えて22位に沈んでいるダービー。36歳の若き指揮官は、リーグ1への降格の危機からチームを救うことができるだろうか。

■ポール・インス（レディング／2部）

イングランド代表キャップ数：53

　華やかな現役時代と比べ、監督としては実績を残せていないポール・インスは、8年ぶりに舞い込んだチャンスをものにすることができるだろうか。現役時代はマンチェスター・Uやインテル、リヴァプールなどで活躍。イングランド代表としては1996年と2000年のEURO、1998年ワールドカップで主力としてプレーをし、キャプテンを務めたこともあった。リーグ2のマクルスフィールドで、選手兼任で監督業を始め、2007年に現役を引退。MKドンズをリーグ2王者に導いた手腕が買われて、2008年にプレミアリーグのブラックバーンへステップアップ。しかし開幕17試合でわずか3勝しか挙げられず、就任からわずか半年で解任の憂き目に遭った。

　2013年2月に息子トム・インスが所属していたブラックプール（2部）の監督に就任。2013－14シーズンは開幕6試合で5勝1分けの好スタートを切ったが、徐々に調子を落とし、2014年1月に退任した。以降、監督業から遠ざかっていたインスに声をかけたのは、またしてもトムの現所属先であるレディングだった。U－23チーム監督のマイケル・ジルクスと共にケアテーカーとしてチームを率いることになったインス。チャンピオンシップの21位に沈む名門を浮上させることができれば、自身の経歴の軌道修正も可能となるはずだ。

■ジョーイ・バートン（ブリストル・ローヴァーズ／４部）

イングランド代表キャップ数：1

　ボウヤーと同じ“ワン・キャップ・クラブ”の一員。ピッチ外の言動がキャリアを後退させたところも共通点だ。マンチェスター・Cで才能を開花させたジョーイ・バートン。スティーヴ・マクラーレン氏が監督を務めていた2007年2月にスペイン代表との親善試合で初キャップを獲得。強豪国を相手に好プレーを見せたバートンだったが、その翌月にタクシー運転手への暴行疑惑が浮上。同年5月には練習でチームメイトのウスマン・ダボを殴打する“事件”の末にニューカッスルへ移籍。しかし新天地でも改心することはなく、年末に泥酔状態で暴力沙汰を起こし、刑務所で年越しを迎えた。

　2017年に長年の賭博関与が明らかとなったバートンは、活動禁止処分が明けた2018年の夏にリーグ1のフリートウッド・タウンで監督業をスタート。2021年1月に退任すると、翌月にブリストル・ローヴァーズ（当時3部）の監督に就任した。チームは4部に降格したが、バートンは続投。現在はリーグ2の9位につけている。かつて最初で最後となった代表でのプレーを、「世界と欧州で王者となるスペインを相手に最高のプレーをした。でも外出して、ビールを飲み、街中で口論をして、その後は二度と呼ばれなかった」と振り返ったバートン。軽率な行動が才能を台無しにする怖さは誰よりも熟知しているだろう。

■ナイジェル・クラフ（マンスフィールド・タウン／4部）

イングランド代表キャップ数：14

　父ブライアン・クラフが率いるノッティンガム・フォレストで選手キャリアをスタート。攻撃的なポジションの選手としてリヴァプールやマンチェスター・Cでもプレーをしたナイジェル・クラフ。イングランド代表としては1989年5月にチリとの親善試合でデビューを飾り、計14試合に出場したが、大舞台には恵まれず。ゴールは一つも記録することができなかった。

　1998年に7部のバートン・アルビオンの選手兼監督に就任し、2009年まで同クラブを率いたクラフ。その後、ダービー・カウンティとシェフィールド・Uで監督としての経験を積むと、2015年12月にジミー・フロイト・ハッセルバインクが去ったバートン（当時3部）の監督に復帰。シーズンを2位で終え、バートンをクラブ史上初のチャンピオンシップの舞台に導いた。2シーズンに渡って2部で戦ったバートンだが、2017－18シーズンを23位で終えて3部に降格。クラフはコロナ禍で財政難に陥ったクラブを2020年5月に離れることになった。その6カ月後からリーグ2のマンスフィールドで指揮を執るクラフ。昨季は16位でシーズンを終えたが、今シーズンは消化試合が少ない中で3位トランメア・ローヴァーズと6ポイント差。現在、12試合連続で負けなしと好調で、3部への昇格が十分に狙える位置に付けている。

（記事／Footmedia）