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サンフレッチェ広島レジーナの躍動する33番…加入2年目の瀧澤千聖、攻撃の主役に

2023.08.25

昨季ホーム最終戦での瀧澤千聖 [写真]=WE LEAGUE

 サンフレッチェ広島レジーナの3年目のシーズンが始まる。公式戦初戦は、26日に行われる2023-24 WEリーグカップ・グループステージ第1節でマイナビ仙台レディースをホームで迎え撃つ。

 昨季WEリーグを5位で終えたS広島Rは今夏に7名が退団した一方で、ジェフユナイテッド市原・千葉レディースからDF市瀬千里、ノジマステラ神奈川相模原からMF松本茉奈加、大宮アルディージャVENTUSからFW髙橋美夕紀の3選手を獲得。さらに8月21日には東洋大学に所属するDF藤生菜摘の2024年加入内定を発表し、「JFA・WEリーグ/なでしこリーグ特別指定選手」としても認定されたため、今季から出場可能となった。

 新たなチームが始動して約1カ月半。中村伸監督は、「新しく入った選手は我々のスタイルでも力を発揮してくれるタイプなので、うまくスタイルを理解しながら、トレーニングでチームに溶け込もうとしてくれている。今までいる選手と、新たに違ういい特徴を持った選手がいい形で融合してきている」と手応えを口にした。

 特にWEリーグで実績のある3選手は即戦力として期待が大きい。指揮官は、「経験ある選手に来てもらったので、プラスアルファになる力があることがわかったうえでやっている。当然チームの戦力になってもらわないと困るし、本人たちもそういう強い気持ちを持って準備してくれている」と話す。

 チームとしては昨季の後半戦で見せたような攻撃的なサッカーが今季もテーマの1つになる。ただ、昨季リーグ戦はシーズンを通じて21得点。目標に掲げていたトップ3の三菱重工浦和レッズレディース(50得点)、INAC神戸レオネッサ(35得点)、日テレ・東京ヴェルディベレーザ(47得点)とは大きな差があった。

「上位3チームと明らかに大きな違いは得点力」と中村監督は指摘し、「ここまで我々が作り上げてきたものを、さらに磨きかけるところ(攻撃の)種類を増やすところ、より数字こだわるところを意識したシーズンにしたい。攻守両面で狙いをもった形をより多く発揮できるようにしたい」と意気込む。

 その攻撃において鍵になりそうなのがMF瀧澤千聖だ。昨夏唯一の加入選手である瀧澤は、昨季リーグ戦19試合に出場し、3ゴールを記録。シーズン前半戦こそ苦しんだが、後半戦からチームの戦い方に馴染んで持ち前のアグレッシブなプレーを存分に発揮していた。

 中村監督は「(瀧澤は)去年加入して(適応に)もう少し時間かかるかなと思ったけど、もがきながら、一生懸命、チームに馴染もうとして、チームの狙いを理解して取り組み続けてくれた。本当に前線で元気よくプレーする場面や時間を増やしてくれた」と昨季の活躍を振り返る。

 昨季の序盤戦は主にウイングでプレーしていたが、後半戦から特にインサイドハーフに入ったことで躍動。豊富な運動量でいろんな局面に絡んで攻撃を活性化した。瀧澤本人も「点を取れたり、アシストできたりして自信がついて、今も自分の得意なプレーだと思ってできている。しっかり自分のプレーが出せて良かった」と手応えを口にする。

 その中でも、昨季リーグ戦チーム最多の7得点を決めたFW中嶋淑乃と好連携を見せてホットラインを確立。普段から仲の良い2人の抜群の連携は今季も大きな武器になるはずだ。「(昨季は)淑乃選手とのコンビも見せられたし、あの調子のままいきたいなと思ったので、オフに入りたくないなって2人で話していた。でも、そこまで(コンディションを)落とすことなくオフを過ごせたので、(今季は)初戦からいいパフォーマンスをしたい」

瀧澤、木稲、中嶋(左から) [写真]=WE LEAGUE

 今季はエースの中嶋との連携だけではなく、新たに攻撃陣に加わったサイドアタッカーの松本やセンターFWの髙橋とも良い関係を築きそうだ。瀧澤にとって、松本は十文字高校時代の先輩で、1年間ともにプレーした仲。「久しぶりに一緒にやってみて思った以上に感覚でわかる部分があったし、むこうも『やりやすい』と言っていた。やりやすい仲間が増えてうれしい」と先輩との関係性を話す。

 松本は後輩について、「高校の時は小さいけどテクニックがある選手だった。そこに強さとスピードが増したのでより怖い選手になったなと思う」と成長を語りつつ、「やりやすさはすごく感じた」と同じく信頼感を口にした。

「広島に来てすぐ千聖と組んでやることがあったけど、あの時(高校時代)の懐かしさというか、しっくりくる感じがあった。千聖だったらここに出せるだろうな、千聖だったらここに走っているだろうなっていうのを体で覚えているみたいで、信頼はすごくある」

 さらに、瀧澤は髙橋について、「収めることができる1トップらしい選手」と話し、「すごくわかりやすいし、自分と淑乃選手の絡みにプラスで、さらにコンビネーションを作っていきたい」と期待を寄せる。髙橋も「千聖はドリブルでも運べるし、パスも出せる選手。私の動きをしっかり見てくれるし、多彩なプレーができるのでやりやすい」と相性の良さを明かした。

 エースや新戦力との“つながり”が鍵になる。瀧澤が前線の味方を生かし、味方に生かされれば、よりチームの攻撃に厚みが出てくるはずだ。中村監督も、「新しく選手が加入した中で、彼女(瀧澤)が中心になってやるぐらいの気持ちでやってくれたら、より攻撃が活性化されるし、ゴールに迫る場面も増やしていけると思うので、明るく元気に躍動感を持ってやってほしい」と期待を込める。

 昨季は中嶋へのアシストが目立ったが、今季は攻撃の主役になる可能性は十分にある。ウイングでもインサイドハーフでも「そのポジションなりに自分のプレーを出したい」という瀧澤は、「攻撃の選手なので、得点やアシストの結果を出さなければいけない。そこは監督にも言われているし、意識しています」と数字への強い意欲を持つ。

「リーグカップ戦はチームが勝つためにも、自分がもっと成長するためにも、毎試合ゴールを取れるように頑張りたい。リーグ戦では二桁得点が目標。得点もアシストもしたいし、攻撃の部分で常に関われるようにしたい」

 この夏、S広島Rでは選手の入れ替えがあったが、瀧澤は背番号を変えることなく、33番を「貫いた」。“レジーナの33番”という新たな選手像を自らのプレーで築いていく。「一桁の背番号で目立つのは当たり前なので、33っていう変な数字で目立ちたい」。S広島Rの勝負の3年目。攻撃の中心には躍動する33番がいる。

取材・文=湊昂大

By 湊昂大

Kota Minato イギリス大学留学後、『サッカーキング』での勤務を経てドイツに移住して取材活動を行う。2021年に帰国し、地元の広島でスポーツの取材を中心に活動中。

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