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“運命”に導かれた非情な結末…11年ぶりのイングランド決戦は…【CL決勝 同国対決の激闘史/プレミア編】

11年前、モスクワでCL史上初のイングランド勢同士の決勝戦が行われた [写真]=Getty Images

 同国対決の決勝というのは、あまりにも失うものが多い。まだバルセロナやレアル・マドリードに負けるなら諦めがつくだろう。しかし、同国対決では自分たちの敗戦は憎きライバルの歓喜を意味する。だから意地とプライド、そしてサポーターの情熱がぶつかり合うのだ。もちろん、それだけではない。同国対決はどうやらクラブの品格まで問われるようだ。少なくとも当該国のメディアはそうやって大一番を盛り上げる。なぜなら、両チームを比べるのが簡単だからだ!

 2007-08シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)決勝は、史上初のイングランド勢同士のファイナルとなった。まずはチーム力の比較から入る。あのシーズン、マンチェスター・Uとチェルシーはリーグ戦でも熾烈な優勝争いを演じた。イングランドのトップリーグにおいて、40年ぶりに優勝争いの2チームが同ポイントで最終節を迎えたのだ。結局、ユナイテッドが2ポイント差で優勝したが、リーグ戦での対戦成績は1勝1敗。甲乙つけがたい2チームだった。

[写真]=Getty Images

[写真]=Getty Images

 ユナイテッドを率いるのは21年目の名将アレックス・ファーガソン。対するチェルシーは、シーズン途中からアブラム・グラントがジョゼ・モウリーニョの後を継いだ。ユナイテッドがウェイン・ルーニー、クリスティアーノ・ロナウド、カルロス・テベスの魅惑の攻撃トリオを擁するのに対し、チェルシーはペトル・チェフ、ジョン・テリー、フランク・ランパード、ディディエ・ドログバのクラブ史上最高のセンターラインが健在だった。

初のイングランド決戦は“運命”さえも比較された

[写真]=Getty Images

 戦力だけでなく両チームの“運命”も比較された。ユナイテッドは、あの『ミュンヘンの悲劇』から50年。一方のチェルシーはクラブ史上初のCL決勝。しかも、CLに魅了されてチェルシーを買収したロマン・アブラモヴィッチの母国でのファイナルだった。

 そして、試合後には思わぬ部分まで比較された。ユナイテッドはクラブの英雄であるボビー・チャールトンが選手を牽引して優勝メダルを受け取ったが、自分は選手ではないので首にかけることを拒んで手で握り締めた。一方のチェルシーはビジネスマンのピーター・ケニオン(当時のCEO)が先導役を務めると、何のためらいもなく準優勝メダルを首にかけたのだ。これには英紙『テレグラフ』も、たまらず「両クラブの品格を物語っている」と綴った。

 肝心の試合内容はというと、手の内の探り合いは序盤だけ。20分にポール・スコールズがクロード・マケレレと衝突して流血すると、それをきっかけにイングランドらしい強烈なタックルが飛び交う展開となった。26分にロナウドが自身シーズン42点目を決めれば、前半は劣勢だったチェルシーもハーフタイム直前にランパードがこぼれ球に反応して追いついた。

C・ロナウドのヘディングシュートが決まりマンチェスター・Uが先制 [写真]=Getty Images

前半は劣勢だったチェルシーはランパードのゴールで同点に追いつく [写真]=Getty Images

 試合内容は普段のリーグ戦と比べても遜色ない好勝負だった。それを演出したのはコンディションだろう。暑さに敏感なイングランド勢にとって気温14℃は申し分ない条件だった。加えて雨でボールが良く走ったのだ。同じ一発勝負のFAカップ決勝は凡戦になることも多いのだが、その理由には疲労や天候、芝生などの環境面が挙げられる。そう考えると、今シーズンのファイナルも天候が試合内容を左右しそうだ。

 11年前の決勝は後半以降もオープンな展開が続いたが、追加点が生まれないまま勝負はPK戦に委ねられた。すると、それまで好勝負をお膳立てしてきたピッチコンディションが残酷な演出をする。王手をかけたチェルシーは主将テリーが運命の5本目を蹴ったのだが、軸足を滑らせた彼のシュートは無情にもポストを叩いた。「一生乗り越えられない。今でも夜中に『クソッ』と目が覚めることがある」とテリーは7年後に振り返ることになる。結局、ユナイテッドのGKファン・デル・サールがチェルシーの7本目(ニコラ・アネルカ)のPKを止めてモスクワは赤に染まった――。

試合はイングランドらしい激しい展開に [写真]=Getty Images

[写真]=Getty Images

決めれば優勝のPKだったが、テリーは濡れたピッチに足をとられ失敗に… [写真]=Getty Images

PK戦を制したマンチェスター・Uが勝利をつかんだ [写真]=Getty Images

最終決戦はドラマではなく「普通の好勝負」を

モスクワのイングランド決戦から11年、今年はトッテナムとリヴァプールがビッグイヤーを懸けて激突する [写真]=Getty Images

 さて、今年のイングランド決戦はどんなドラマが待っているのか。11年前とは違い、今回の2チームはリーグ戦を見れば「26ポイント」も差が開いている。また、今シーズンの対戦では2度ともリヴァプールが勝利している。そして、今年は『ヒルズボロの悲劇』から30年である。彼らを率いるユルゲン・クロップは、過去7度のカップ戦ファイナルで1度しか勝てていないが、CL決勝に限れば3度目の挑戦。「ドイツには3度目の正直という言葉がある」と、クロップは何かの巡り合わせを暗示している。

 だが、運命の話をするのならトッテナムだって負けてない。これが記念すべき初めてのCL決勝だ。さらに今年は新スタジアム完成のメモリアルイヤーなのだ。互いに負けられない理由はたくさんあるが、そもそも両者の劇的な準決勝のあとでは「運命」を比較すること自体が間違っている。

 だから、サッカーファンとして純粋に望むのは、両監督が11年前の決勝の二の舞にならないことだけだ。モスクワでの決勝の3日後、敗れたグラントは解任された。一方で勝利したファーガソンも、のちに最大の後悔としてこの決勝戦を挙げている。準々決勝から4戦連続でフル出場していた韓国代表MFパク・チソンを決勝のメンバー18名から外したのだ。それ以降、「決勝戦では22名を登録できるよう何度もUEFAに掛け合っている」と話すほど、あの時のメンバー選考を悔いている。

 ドラマは準決勝までで腹一杯だ。最後は普通に好勝負が見たい。だから念のため、試合の前日はテルテル坊主を逆さに吊るすと思う……。

文=田島大(フットメディア)

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