2015.02.13

亡き父の希望叶えたクーマン兄弟、好調サウサンプトンを支えるコーチ陣

兄エルウィン(左)と弟ロナルド(右)のクーマン兄弟 [写真]=Getty Images
ロンドン在住のサッカーライター。

文=藤井重隆

 下馬評を覆す好調の背景には一体何が?

 日本代表DF吉田麻也の所属するサウサンプトンが、下馬評をことごとく覆し、プレミアリーグ第25節を終えて4位と、来シーズンのチャンピオンズリーグ出場権獲得圏内(4位以内)に狙いを定め、好調を維持している。

 今シーズンは開幕前から中心選手だったイングランド代表FWリッキー・ランバート、MFアダム・ララーナ(ともにリヴァプール)、DFルーク・ショー(マンチェスター・U)、DFカラム・チェンバース(アーセナル)をはじめ、クロアチア代表DFデヤン・ロヴレン(リヴァプール)をビッグクラブへと一斉に売却。さらには、ウルグアイ代表MFガストン・ラミレス(ハル・シティ)とポーランド代表GKアルトゥール・ボルツ(ボーンマス)もレンタルで放出した上に、チームを指揮したマウリシオ・ポチェッティーノ前監督もトッテナムへと移籍したため、地元メディアは一様に「サウサンプトンは降格する」とのレッテルを貼った。

 だが、新任したロナルド・クーマン監督は抜けた穴を的確に埋め、イタリア代表FWグラツィアーノ・ペッレ、セルビア代表MFドゥシャン・タディッチ、セネガル代表MFサディオ・マネ、ベルギー代表DFトビー・アルデルヴァイレルト、イングランド代表GKフレイザー・フォースター、DFライアン・バートランドらを補強し、いずれの選手も即戦力として躍進を支えている。

 クーマン監督を陰で支えるコーチ陣を紹介したい。

 助監督としてクーマン監督の右腕となっているのが兄のエルウィン氏。昨夏にサウサンプトンに就任するまでは、エールディビジ(オランダ1部)のヴァールヴァイクを2シーズン指揮した。昨シーズンは同リーグ最小スタジアム(収容数7500人)の弱小クラブを入れ替え戦プレーオフの末に降格させてしまったが、フェイエノールトを2位に導いた弟ロナルドからの初めての誘いを快諾した。

 エルウィン氏は、兄弟が同じチームを率いる事は2013年に亡くなった父マルティン氏が強く望んでいたこととしており、「私たちはかつて、兄弟で同じチームを率いれば必ず上手くいくと話していたが、父もそれを強く望んでいた。残念ながら、彼はそれを観る前に亡くなってしまったが、本当に喜んでいると思う」というエピソードを明かしている。

 2人は現役時代、クラブレベルでは1982-83シーズンにフローニンゲンで共にプレーし、5位に導く活躍を見せ、同クラブに史上初のUEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)出場権をもたらした。その活躍により兄弟の名が上がり、オランダ代表でもドイツで開催された1988年欧州選手権で史上初の優勝に大きく貢献した。

 1軍コーチを務めるヤン・クライテンベルフ氏はクーマン監督が昨シーズンまで指揮したフェイエノールトをはじめ、AZやベンフィカでもコーチとして帯同していた人物だ。選手たちのフィットネスレベルを管理する一流コーチで、選手の特性に合わせた個人メニューを課しているほか、けがの予防となる体調管理も行っているとされる。

 もう一人の1軍コーチ、サミー・リー氏はイングランドでは言わずと知れた陰の功労者として知られる。1993年から11年間リヴァプールでコーチを務め、2001年からの5年間はイングランド代表のコーチも兼任し、当時『黄金世代』と言われた同国代表を陰で支えた。現役時代にも、『黄金期』と称されたリヴァプールでクラブ史上初のリーグ3連覇達成に貢献したほか、欧州制覇を3度経験した。

 サウサンプトンの強化部長を担うのは、元イングランド代表ユースレベルのコーチ、マーティン・ハンター氏だ。コーチになる前は体育と地理の教師として学校の教壇に立ったこともあるハンター氏は、イングランドサッカー協会で13年間ユースレベルのコーチを務め、アーセナルのFWセオ・ウォルコットやマンチェスター・UのMFマイケル・キャリックらを育て上げた。2010年からサウサンプトンのU-21コーチとして在籍し、欧州屈指のアカデミー体制を構築。ハンター氏はイギリス紙『テレグラフ』に対し、「サウサンプトンでは、コーチ陣に3つの事を必ず実施してもらっている。選手たちを全力でプレーさせ、楽しませ、何かを学ばせることだ」と語っている。

 一方、サウサンプトンは今シーズンから4000万ポンド(約73億円)を投じて建設された新たな練習施設に移転しており、同施設には最新器具が完備されているほか、自軍の反省点や対戦相手を分析するデータ班が常駐している。

 昨シーズンまでの指揮官であったポチェッティーノ監督が自軍より上の順位に立ち続けるサウサンプトンの好成績を羨むように、「あのチームの基盤は私が築いた」と述べたが、これに対してクーマン監督は次のように受け流している。

「意見を言うのはその人の勝手だし、現に私は満足のいく仕事ができているから、ポチェッティーノには“ありがとう”と言おうか。我々は多くの主力選手を失い、チームを大きく変えなくてはならなかったが、いい選手を連れてきたスカウト陣には感謝している。チームは一人で成り立つものではないから、今のチーム体制はすごく良い」

 サウサンプトンは全てのカップ戦で敗退しているが、裏を返せばリーグ戦に集中できる環境が整っている。今シーズン残りの13試合では、リヴァプール、チェルシー、トッテナム、マンチェスター・Cら強豪との対戦が控えているが、1月にシーズン終了までの期限付きで加入したオランダ代表MFエルイェロ・エリアとセルビア代表MFフィリップ・ジュリチッチが上手くチームに順応し、負傷者が復帰して再びチームの歯車がかみ合えば、4位という夢の最終順位も手中に収める事ができるかもしれない。

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