2016.08.13

【プレミア開幕展望】王者レスターは“夢の続き”を満喫できるか? 岡崎慎司のさらなる活躍にも期待が高まる

「フットボール」と「メディア」ふたつの要素を併せ持つプロフェッショナル集団を目指し集まったグループ。

 ひたむきさを絵に描いたような、根っからの雑草集団だ。プレミアリーグ王者の地位にあぐらをかいて、足下をすくわれることは考えられない。奇跡のプレミアリーグ優勝を成し遂げた昨季と何も変わらないクラウディオ・ラニエリ監督の言葉が、そのことを物語っている。

「最初の目標は残留ラインの40ポイントだ。40ポイントに到達できたら、次の目標は10位以内に入ることだ。そのあとはEL出場権、CL出場権の獲得だ」

 そして、自慢のプレースタイルが変わることもない。チェルシーに移籍したエンゴロ・カンテがアンディ・キングに代わった以外は昨季と同じスタメンがピッチに並んだ8月7日のコミュニティーシールドでも、それは見てとれた。ポゼッションにも、パスの本数や成功率にも一切こだわらず、ボールを持ったらとにかく前に運んで、少ない手数で高速カウンター。守ってはFWからDFまで全員が一丸となってハードワークを怠らず、屈強なセンターバックがボールを跳ね返し、こぼれ球を全力で拾ってまたカウンター。これを90分間ハイスピードで繰り返すレスター流は、愚直だが効率的で完成度が高く、わかっていても簡単には止められない。

 そんなサッカーの要であり、得点源であるジェイミー・ヴァーディ、リヤド・マフレズが今季も健在だ。ヴァーディはアーセナルのオファーを断って残留宣言。マフレズも現在進行形でアーセナルから狙われており8月末まで予断を許さない状況ではあるが、本人が「もう1年レスターで」と意欲を見せている。彼らが元気でいる限り、さすがに連覇は難しくとも、降格争いに逆戻りするようなことはないだろう。

昨季、チームの大躍進をけん引したヴァーディー(中)とマフレズ(左)は今シーズンも健在 [写真]=Getty Images

昨季、チームの大躍進をけん引したヴァーディー(中)とマフレズ(左)は今シーズンも健在 [写真]=Getty Images

 たしかに、中盤でボールを奪いまくり、拾いまくっていたカンテのチェルシー移籍は痛い。だが、1-2で敗れたとはいえマンチェスター・Uと互角に戦ったコミュニティーシールドを見る限り、組織と結束力でしっかりとカバーされていた印象だ。ラニエリが「カンテみたいな選手」と語る新戦力、ナンパリス・メンディの存在も心強く、彼がフィットすれば、カンテ退団の穴は最小限に抑えられるだろう。

 そのメンディの他に、今夏ここまでレスターが獲得した新戦力は4人。この中で、“不動のスタメン”の牙城を崩す選手がどれほど現れるか。GKロン・ロベルト・ツィーラー(ハノーファー)は、守護神カスパー・シュマイケルのバックアッパーからスタートだ。スペイン人DFルイス・エルナンデス(スポルティング・ヒホン)は、ラニエリが「スマートでボール扱いがうまい」と評するように、ウェズ・モーガン&ロベルト・フートの巨漢コンビとやや違った長所に期待がかかる。また、彼は右サイドでもプレーできて、ロングスローも投げられる。左のクリスティアン・フクスに次ぐ“飛び道具”としても重宝しそうだ。

 攻撃陣では、先のユーロ2016で4試合に出場したポーランド代表の新星バルトシュ・カプストカ(クラコヴィア)と、クラブレコードの1800万ポンドで獲得したナイジェリア代表FWアーメド・ムサ(CSKAモスクワ)に大きな期待が集まっている。彼らがそれぞれ定位置を争うのは、左のマーク・オルブライトンと、そして前線の岡崎慎司である。昨季の攻撃陣で、ラニエリがアップデートを望んでいるのがこの2カ所になる。オルブライトンも岡崎も、よく走り、よく戦い、ヴァーディやマフレズの決定力を存分に引き出した昨季の功労者であることは間違いない。だが、アタッカーとしてはアシストやゴールの数に物足りなさがあったのも事実で、カプストカとムサはその解決策として白羽の矢を立てられたと想像できる。

 とりわけ、岡崎とムサの2人は一長一短で、現時点でどちらがレギュラーになってもおかしくない。岡崎の精力的かつ効果的なフォアチェックやプレスバックはチームの誰もが認める武器だし、密集地帯でボールを受けるリンクプレーや、センスある囮の動きなども現地で高く評価されている。一方、VVV時代に吉田麻也と、CSKAでは本田圭佑と一緒にプレーしたムサには規格外のスピードがある。プレシーズンマッチのバルセロナ戦で相手守備網をぶち破ったシーンは衝撃的だったし、先発した岡崎と代わって後半に出場したコミュニティーシールドでも、ムサが俊足を生かして長い距離をドリブルで持ち運んだのがきっかけで、ヴァーディの得点が生まれている。ヴァーディとムサのコンビを「プレミア最速2トップ」と呼んだのはクラブOBのギャリー・リネカーだが、この韋駄天アタッカーもまた、チームの新しい武器になることは間違いない。

新加入のムサ(左)とメンディ(中)には即戦力として大きな期待が寄せられている [写真]=Getty Images

新加入のムサ(左)とメンディ(中)には即戦力として大きな期待が寄せられている [写真]=Getty Images

 ムサがサイドに回って両者が共存する可能性もあるが、やはりヴァーディの相棒に求められるのは、岡崎自身も移籍2年目の課題として挙げている“得点力”に他ならない。ヴァーディとマフレズへの警戒度がさらに高まることを考えても、レスターが昨季と同等以上のインパクトを残すには「第三の矢」が絶対不可欠。そのことを誰よりも理解している岡崎は、45分間プレーしたコミュニティーシールドでは積極的にゴールを狙う姿勢を見せている。残念ながら味方のクロスに合わせたヘッドはクロスバーを叩いたが、ラニエリが求める守備の役割をまっとうした上で、ゴールを狙う姿勢は常に示していかなければいけない。そして、巡ってきたチャンスをどれだけ数字に繋げられるかが、生き残りのカギになる。

 実際のところ、プレミアとチャンピオンズリーグの両立が求められる今季のチームは“総力戦”。ファーストチームの全員に一定以上の出場機会が担保されるはずだ。しかし、ターンオーバーの中でも「ファーストセット」の11人は必ず固定されてくるはずで、FWはゴール数が増えれば自ずとそこに入れるし、CLやリーグの大一番でピッチに立てれば、さらにそこでネットを揺らして評価を上げることもできる。特にCLは、岡崎にとって念願だった初舞台であると同時に、縁の下の力持ちとしてチームに貢献してきた男が一発のビッグゴールで主役の座に躍り出ることができる大舞台でもある。

岡崎がレギュラーとして定着するためには得点力の向上が必須条件となる [写真]=Getty Images

岡崎がレギュラーとして定着するためには得点力の向上が必須条件となる [写真]=Getty Images

 ただし、チームとして見れば、この夢のステージがリーグで足かせになるのも事実。ラニエリとスタッフたちの緻密なコンディション管理により、あらゆる試合で相手を圧倒するフィットネスを見せつけたのが昨季のレスターだったが、その肝になっていた「週休2日」作戦が使えず、逆に「週2試合」を強いられるため、心身ともに選手たちが疲弊するのは間違いない。ミッドウィークにハイテンションなCLの戦いを終えた直後のリーグ戦は、どんなビッグクラブでも苦しめられるもの。補強を施したとはいえ層が厚いとはいえず、大半の選手が過密日程に不慣れなレスターにとってはなおさらハードで、思った以上に苦しむことも十分に想像できる。

 そんな苦境が訪れたとき、持ち前の結束力を武器に、小さなキツネたちはどれだけ踏ん張ることができるか。何しろ前人未到のミラクルストーリーを紡いだチームだ。勢いそのままに“夢の続き”を満喫する可能性も十分に考えられるが、それまでが嘘だったかのように“夢の終わり”を突きつけられ、ノルマである勝ち点40ポイントの積み上げにすら四苦八苦する恐れもある。

 果たしてどちらに転ぶか、ミラクルチームの“その後”からも目が離せそうにない。

レスター

 2016-17シーズンのプレミアリーグは13日に開幕する。レスターが数々のビッグクラブを倒し、初優勝を果たした昨シーズン。連覇がかかるレスターで岡崎はどのような活躍を見せるのか? また、マンチェスターのビッグクラブには新監督が就任し、最高峰リーグの戦術にどんな変化が生まれるかも注目だ。J SPORTSでは「16/17 イングランド プレミアリーグ」の注目試合を毎節5試合放送する。

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