2018.07.05

【コラム】W杯から逆算して取り組んだ“走り改革” あのゴールには原口元気の4年間が詰まっている

原口元気
ベルギー戦で先制点を挙げた原口。ラウンド16でのゴールは日本にとって歴史的な瞬間だった [写真]=Getty Images
サッカーキング編集部

 日本がワールドカップのラウンド16でゴールを決める。それは決勝トーナメントに進んだ過去2大会で一度も成し遂げられなかったことだ。だからこそ、その大舞台で、しかもFIFAランキング3位のベルギーを相手に、原口元気がゴールを決めたのはまぐれでも運でもない。彼が4年間取り組んできた“走り改革”で培ったものすべてが凝縮されたゴールだった。

 速く走るだけなら簡単だ。原口が求めたのは、速く走った後もバテずに高い質でプレーすること。そのために彼が本格的にトレーニングを始めたのは2014年2月のことだった。訪ねたのは筑波大学体育専門学群の谷川聡准教授。元110メートルハードルの選手で、アテネ五輪では日本記録を樹立した走りのスペシャリストである。最初は「責任を持てない」と門前払いを食らったが、原口は週1回のペースで大学に足を運び、課された課題を黙々とこなした。

 最初に手をつけたのは「走る」ことではなく、「止まる」ことだった。原口が「速く走るためには、止まれないといけない」と説明してくれたことがある。「最初は止まるためのトレーニングをしました。もちろん、速く走るためには体の軸が大切なので、その軸を作るようなトレーニングを約2年間、毎日やりましたね」

 地道に取り組んだ「止まる」が発揮されたのが、あの先制点の場面だ。原口はハーフウェーライン手前から一気に加速してペナルティエリア内に侵入すると、ピタッと止まり、体勢を崩すことなく右足をきれいに振り抜いた。追いかけてきたヤン・フェルトンヘンとの冷静な駆け引きも、「スプリントの質を上げることで余裕が生まれる」という言葉を体現したものだった。

「本当に狙いどおりのゴールでした。あの試合として狙いどおりということではなく、ワールドカップがどういうものになるかをイメージして、逆算してトレーニングをした成果が出た。60メートルくらいをスプリントした後に、相手と駆け引きをして、止まって、バランスを崩さずに自分の思ったとおりに蹴れた。本当に、4年間トレーニングしてきたことだった」

 本来のポジションとは違う右サイドでの起用に、「感覚が違う部分がある」と戸惑いも抱いていた。それでも原口は必ずチャンスが来ると信じた。激しい息づかいがスタンドまで聞こえてきそうなほど、一心不乱に走り続けた。「30本走って、31本目にチャンスは来るかもしれない。どれだけ粘り強く、その1本を信じてゴール前に入って行けるか。その先にご褒美があればいい」。ゴールネットを揺らした瞬間、彼のこれまでの努力を称えるかのように、スタジアムは大歓声と拍手に包まれた。

 ベルギー戦の翌日、原口の表情には充実ぶりがにじみ出ていた。「(W杯は)めっちゃ楽しかったです。負けて、めっちゃ楽しかったと言うものおかしいけど、毎日ワクワクしていた。サッカーも試合もすごく楽しくて、できればもう1試合やりたかった。それだけが悔いかな」。その弾んだ声からは、楽しさが十分に伝わってきた。

「基本的にどのスポーツでも、ピークは27歳前後」とは谷川准教授の言葉だ。原口は今がまさに27歳。だが、W杯という大舞台での経験を経て、輝きを増した彼のピークはまだ先なのではないか。私はそう感じている。

取材・文=高尾太恵子

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