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お互い譲らぬ決勝戦、勝負を分けた運…豪快PK決めたMF柳瀬楓菜「サッカーの神様が味方してくれた」

2023.10.15

120分闘い続けて優勝に貢献したMF柳瀬楓菜 [写真]=小林渓太

 2023-24 WEリーグカップ決勝が14日に行われ、サンフレッチェ広島レジーナとアルビレックス新潟レディースが対戦。0-0のまま延長戦でも決着がつかず、PK戦を4-2で制したS広島Rが初優勝を果たした。

 両チームとも初タイトルがかかった決勝戦。S広島Rが立ち上がりからFW髙橋美夕紀やFW中嶋淑乃を中心に攻め込み、試合を通じで14本のシュートを打ったが、最後まで新潟の固い守備に阻まれて得点ならず。対する新潟Lは少ないチャンスでもFW道上彩花のシュートなどで相手ゴールを脅かしたが、広島の粘りの守備を破れなかった。

 新潟Lの橋川和晃監督は試合後の会見で、「両チームの選手たちがベストを尽くして、お互いに良さを出し、良さを潰し合った素晴らしい好ゲームだった。WEリーグのポテンシャルがまた一段と上がったような試合内容だったと思う」と健闘を称え、S広島Rの中村伸監督は、「新潟さんの方も集中力が高く、お互い隙を見せない、一瞬の気も抜けないゲームだったと思う」と振り返った。

 今季から副キャプテンを務めるMF柳瀬楓菜は中盤で120分フル出場。豊富な運動量でピッチを走り回り、持ち前の球際の強さで激しいバトルを繰り広げた。キャプテンのDF近賀ゆかりが交代でピッチを後にしてからはキャプテンマークを巻いてプレー。「決勝でお互い初のタイトルがかかっていたので、お互いに強い気持ちをもって闘っていた。相手の守備もすごく固くて、攻撃もすごく粘り強かったけど、最後は気持ちの部分で負けなかったと思う」と振り返った。

[写真]=小林渓太

 お互い譲らない激闘の末、初タイトルの行方はPK戦に委ねられた。どちらが勝ってもおかしくない状況で、実際にPK2本差という僅差で明暗がわかれる残酷な結果に終わった。ただ、その紙一重の勝負を分けた要因の一つに柳瀬の強運があった。

 PK戦の前、ゲームキャプテンの柳瀬は主審によるコイントスで、使用するゴールと先攻を獲得。裏に広島サポーターが陣取るサイドに加え、有利とも言われる先攻をつかむ強運を見せていたという。さらに、広島サポーターたちもPK戦の直前に一つに固まるようにゴール裏へと集まり、より熱い声援を送り続けた。それが緊迫したPK戦の中で、選手たちを後押ししていた。

 PKで最初に出てきた髙橋は、「あとになればなるほどプレッシャーがもっとかかるので、蹴るなら1番がいいと思っていた」として1番手のキッカーを務めた。「緊張はしていた」と言うが、それでも紫の声援を受けてしっかりとゴール左に沈めた。「サポーターの方の思いが強くて、本当に背中を押された。(声援が)ボールを(ゴールに)吸い込んでくれました(笑)」とサポーターに感謝した。

 髙橋がいい流れを作って迎えたS広島Rの3番手。それまで4人全員がゴール左に決めていたが、キッカーの柳瀬は「最初は左に蹴ろうと思っていたけど、蹴る瞬間にGKが動くのが見えて、『止められる』って思って右に蹴りました」。急きょ方向を変えたシュートはゴール右上ギリギリに突き刺さり、蹴った本人も驚いた様子だったが、「本当にサッカーの神様が味方してくれた」と話した。

[写真]=小林渓太

 この豪快なPKにはスタジアムも沸いた。公式戦で初めてPKを蹴ったという柳瀬は、「高校時代はPKを蹴らずに負けて後悔していた。でも今回は自分が蹴ってこのチームを勝たせたいと言う思いがあったので、自信をもって蹴った」と胸を張る。そんな気持ちも乗ったキックは味方の勢いにもなったようだ。「みんなに『楓菜があれを決めたからもう勝ったなって思った』って言われました。自分はその後もまだ緊張していたけど」と笑みをこぼしていた。

 ゼロからスタートしたチームが3年目で初タイトルを獲得した。柳瀬は、「苦しいシーズンを過ごしてきた中で、初タイトルがかかった決勝だったので人一倍思いは強かったし、このチームのために、あとはキンさん(近賀)、福さん(福元美穂)のためにっていう思いが強かったので、本当にタイトルを取れてよかった」と喜びを噛み締め、改めて「このチームに来てよかったなって心の底から思いました」と笑顔で話した。

[写真]=小林渓太

By 湊昂大

Kota Minato イギリス大学留学後、『サッカーキング』での勤務を経てドイツに移住して取材活動を行う。2021年に帰国し、地元の広島でスポーツの取材を中心に活動中。

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