[写真]=Getty Images
11月23日のドイツ戦と27日のコスタリカ戦に連続スタメン出場しながら、右ひざ痛を訴え、28~30日のトレーニングを欠席していた遠藤航。中盤の要である背番号6がいない中で迎えた12月1日のグループ最終戦のスペイン戦は少なからず不安も感じられた。
実際、スペインのセルヒオ・ブスケツ、ガビ、ペドリのバルセロナ中盤トリオの高度な技術と連動性は素晴らしく、見る者を釘付けにした。日本は最前線の前田大然と鎌田大地が受け渡しながらブスケツをチェックし、守田英正、田中碧の両ボランチもカビやペドリを見ながらスペースを懸命に埋めていく。それでも押し込まれ、ギリギリのところで耐え忍ぶ形を余儀なくされ、開始12分にはアルバロ・モラタに先制弾を浴びてしまう。
それでも「0-1ならまだ巻き返せる」というドイツ戦で得た確信を基にチーム一丸となって前半を終了。そしてドイツリードという情報が流れる。この時点では日本が1-1に追いつけば2位以内で通過できる状況だった。もともとのプランではあったが、「後半は前がかり行こう」という前向きなマインドが生まれた。
それを象徴したのが、48分の堂安律の同点弾と、3分後の田中碧の逆転ゴールだ。特に田中の得点には、ベンチで見守っていた遠藤も安堵感が強かったはずだ。
「まさか碧が決めるとはサプライズ。あそこに碧が入っていくというのは、(本人が)信じていたと言うか。逆に俺が出ていたらあそこまで入っていったか分からない。今回はその賭けに勝った感じ」と背番号6は後輩を頼もしく見つめていた。
そこから守勢に回る展開も総合力を結集して耐え忍び、自陣で強固なブロックを構築した。田中と守田のコンビも時間を追うごとによくなり、安定感が出てきた。
「(モリと碧は)スムーズだったと思います。もともと(川崎フロンターレで)一緒にやっていた選手ですし、俺は何も心配してなかった。2人だったらやってくれると思っていました」という遠藤の期待に堂々と応えてくれた。
そして遠藤は満を持して87分から田中と代わってピッチへ。終盤のクローザーとして中央を固め、スペインの猛攻を跳ね返し、2-1の勝利をお膳立てしたのである。
「コスタリカ戦で1回、接触があって、あとチームでヴォルフスブルク戦の時にケガをしたのを引きずっていたので。ドクターには『もしかしたら無理かも』と言われていたんですけど、思った以上に回復した。まだ完璧には治っていないんですけど、次はほぼ100%に近い状態で行けるんじゃないかと思います」と本人は負傷箇所を確かめつつ、手ごたえもつかんだという。
日本の中盤の要は長年の悲願である史上初のベスト8進出を賭けて挑む5日のクロアチア戦で真正面からぶつかっていける状態になったと言っていい。
クロアチアは2018年ロシアW杯準優勝。1日のベルギー戦で先発した5人がフランスとのファイナルに出場していて、高度な国際経験値を持つ。とりわけ、大会MVPに輝いたルカ・モドリッチの神出鬼没な動きは絶対に止めないといけない。85年生まれの彼はすでに37歳になっているが、中盤を縦横無尽に動き回り、ここ一番でゴール前に顔を出してくる。
ベルギー戦を見ていても、終盤の時間帯に前線に飛び出して相手守備陣に脅威を与えていた。それだけの運動量とハードワークのできるテクニシャンというのは、対戦相手にとっては厄介この上ないのだ。
「クロアチアにはチームメイト(左サイドバックのボルナ・ソサ)がいるので、個人的にはそれが楽しみ。W杯前から『もしかしたら対戦するかもね』みたいなことを言っていたし。それがまさか実現するとは思っていなかった。今日も試合を見たけど、固いチームだと思うし、間違いなくいいチームとは分かっています。特にモドリッチ封じはたぶん、皆さんが期待していることだと思うので、どれだけつぶせるかは期待してほしいですね」
こういった堂々たる物言いができるのは、さすがは2020-21、21-22シーズンと2年連続連続ブンデスリーガでデュエル王に輝いた男。世界最高のMFと対峙しても遠慮なく行ける自信があるのだろう。
今回の日本代表がドイツ、スペインというW杯優勝経験国を撃破できたのも、「世界トップでも負ける気がしない」という強気のマインドによるところが大だろう。浦和レッズでプレーしていた4年前の遠藤だったら、ここまでの自信は持てなかった。彼が常日頃言っている通り、「W杯はこの4年間の積み重ね」という言葉は実に説得力があるのだ。
日本は98年フランスW杯、2006年ドイツW杯でクロアチアと対戦し、1分1敗。W杯ではいまだ勝ちがない。過去の先輩たちは高い壁に苦しめられてきた。そういった悔しさも含め、遠藤を中心とした森保ジャパンが晴らしてくれれば、日本サッカー界は確実にもう一段階上の領域に到達できる。
背番号6には「次は絶対にやってくれ」と強く言いたい。
取材・文=元川悦子
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By 元川悦子