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ついに辿り着いた決勝の舞台…PSGは強烈プレスをかいくぐれるか/CL決勝プレビュー

クラブ史上初のCL決勝進出を果たしたパリ・サンジェルマン [写真]=Getty Images

 ついに、ついに、この舞台に辿り着いた。

 QIA(カタール・インベストメント・オーソリティ)がクラブオーナーとなり、会長に就任したナセル・アル・ケライフィが「5年でビッグイヤーを手に入れる」と宣言したのが2011年。その翌年からチャンピオンズリーグ(CL)に挑んできたが、最初の4年はベスト8、その後の3年はベスト16で敗退した。しかも、2016-17シーズンはバルセロナに、昨シーズンはマンチェスター・Uにセカンドレグで大逆転負け。失態に次ぐ失態に、周囲からは冷ややかな視線を浴び、カタール資本の撤退が噂されたこともあった。

 それでも、「RÊVONS PLUS GRAND(=フランス語で「もっと大きな夢を見よう」)」をスローガンに掲げ、夢を諦めることがなかったパリ・サンジェルマンは、CLファイナルの舞台にたどり着いた。

 前身のヨーロピアン・カップ時代から数えて、41番目のファイナリスト。UEFA.comやクラブ公式サイトによれば大会デビューから初の決勝進出までに114試合を戦ってきたが、これはアーセナルの90試合(1971年~2006年)を上回る史上最長記録である。本当に長く険しい道のりだったのだ。

 今大会も順風満帆だったわけではない。レアル・マドリードが同居したグループステージを首位で通過し、ドルトムントを逆転で下してベスト8進出。勢いに乗ったまま頂点を目指せると思いきや、新型コロナウイルス感染拡大による中断という予想外の展開になり、4月末にはリーグ・アンの打ち切りも決まった。ここ6シーズンで4度目となる“国内3冠”を達成したものの、4カ月以上にわたって公式戦を戦わなかったことから、CLを勝ち抜くためのコンディション――心身両面において――にあるのか、という声がそこかしこから聞こえてきた。

 さらに彼らを襲ったのが、“負傷者続出”というアクシデントだ。CL再開直前にキリアン・エンバペ(足首)、マルコ・ヴェラッティ(ふくらはぎ)、レイヴァン・クルザワ(太もも)ら選手だけでなく、トーマス・トゥヘル監督までが左足首のねん挫と第5中足骨の骨折で故障者リスト入り。練り上げてきたゲームプランは再考を余儀なくされ、「やはりCLとは相性が良くないのかも…」と思わずにはいられなかった。

 その影響は準々決勝のアタランタ戦で見て取れた。特に前半は歯車がかみ合わず、90分を迎える直前まで敗退(0-1)の危機に瀕していたのだ。

 しかし、146秒の逆転劇がすべてを変える。93分に値千金の逆転ゴールを奪ったのは、エリック・マキシム・チュポ・モティング。敗退決定の瞬間にクラブから退団することが決まっていた男だった。CLでの4強入りは25年ぶり2度目のこと。しかし、“withカタール”となってから初の偉業だったこと、それも思わぬ救世主の活躍で成し遂げられたことで、チームの雰囲気、選手たちのギアは一変した。

 迎えた準決勝は、3-0でライプツィヒを一蹴。「パリ・サンジェルマン強し」を世界中に印象づける90分だった。ネイマール、エンバペ、アンヘル・ディ・マリアの3トップは文字どおり躍動。ドリブル、パス、シュート、フリーキック――そのすべてで圧倒的なクオリティの高さを見せつけると、中盤ではマルキーニョスを中心に、レアンドロ・パレデスアンデル・エレーラが与えられたタスクを忠実に実行する。キャプテンのチアゴ・シウヴァを中心とする守備陣も最後まで集中を切らさなかった。ピッチ上にあったのは勝利のために一致団結して戦う“チーム”の姿。今の彼らは「勝負弱い」、「期待外れ」と揶揄され続けた頃とは明らかに違う。

 ボルテージが最高潮に達したなかで挑む初のCLファイナル。相手は5度の欧州制覇を誇り、今回が11度目の決勝戦となるバイエルンだ。チームの実力、クラブの歴史、そして勢いと、どれをとっても申し分ない。パリ・サンジェルマンが真の強豪クラブになれるか否か、その最終チャレンジとして格好の相手と言える。

■ポイントは中盤の攻防

ヴェラッティ

足首の負傷から復帰し、先発出場に期待がかかるヴェラッティ [写真]=Getty Images

 そのうえで勝負のポイントとなるのは、バイエルンの強烈なプレッシングをいかにかいくぐるか。そして、優位な状況でボールを持つ時間をどれだけ長くできるか――勝敗を分けるカギはここにあるだろう。

 パリ・サンジェルマンの強みは、言うまでもなく個の力を生かした攻撃にある。バイエルンのゴールラッシュが大きく取り上げられるが、彼らもCLでは34試合連続ゴール中。これは、レアル・マドリードが2014年に樹立した大会記録に並ぶものだ。ネイマール、エンバペ、ディ・マリアが並ぶ3トップはどんな相手であっても、違いを生み出すことができる。マウロ・イカルディを加えた“ファンタスティック・フォー”が前線に並べば、その脅威はさらに増す。しかし彼らにボールが渡らないようだと、宝の持ち腐れとなるし、守りの局面では“穴”となる。そこで重要になってくるのが、彼らを後方で支える中盤の人選と組み合わせだ。

 対バイエルンとはいえ、短期決戦、さらに準決勝の出来が良かったことを考えると、トゥヘル監督はライプツィヒ戦からシステム(4-3-3)とメンバーを大きくは変えてこないはず。そう仮定するならば、アンカーポジションには安定した守備はもちろんのこと、2試合連続で得点を挙げているマルキーニョスの先発が濃厚だろう。

 注目は残り2枠に誰を起用するか。ここ2試合連続で先発したエレーラはインテリジェンスに溢れたバランサー。一方でイドリッサ・ゲイェは欧州屈指のボールハンター、パレデスとヴェラッティはパスセンスに優れたプレーメーカーという特徴を持つ。足の筋肉を痛めているゲイェは出場不透明だが、彼らをどう使いこなすかは、トゥヘル監督の腕の見せどころだ。

 なかでも期待が大きいのはヴェラッティで、上記に挙げた4人の中ではボールキープ力が傑出している。ひとりで敵のプレスを回避しながらパスをさばける選手だ。ボールを持てるがゆえに、プレスの餌食にもなりやすいが、相手をかわせば1本のパスで局面を一気に変えることができる。アタランタ戦とライプツィヒ戦では、主にネイマールがパスを受けて味方に配給する役割を担っていたが、バイエルンにボールの奪いどころを絞らせないためにもヴェラッティをピッチに立たせるメリットは大きい。

 心配されていたふくらはぎのケガは癒え、ライプツィヒ戦はラスト10分間プレー。フル出場は難しいとしても、準決勝から決勝までは中4日あるので、先発メンバーに名を連ねる可能性は十分にあるだろう。いずれにしても、前線のクオリティを生かすためには中盤で後手を踏まないことが肝となる。

 なお、クラブ史上初のCLファイナルとなるパリ・サンジェルマンだが、決勝戦独特の雰囲気に飲まれることはないはずだ。ディ・マリアは今回の決勝と同じスタジアム(エスタディオ・ダ・ルス)で、レアル・マドリードの史上10度目のCL制覇に貢献。ネイマールも2014-15シーズンにバルセロナでCL優勝を果たし、エンバペに至っては21歳でワールドカップのタイトルを保持している。ハムストリングのケガから復帰予定のケイラー・ナバスも、CL3連覇を成し遂げたレアルの守護神を務めた選手だ。チームとしての経験値では圧倒的な差があるものの、選手個々のキャリアを比べればバイエルンのメンバーにも見劣りしない。

「歴史的な決勝進出だけど、これで終わりじゃない!」。ライプツィヒ戦後、8年間キャプテンとしてチームを引っ張ってきたチアゴ・シウヴァが話すと、ネイマールも「今日歴史を刻んだが、ここで止まりたくない。もっと刻みたいんだ!」と呼応。エンバペも「チームを助けるためにすべてを捧げる準備はできている」と、ファイナルへの意気込みを口にした。決勝進出はあくまで“通過点”。トロフィーは勝ち取るためにあることを、選手全員が理解している。

 一方、就任2年目で素晴らしいチームを作り上げたトゥヘル監督にとっては、因縁の相手とのファイナルになる。監督キャリアにおいて、バイエルンとは最多17回対戦し、5勝2分け10敗。ドルトムントを率いた際には彼らと2度の“タイトルマッチ”を戦ったが、いずれも勝てなかった(1試合はPK負け)。2年前にはバイエルンの監督就任の噂が浮上したものの、最終的にはパリ・サンジェルマンと契約を締結。クラブや選手から全幅の信頼を得られなかったことが、バイエルン行きを断った理由のひとつと言われている。“リベンジ”という見方こそ否定するかもしれないが、期するものは間違いなくあるだろう。

 壮大な夢を抱きながら、何度もその夢を打ち砕かれ、それでもまた夢を追いかけてきた――そんなパリ・サンジェルマンの悲願達成まで、あと1勝。8月12日にクラブ創設50周年を迎えた彼らにとって、これ以上ないタイミングで迎えるCL決勝だ。果たして、史上23クラブ目の欧州王者となり、新たな歴史をスタートさせることができるのか。バイエルンという壁は相当高いが、今のパリならそれすらも簡単に飛び越えてみせるかもしれない。

(記事/Footmedia)

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