日本代表MF鎌田大地 [写真]=Getty Images
今年3月に発足した第二次森保ジャパン。2023年最重要ゲームと言えるのが、9日に迫ったアウェーでのドイツ代表戦だ。
FIFAワールドカップカタール2022初戦で日本代表が劇的逆転勝利を挙げたことで、ドイツ側からオファーがあったこの試合。相手はリベンジに燃えているが、日本としては、前回のように序盤から圧倒される形だけは何とか回避したいところだ。
森保一監督も「我々がボールを握る部分は上げていきたいと思いますが、これが全てがひっくり返って我々が完全に支配して戦えるということにはならない」と警戒心を露にしていた。ただ、内容的に前進を見せ、そのうえで連勝となればチームの士気は一気に上がる。今年に入って1勝1分3敗と低迷中のドイツが背負う勝利へのプレッシャーもうまく逆手に取りたいものだ。
ドイツで最も注目される日本人選手と言えば、ラツィオに移籍したばかりの鎌田大地だ。同国テレビ局『RTL』のレポーター、ガナー・フェリックス氏も「遠藤(航)や板倉(滉)もいい仕事をしているし、浅野(拓磨)や堂安(律)もドイツ戦は要注意だが、やはりドイツで最も知名度が高いのは鎌田だ。フランクフルト時代の彼はヨーロッパリーグ制覇など目覚ましい活躍を見せたからね」と太鼓判を押していた。
その鎌田だが、フランクフルトを退団したこの夏、新たなクラブが思うように決まらず、本人も焦燥感を抱く日々を過ごしたという。
「正直、大変でしたね(苦笑)。2チームに絞っていて、どちらかには行けるだろうと思ってたのに、両方難しくなった時が一番難しかった。いろいろありますけど、とりあえず今は決まってよかったです」と彼は6~8月にかけての紆余曲折を述懐する。
プレシーズンをラツィオで十分過ごせなかったこともあり、新天地への適応も簡単にはいかなかった。ラツィオ自体も開幕2連敗と苦しいスタートを強いられ、鎌田獲得を懐疑的に見る声もチラホラ出始めていた。それを自らの力で払拭して見せる。9月2日のナポリ戦で豪快な左足シュートを決め、「点の取れるインサイドハーフ」という価値をしっかりと示したのである。
「あの試合には自分自身もかなり強い覚悟で臨んでいたし、結果がほしいというのがありました。(ナポリとユヴェントスとの)2試合がすごく大事だと思っていた中で、結果がついてきてよかったです」と安堵感を吐露。ようやく肩の力が抜けた状態で代表に合流できたのである。
4カ月前まで過ごしていたドイツに戻り、鎌田が一体、何を見せるのか。それは大きな注目点に他ならない。森保監督は4-2-3-1でスタートすることを明言したが、起用された場合はトップ下が有力だ。
「ラツィオに行ってインサイドハーフでプレーしてますけど、それは昔から自分がやりたいポジションで、ようやくそこでプレーできています。今まではトップ下のイメージがすごく強くて『ボランチができない』とかいろんなイメージを持たれていましたけど、今はマウリツィオ・サッリ監督からも普通にやれると評価されていると感じます。とはいえ、選手としては6番、8番、10番ができるのが自分の特徴。それを代表でも示していければいいですね」と鎌田自身はインサイドハーフでのプレーを熱望しつつも、森保監督の要求に柔軟に応えていくつもりだ。彼が中盤にいることで日本の攻撃バリエーションが増えていくのは間違いない。
そんな男も10カ月前のドイツ戦では守備に忙殺され、本来の創造性やアイディアが十分に出せなかった。だからこそ、今回こそは「鎌田らしさ」を存分に示し、ドイツに脅威を与えてほしい。
「ここ最近、ドイツは納得できるような結果が得られていない。日本戦は間違いなく全力で来ると思います。今回は相手の本拠地だし、勢いが凄かったら難しい。自分たちはできるだけそうならないように取り組みますけど、そうなったらいかにゼロで終われるかを考えることが一番大事。ゼロで進めば進むほど、僕らはやりたいことができないし、スペースが空いたりする。割り切って失点しないようにすることが大事ですね」と本人はまず守備に重点を置いてゲームに入る構えだ。
鎌田がイメージするように、ドイツを苛立たせるような試合運びができれば、彼自身がフィニッシュに絡むチャンスも自ずから多くなる。前半はもしかするとワールドカップと同じような展開になるかもしれないが、欧州の舞台で多彩な相手と駆け引きしてきた鎌田であれば、戦況を読んでギアを上げるべき時には一気に突き進むに違いない。
彼がゴールを奪い、日本を勝たせるような大仕事を果たせば、ドイツ国内は大騒ぎになるだろう。ドイツを去ってイタリアに赴いた鎌田を「惜しい選手」と思わせるような、傑出したパフォーマンスを大いに期待したいものである。
取材・文=元川悦子
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By サッカーキング編集部
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