オーストラリア戦にフル出場した田中碧 [写真]=金田慎平
15日のオーストラリア代表戦でキャプテン・遠藤航の体調不良という予期せぬアクシデントに見舞われた日本代表。FIFAワールドカップ26アジア最終予選4連勝を狙ううえで新たな不安要素がのしかかった。
森保一監督が抜擢したのは、“第3のボランチ”田中碧。ちょうど3年前、同じ埼玉で行われた2022年カタールW杯アジア最終予選・オーストラリア戦で最終予選デビューを果たし、先制弾をゲット。そのまま主力の地位を確保したボランチは、W杯本大会のスペイン戦でも値千金の決勝弾を決め、“持ってる男”として日本中に名を轟かせた。
その後、第2次森保ジャパン発足後も重要な役割を担うと見られたが、蓋を開けてみると、遠藤と守田英正の“鉄板化”が加速。田中の出番が減少してしまう。今年1〜2月のアジアカップの欠場、今夏のリーズ移籍後の適応の遅れなどが重なり、9月の最終予選スタート後は初戦・中国代表戦に71分からピッチに立っただけだった。
「もちろん第一にあるのは試合に出られないという悔しさ。代表だろうがチームだろうが、それがあるのは事実ですけど、チームが勝つことが何よりも大切。そのために自分が持ってるもの、自分にしかできないものを出していくことが大事だと思います」と本人もオーストラリア戦前日には自らのストロングを出しつつ、勝利に貢献することを誓っていた。
迎えた本番。5-4-1の強固な守備ブロックを形成してきた相手に対し、日本はボールを保持し、序盤からサイドを起点に崩す意識を鮮明にした。だが、中盤の守田英正と田中碧のところはやや後ろ重心な印象も強かった。
「なかなか碧は3バックでプレーする機会が少なくて、すごい考えながらやりすぎた分、いい意味でのアンバランスさ、自由さという彼にしかない能力っていうのをうまく試合で使わせてあげられなかった」と守田も反省していたが、田中碧自身も様子見になってしまったという。
それでも、彼らしい攻撃センスが光るシーンはあった。一例を挙げると、開始早々の6分に久保建英に出した浮き球のパス。ペナルティエリア内で相手を切り返し、フリースペースに出すというのはそうそうできることではない。それが守田の言う「いい意味でのアンバランスさ」なのだろう。
さらに言うと、72分のミドルシュートも特筆すべきものがあった。ペナルティエリア左外の遠目に位置だったが、思い切って打ちにいく姿勢は前向きに捉えていい。この時間帯は彼自身もかなり高い位置を取って、攻撃の起点となる配球ができるようになっていた。そのあたりも収穫と言っていいだろう。
そういった攻撃のひらめきや意外性、ここ一発の精度が90分間通してもっともっと前面に出ればよかったのだが、本人も認めるように3バックのボランチに慣れていない分、どうしてもノッキングを起こしがちだ。
昨季まで在籍したデュッセルドルフも、新天地・リーズも4バックがベースで、3バックをやる機会が少なかった分、いきなり代表で試合に出た時に適応に時間がかかる。それは紛れもない事実だ。そこは出番を増やしながら解決していくしかない。本人も「試合に出ることの重要性」を改めて強く認識したのではないだろうか。
「今は重い時間帯があるのも事実。重くして自分たちがボールを握る時間を増やすのもの大切なので、その使い分けですね。僕自身、3-4-3で最終予選のような高いレベルの試合に出るのは初めてだったので。また変えていける部分ではあるのかなと思います。
自分はアンカーとしてもプレーはできるので。立ち位置をうまく整理できればもっとよくなる。守田君ともっと話し合ってやれれば、より面白いサッカーができるかなと。まだまだやれることはあったかなと思います」と田中碧もポジティブに先を見据えていた。
11月以降、遠藤が復帰してきた時、これまでと同じ“第3のボランチ”に戻らないためにも、田中碧は3バックシステムへの適応を進めていくことが第一。それと同時に、守備強度、ボール奪取力のアップを図るべきだ。
このオーストラリア戦を見る限りだと、守田・田中碧の両ボランチは、遠藤・守田の鉄板コンビに比べると、失った後の即時奪回力でやや見劣りした。デュエルや球際の迫力もやはり遠藤がいる時の方がある。
もちろんそれが遠藤のストロングなのだが、オーストラリア以上の強豪と対峙した時、田中碧が1対1のマッチアップで奪い切ることがよりできるようになれば、森保監督も3人を回しながら使うようになるはず。それが彼にとっても、日本代表にとっても理想形なのは間違いない。
そうなるように、11月シリーズまでの1カ月間、リーズで守備力に磨きをかけていくことが肝要だ。直近2試合に先発し、ようやく新たな環境で足がかりを築きつつある時期だけに、今を大事にしなければいけない。
田中碧の2026年W杯へ挑戦はここからが本番だ。
取材・文=元川悦子
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By 元川悦子