U-23マレーシア代表に接戦の上、勝利したU-21日本代表 [写真]=Getty Images
図らずも「アジアの決定力不足対決」と称すべき戦いになっていた。双方に決定機はありつつ、そして入らなかった。
24日にインドネシアのブカシにて行われたアジア競技大会ラウンド16、マレーシア戦。0-0の均衡戦は、残り時間が1分になっても動かないまま、最終盤に突入していた。
双方が攻めあぐねる、「0-0」の試合にありがちなゲーム展開だったわけではない。互いに何度も決定機を迎えており、惜しいシュートを放ってはいた。日本も1トップで先発したFW前田大然(松本山雅)が2度の好機を迎え、左ウイングバックで先発のMF杉岡大暉(湘南ベルマーレ)から危険なクロスが送り込まれるなど「多くのチャンスを作った」のは確かだが、同時に「なかなか決め切れなかった」(森保一監督)。
対するマレーシアも、恐らくほとんど狙いどおりに近い試合展開に持ち込みながら、決定力だけは貧弱だった。日本のビルドアップの隙をついて、かっさらってのカウンターがハマりかけるシーンは何度もあった。さらに終盤の81分から83分にかけての3分間で3度の決定機を迎えながらバーとポストにも嫌われて決め切れなかったのは致命的で、結果的にこの一連の流れが日本を救うことになった。
そんな試合の勝敗を直接的に分けたのは交代出場のFW上田綺世(法政大学)によるPKでのゴールだが、日本がずっと狙っていた戦術的な隙をついたものだった。マレーシアが行う無造作なラインアップの隙をついての裏抜けである。
「(マレーシアは)『上げればいいや』くらいでラインを上げてくるので、裏が結構がら空きになる。『そこを使っていこう』というのはチームで話していた」(DF原輝綺/アルビレックス新潟)
89分、DFからボールを受けてドリブルでボールを運ぶボランチの松本泰志(サンフレッチェ広島)はノープレッシャーの状況。原則的にはラインを上げてはいけない状況だが、マレーシアはこの点で戦術的に無造作で、快足を飛ばした上田と、針の穴を通すようなスルーパスを披露した松本の意図が噛み合った時点で勝負ありだった。得たPKも落ち着いて上田が決めて、これが決勝点となった。
1-0での勝利。これで準々決勝へ進めるということ自体は紛れもなく喜ばしいのだが、「めちゃめちゃ良い試合だったとは思わない」と原が微妙な表現をしたように、喜ばしい内容でなかったことは確かだ。決定力不足やパスワークの部分は劣悪なピッチ条件もあるので甘く見たとしても、不用意にカウンターを受けてしまった脇の甘さは厳しく指摘されるべきだろう。次の相手は、都合良く決定力を欠いてはくれそうにない。
シュート数は日本の11本に対し、マレーシアは12本。ファウル数もほぼ五分。ポゼッションは日本の64%に対してマレーシアが36%と大きな差が出ているが、これも双方の戦術的な意図を反映したもの。日本が優位だったと単純に言えるものではない。個人的には、ほぼ互角のゲームだったという感覚だ。マレーシアのオン監督が「不運」という言葉を使って試合を総括したのも理解できる内容だった。
マレーシアはグループステージでトッテナムのFWソン・フンミンを含む最強メンバーを揃えた韓国を破ったことで得た自信もあったのだろう。東南アジアらしいテクニックだけでなく、フィジカル的にも総じて強健で、タフに戦い抜く力強さも備えていた。
グループステージ第3戦のベトナム戦に続き、あらためて東南アジア勢の急進的なレベルアップを実感させられる試合だったとも言える。今大会は他にも地元のインドネシアはもちろん、サウジアラビア、イラン、北朝鮮と同居する究極レベルの激戦区に入りながら、勝ち点4で4チームすべてが並ぶ状況を作り出したミャンマーも存在感を見せた。これまでアウトサイダー扱いだった彼らだが、見せているサッカーも、残している結果も明らかに違ってきている。
紙一重の勝負を制した日本だが、あらためて現代アジア戦線で勝ち抜くことの難しさを痛感する大会にもなっている。逆に言えば、それだけ多くの学びもあるわけで、また1試合の経験値を積み上げられることをポジティブに捉えておきたい。
取材・文=川端暁彦
By 川端暁彦