日本代表GK鈴木彩艶 [写真]=Getty Images
FIFAワールドカップ26アジア最終予選スタートから14得点無失点の3連勝と圧倒的な強さを見せつけている日本代表。この勢いを持続し、15日のオーストラリア戦も白星を挙げて4連勝できれば、いち早い本大会切符獲得もかなり具体的なものになる。
とはいえ、オーストラリアもトニー・ポポヴィッチ新監督の就任で息を吹き返しつつある。10日の中国戦では3-4-2-1の新布陣で挑み、先制こそされたものの3-1の逆転勝ちを収め、浮上のきっかけを手にしつつある。
「我々はまだグループ1位を目指せる」と新指揮官の鼻息は荒いが、日本にとって会場となる埼玉スタジアム2002は過去に一度も同国に負けていない幸運の地。3年前のFIFAワールドカップカタール2022アジア最終予選第4節でもオーストラリアと激突し、田中碧の先制弾と浅野拓磨が誘発したオウンゴールで大一番を勝ち切り、そこから6連勝と一気に波に乗っている。
「データ的には有利なところがあるが、今のオーストラリアの状況を考えると、監督交代をして非常に危機感を持って我々に挑んでくる。そこは最大限、警戒してのぞまなければいけない」と森保一監督も強調していた。遠藤航の体調不良という不安材料もある中、チーム一丸となって苦境を打開していくことが重要だ。
そこで大きなポイントとなるのが守備となる。
「次の試合は(10日の)サウジアラビア戦より高い選手が多いので、エアバトルの部分だったり、セットプレーが一つのキーになる」と前日会見に出席した守田英正も語っていたが、そこは守護神の鈴木彩艶も肝に銘じている部分に他ならない。
「クロスを多く上げてくるという予測はしていますし、その上でエアバトルが多くなる。いかにセカンドボールが拾えるかがカギになると思います」と成長著しい22歳のGKは冷静な対処を心掛けていく構えだ。
ハイボールやリスタートの対応は、今年1月から2月に開催されたAFCアジアカップカタール2023で彼自身が直面した課題でもある。8カ月前は、2023年10月のチュニジア戦で正GKを託されてから間もない時期。大会序盤からパンチングが小さくなったり、守備陣との連携面でギクシャク感が見られたりと不安定さがプレーの端々に見て取れた。しかも日本は8強止まりとなった。
それでも、森保監督、下田崇GKコーチらスタッフ陣は鈴木彩艶の頭抜けたポテンシャルを信じて疑わなかったのだろう。その後も先発起用を続け、最終予選でも最後の砦としてどっしりと構えさせた。彼自身もその期待に確実に応え、ここまでの3試合は落ち着きと安定感を披露。無失点の原動力になっている。
「非常に大事なゲームの中でも力を入れすぎないで戦うこと。もちろん入り込むことは大事ですけど、しっかりとリラックスしながら、いい状態でプレーできているかなと思うので、そこがアジアカップと比べて余裕を持てている要因かなと思います」
本人もシュート13本を浴びたサウジ戦後にこう自己分析していたが、代表で修羅場をくぐったのに加え、今夏赴いたセリエAのパルマ・カルチョでも定位置を確保していることが自信につながっているのだろう。
イタリアはGKを特別視している国。そこで日本人選手が定位置を確保し、堂々とプレーするというのはそう簡単にできることではない。日本サッカー協会の宮本恒靖会長も「彩艶が新たな領域に足を踏み入れた」と語っていたが、本当に偉業以外の何物でもないのだ。
「(昨シーズンまで在籍した)ベルギーとの違いはたくさんありますけど、一つ言えることはシュートのスピード、パワーのところ。そこは違うと感じるので、そういう中でプレーできているのは大きいです」とも話していたが、その感覚でオーストラリアに対峙すれば、怖さなど一切感じないはず。最前線に陣取ると見られるミッチェル・デュークらの空中戦は要注意だが、「シュートに対する準備を常にしておくことが大事」と鈴木はやるべきことを明確にしている。
もちろんセービングやパンチング、ポジショニングなど、ディテールを突き詰めなければならない部分は少なくないが、今の落ち着きや余裕を持続できれば、高さと強さを誇るオーストラリアと対峙しても全く問題ないだろう。
アジアカップからの劇的な進化を幼少期からプレーした浦和レッズの本拠地である埼玉スタジアム2002で改めて示せれば理想的。それを多くのサポーターが待ち望んでいる。
「今回も無失点はトライしていきたい部分でありますけど、やっぱり強い相手なので、難しい時間があって失点してしまう可能性もないとは言えない。その後のリアクションが非常に大事になりますし、チームとして結果を出すことが一番。勝利を前提に置きながら、できるだけ失点を減らせるようにやっていきたいと思います」
鈴木彩艶は日本の勝利を最優先に考えて集中し続ける覚悟だ。得意のロングキックで攻撃の起点を作ることを含め、彼には他の守護神にはできないプレーが数多くある。スケールの大きな一挙手一投足でオーストラリアを凌駕すること。それを強く望みたい。
取材・文=元川悦子
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By 元川悦子