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悔しさを知る男たちがいる 「勝って終わらせる」東京五輪代表、最後の試合へ

[写真]=Getty Images

 スペインに敗れた東京オリンピック準決勝翌日のチームミーティングで、吉田麻也主将は選手全員に語りかけた。9年前のロンドン五輪での映像を使って、当時準決勝で敗れたあとの心境を語りつつ、3位決定戦で勝ってメダルを勝ち取る意義を強調した。

 これは吉田が森保一監督に自ら願い出て実現したものだった。

「みんなの顔がね……。もう……。みんなの顔がまずいなと思ったので」

 茫然自失。ロッカールームの様子はそんな雰囲気だったという。「気持ちはすごく分かる」とした吉田は、だからこそ鼓舞する必要を感じた。実は試合直後にもその旨を語りかけているのだが、敗戦直後に響かせるのは難しい部分もある。

 だからこそ、一夜明けて迎えた4日、銅メダルの懸かる3位決定戦に向けて「やっぱり精神的な準備をしないといけない。そこの準備を少しでも手助けしたい」と動いたわけだ。

 そんな吉田に、「4年前とは違うか」と問うたところ、こんな答えが返ってきた。

「一番違うのはやっぱり、自分と酒井(宏樹)とロンドンを経験した選手がいて、スタッフもいること。自分たちが他の選手たちの雰囲気だったり気持ちだったりを変えることができると信じている。そこが一番の違いだと思っています」

 ロンドンでもスタッフだった本間一憲総務は、準決勝の試合後に誰よりもロッカールームで声を出して盛り上げていたそうである。あんな悔しさは二度と味わいたくないし、味わってほしくないという思いは、9年前を知る男たちが共有している感情だろう。

吉田麻也

あの時の悔しさを知る吉田 [写真]=Getty Images

 4日、5日ともにトレーニングの雰囲気はそこまで悪くない印象だった。笑顔もこぼれていたし、ここまで出番の少ない選手たちも空気を下げるようなことなく、意欲的に取り組んでいた。「非常にいいチームだなと思っている」と語った吉田は、「最後勝って終わらせたい」とも強調した。

 6日に行われる3位決定戦、ブロンズメダルマッチは純粋にフィジカルコンディションの観点から言っても厳しいゲームとなる。準決勝120分を戦い抜いた日本とメキシコの双方にとってタフな状況だったことに加え、女子サッカーの決勝がナイトゲームに移動する中で男子の3位決定戦も18時キックオフへと変更になった。暑さの残る時間帯に試合時間がスライドしたことで、よりハードな環境での試合となる。

 とはいえ、これが最後の試合である。お互いに出し切るしかなく、それゆえに死闘が約束されているとも言えるだろう。吉田は最後のメダルマッチへ向かう心境をこう総括した。

「僕はオーバーエイジですけれど、若い選手、(鈴木)彩艶なんかはまだ18歳。ほかは20歳前後の選手が多いんですが、その年で自分の国を背負って仕事ができるなんてホントに恵まれているし、一握りの選手、一握りの人間にしかできないような仕事をやっていると思う。こんなに良い仕事はないと思うし、心の底から誇りと責任をもって、最後に全部出し切りたい」

 東京開催が決まったその日から、特別な強化を積み上げてきた世代に、3人の頼もしいオーバーエイジ選手が加わった東京オリンピック男子サッカー代表チーム。その最後の試合で最後に笑うために、チームのすべてを出し切る試合となる。

取材・文=川端暁彦

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