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【三浦知良×長谷部誠】それぞれが考える短期間でのチーム作り/第2回

2018.06.08

 Jリーグ元年から日本サッカー界をけん引してきたエースと、2010年から日本代表をリードしてきたキャプテン。彼らが発する言葉には、ロシア・ワールドカップで成功を収めるためのヒントが隠されている。6度目のW杯に挑む日本は、大会直前の監督交代によって、実質1カ月でチーム作りを進めなければならなくなった。準備期間が不十分であることは誰の目にも明らか。短期間で体制を整えるには豊富な経験値やリーダーシップが求められる。51歳の三浦知良と34歳の長谷部誠――。ベテランの域に達した2人が考えるチーム作りとは何か。様々な経験を積んでなお新たな挑戦を続ける二人が、日本サッカー界の未来を語った。

■長谷部が考えるキャプテンの役割、カズが考えるプロのこだわり

 若手がチームに勢いをもたらし、中堅、ベテラン選手を刺激する。経験がある選手は若手がプレーしやすい環境を作る。長谷部は日本代表にそんな好循環を生み出したいと考えている。

 若手に求めるのは伸び伸びとしたプレーだ。南アフリカ大会のピッチに立った時、長谷部は経験のある選手に引っ張られ、あまりプレッシャーを感じることなく自由にプレーができたと振り返る。

「若手にはサッカーを楽しむくらいの気持ちでやってほしいです」

 この意見にカズも全面的に賛同する。「若さこそ最大の武器」とはよく言ったもので、若手は大舞台でも怖いもの知らずでぶつかることができる。そして、彼らのプレーや言動をすべて受け止めるのが中堅、ベテラン選手の役割だ。

三浦知良

「横浜FCの一番若い選手は18歳で、僕の子どもとあまり変わらない。それくらいの年齢の子は、家でお父さんとあまり話さないじゃないですか(笑)。だから、自分から歩み寄っていくことが大事。僕がずっと自分の位置にいたら、みんなが近づきにくいでしょ。10代なら10代、20代なら20代の目線で自分から話をすることが、一緒にやっていく上で大事かなと」(カズ)

「経験のある選手は、今大会が初めてだという選手を引っ張ってほしい。自分たちが伸び伸びとやれたように、今度は僕らがそういう環境を作りたい」(長谷部)

「W杯予選でなくても、代表キャップ数が多い選手はそれだけの経験をしているはず。チーム内での振る舞いや、練習への姿勢が自然とお手本になると思う。それだけの実績と人間性があるからこそメンバーに残っているわけで。意識しなくても自然とあふれ出てくるものだと思いますよ。特にキャプテンをやっている長谷部には人間力と実力、経験がある」(カズ)

 それぞれの役割を理解した若手、中堅、ベテランを融合させるのが、キャプテンの役目でもある。だから長谷部はコミュニケーションを大事にする。何が正しくて、何が間違っているのか。簡単に答えを出せないこともあるが、後になって「もっとコミュニケーションを取っておけば良かった」と後悔はしたくない。

「それぞれの立場に関係なく、自分が思っていることを言う。そして相手が思っていることを聞く。それが大事だと思う」

長谷部誠

 コミュニケーションの取り方にも気を配っている。相手によって話し方を変えたり、一対一を選んだり、グループで会話したり。長谷部はその時に合った手段を選ぶようにしている。一方で、カズは「キャプテンとして」のコミュニケーションを意識したことがない。Jリーグの開幕を飾る横浜マリノス戦でキャプテンマークを巻いたが、「コイントスの係」くらいにしか捉えていかなったという。

「僕が考える『プロ』とは、どうしても個人なんです。チームスポーツとはいえ、プロの世界は個人だと思っている。だから、自分がキャプテンをやっている時に『僕がチームを引っ張る』、『僕が間に入る』なんて考えたことがないですね」

 キャプテンであろうとなかろうと、カズは誰よりも早く練習場に来て、誰よりも気持ちを入れてプレーする。その姿に刺激を受ける選手がいてくれたらいい。それだけだ。

 その「個人」にフォーカスした時、長谷部はロシアW杯で何を示したいのだろうか。年齢を重ね、経験を積んだ長谷部は史上最高の状態でロシア大会に臨めると言い切った。

「過去2大会は自分のプレーに納得していないので、ここで自分が持っているものを出し切りたい。チームの結果や内容が大前提ではありますけど、個人としてもやり切ったと思えるような大会にしたい」(長谷部)

「長谷部は若い選手が失敗を恐れず、ピッチで躍動できるような環境を作ってあげないといけない。それだけの経験があるんだから。彼が躍動して、みんなを鼓舞している姿が見たい。その中で、みんなが熱く燃えるところが見たいです」(カズ)

インタビュー・文=高尾太恵子/写真=鷹羽康博


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