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【サッカーに生きる人たち】サッカーファンの心を動かすこと、それこそがやりがい|大川 佑(『Goal』日本語版編集長)

「おもしろいものに気付いたら、いちはやくみんなに伝えて、そのリアクションや驚いてもらえるのが楽しみだなって、そういう気持ちになりますよね」

 笑顔でこう話すのは、サッカー情報サイト『Goal』の日本語版編集長を務める大川佑(おおかわ・たすく)さんだ。Goalは、Jリーグの放映権を獲得し、DAZN(ダ・ゾーン)のコンテンツとして映像配信している国際的なスポーツメディア企業、パフォームグループの傘下にある。グローバルなネットワークを売りにするこの会社は、本社をイギリスに置き、世界各国の情報をいち早くサッカーファンへと届けている。

 サッカーメディアの中心で働く大川さんがサッカーとの出会ったのは海の向こうでのこと。少年時代の大半を海外で過ごした大川さんは、親の転勤先のスイスでサッカーに出会い、スイスの後に引っ越したイギリスで本格的にサッカーにのめり込んだ。

 当時最も印象的だった出来事は、1998-99シーズンのチャンピオンズリーグ決勝だという。カードはマンチェスター・ユナイテッドvsバイエルン。赤い悪魔が後半アディショナルタイムに2ゴールを奪い、劇的な逆転で欧州制覇を果たした試合だ。あの時、歓喜と失望の瞬間をイギリスで同時に目撃した。

「寮にイギリス人がたくさんいるなかで、ドイツ人が一人だけ見ていたんです。バイエルンが1-0でリードしていて、90分まで彼一人で喜んでいたのが、最後の最後にベッカムの2アシストでユナイテッドがひっくり返した。その場の雰囲気も一瞬で入れ替わったのがものすごく印象深かったですね」

 学生時代の大半をサッカーの母国イギリスで過ごした大川少年にとって、印象的な出来事はこれだけではなかった。生活の中心にはサッカーがあり、日本では考えられないような出来事も経験した。サッカー次第で予定されていたイベントが変わるほどの環境だったという。

「イギリスってすごいなと思ったのが98年のワールドカップの時。あちらにも日本のセンター試験みたいなものがあるんですけど、W杯のイングランドの試合とかぶったので、その全国試験の時間がずれたというのが驚きでしたね」

 イギリスではご多分に漏れずサッカー好きな高校生で、自身でもボールを蹴った。毎週末に友人とプレミアリーグを見て楽しんだ。スタジアムでの初観戦は2002年。ホワイトハートレーンで行われたトッテナムvsアーセナル、ノースロンドンダービーを間近で見た興奮は今でも忘れられない。このままサッカーを追い続けていきたいという気持ちが強まった。

 高校生の少年には、もちろん仕事のイメージは全く沸いていなかった。しかし、日本に帰ってからの大学生活で仕事のビジョンが見え始めた。

イギリスの寮生活時代。友人たちとサッカーに明け暮れる毎日が楽しかった(写真=本人提供)

W杯のアルバイトで夢がふくらむ

 本気でサッカーを仕事にしたいと思うようになったのは、日本に帰国して大学生になった頃に始めたアルバイトがきっかけだった。時は02年。日韓W杯の開催で、日本もサッカー熱で盛り上がっていた。大学生の大川青年もW杯に絡み、夢がふくらんでいった。

「日本で大学生になって、02年のW杯のチケッティングビューローでアルバイトをしたんです。業務としては、チケットを印字して、もぎって渡して、クレームがあればいろんな国の人のクレームを受け付ける、というようなものです。その時、『サッカーの仕事っていいなあ』と思ったのが今につながる出発点ですね」

 大学時代の04年には、イギリス生活で磨いた英語を生かし、U−17アジア選手権に出場したカタール代表の通訳を務めたこともあった。福島や清水に帯同するなかで、サッカーを仕事にしたいという思いはさらに強くなったという。

 大学卒業後は広告代理店に就職した。広告最大手の株式会社電通がサッカー事業を手掛けているのを知り、同じ広告代理店であれば、いつかは何かサッカーにかかわる仕事ができるのではないかという思いがあった。

 入社から3年後、大きなチャンスが訪れる。サッカーメディアやサッカービジネスを展開する株式会社フロムワンが人材を募集していることを知り、迷わず履歴書を送った。サッカーへの情熱が伝わり、無事採用されると、ポータルサイト『サッカーキング』の企画運営に携わることになった。

 そしてフロムワンで数年間の業務経験を積んだ後、一度は別業界に足を踏み入れたものの、16年の春に再びサッカー業界に戻ってきた。

大学時代にはU−17アジア選手権に出場したカタール代表の通訳を務めた。サッカーを仕事にしたいという思いは強まっていった(写真=本人提供)

より現地視点で読み応えのあるものを出したい

「Goalは結構特殊な媒体だと思います」と大川さんは話す。

 現在の業務は、イギリスに拠点を置くGoal本社とのやりとりが基本になる。朝10時に出社し、まずはメールを確認する。そして、18時頃から動き出すイギリスからのメールをさばき、22時頃に帰宅する。膨大なメールを瞬時に読み、どんどん返信していくだけでも相応の労力を割く。

 グローバルなネットワークを誇るGoalは世界各国に番記者を置き、各地域から新鮮な情報を提供している。現地のニュースを正確に届けられるのが自分たちの強みだと大川さんは言う。

「Goalは、幸いグローバルなネットワークがあるので、アーセナルやリヴァプールに番記者がいたりと、日本の媒体ができないようなこともできるんです。そういうネットワークで、情報をしっかり吸い上げて、より現地視点で読み応えのあるものを出したいですね」

 現在は、Jリーグの放映権を獲得し、その映像を配信するDAZNの取り組みとして、Jリーグの試合会場にも足を運ぶ。ピッチサイドで動画を撮影したり、DAZNのソーシャルコンテンツの制作などにも携わったりしている。

 週間ベストゴール、ベストセーブ、ベストイレブン、対戦グラフィック、映像のニアライブクリップ、『DAZNピッチサイド』など、放映権を持つからこそできるコンテンツを世に送り出している。『DAZNピッチサイド』はピッチレベルで選手の様子やサポーターの応援模様を動画撮影し、SNSを通してファンに届ける取り組みだ。ライツホルダー、つまり放映権を持つメディアとして、良いコンテンツであれば自然に拡散していく映像を発信していく仕事は挑戦しがいがあると話す。

「映像は、現在のソーシャルメディアにおいて、最も相性が良いですね。非常に高い拡散力を持っていて、DAZNの認知度、好感度を高めてくれると思います。ライツホルダーだからこそ、他ではできないことができる、という意味で非常にやりがいを感じています。ソーシャルメディアの反応が励みになると同時に、こういったコンテンツを配信できる環境に居合わせたことについては周囲に感謝しています」

『Goal』編集長以外にも、『Goal Studios(ゴールスタジオ)』という広告制作チームも兼任している。二足のわらじを履いている状態だ。「毎日が変則的で決まりきったスケジュールはないんです」と、落ち着かない日常について話すが、変化に富む日々を楽しんでいるように見える。人々の心を動かすサッカー。大川さんはサッカーが世界で一番大きなネットワークだと考えており、地球規模のコンテンツに携われている充実感が漂う。

第2の故郷で仕事をしてみたい

「伝えることの魅力について教えてください」という質問に対し、大川さんはいたってシンプルに答えてくれた。

「伝えることって単純におもしろいなと思います。そのなかでも、選手に寄り添った知られざるエピソードや、新しい魅力が引き出されるような話をファンに届けられるのは、魅力の一つですね」

 おもしろいものに気付いたら、いちはやくみんなに伝えたい。そして、みんなが驚いたり、話題にしてくれたりするのが楽しみだと話す。サッカーファンの心を動かすこと、それこそがやりがいであり、多忙な日々を楽しむ原動力になっている。

「SNSなどの発達で読者の反響が見やすい環境にある今、『感動した』とかひと言でもそういうものを見るだけでみんなとがんばって良かったなという気持ちになります」

 最後に「今後の夢や野望はありますか」と尋ねると、大川さんは“原点”に思いをはせた。

「そうですね、個人としてはイギリスにもう一度戻って、向こうで仕事をしたいなと思いますね。必ずしも今と同じような立場かどうかわからないですけど、クラブにかかわることもおもしろいかもしれないし、今まで得た経験はどこでも生かせると思っています」

 こう言い切る大川さんは、どこか自信に満ち溢れていた。『Goal』のイギリス版編集長かもしれないし、クラブの広報かもしれない。あるいは選手の通訳かもしれないし、日本代表のスタッフかもしれない。どんな立場であれサッカーを好きになった“母国”でかけがえのない存在であるサッカーにかかわってみたい。大川さんの夢は、サッカー人生の原点である第2の故郷へ向かって広がり続けている。

インタビュー・文=米村拓哉(サッカーキング・アカデミー/現フロムワン・スポーツ・アカデミー

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