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【コラム】4年前の悔し涙を糧に…ロシアへの“生き残り”に挑むベテランMF青山敏弘

日本代表としてブラジルW杯のピッチに立った青山 [写真]=Getty Images

「打ちのめされたので何とも言えない。結果がすべてなので……。すべてのレベルにおいて低いなというのを感じました。どうすれば、ここ(ワールドカップ)で勝てるのか……。誰か教えてくれるなら、教えてほしいですよ」

 2014年6月25日。ブラジル中西部のクイアバでコロンビアに1-4の惨敗を喫した後、背番号14をつけたボランチ・青山敏弘サンフレッチェ広島)は人目をはばからず大粒の涙を流した。

 1分け1敗と崖っぷちに立たされた日本代表の救世主となるべく、アルベルト・ザッケローニ監督(現UAE代表)からスタメンに抜擢されたものの、序盤から相手のスピートとパワーに翻弄される。前半こそなんとか1-1で折り返したが、ハメス・ロドリゲス(当時モナコ、現バイエルン)が出てきた後半は圧倒的な力の差を突き付けられる。そして2失点目を喫したところで青山は山口蛍(セレッソ大阪)と交代。ベンチから1-4で大敗した瞬間を迎えることになった。これほどの無力感を味わったのは長いサッカー人生で初めて。止めどもなく流れてくる涙が過酷な現実を如実に物語っていた。

 その後、青山はヴァイッド・ハリルホジッチ監督体制初陣だった2015年3月のチュニジア(大分)・ウズベキスタン(東京)2連戦を最後に日本代表から遠ざかった。それでも「コロンビア戦で自分の中に火がついた。あの試合で一番感じたのは一対一や球際のところ。僕はブラジル・ワールドカップが初めての大きな国際大会だったんで、そのレベルに慣れていなかったところはある。一番早いのは海外に出ることだけど、Jにいる自分はそこにこだわり続けて、個の力を上げていくしかない」と語気を強めたように、本人は世界基準をつねに思い描きながらピッチに立ち続けてきた。2015年にはJリーグMVPに輝き、FIFAクラブワールドカップでも3位に入るなど、青山が進化の歩みを止めることはなかった。

 2016年から2017年は広島が苦境に陥ったうえ、彼自身も小さなケガやコンディション不良に苦しみ、思うようなパフォーマンスを見せることができなかったが、城福浩新監督の下で迎えた今季は20代に戻ったかのような躍動感とフレッシュさを取り戻している。

「今年1月に始動した時、青山は体の不調をあちこちに抱えていて、コンスタントに高いパフォーマンスを出せる状態じゃなかった。それを踏まえて、1からフィジカルを鍛え直して、走れる状態に引き上げました」と指揮官の右腕である池田誠剛フィジカルコーチも神妙な面持ちで語っていたが、今季の青山はここまでのJ1全15試合に出場。5月20日のC大阪戦を含めた11試合でフル出場を果たしている。90分プレーした際の走行距離は毎回のように12キロ以上に達しており、最多だったのは4月8日の柏レイソル戦の13.13キロ。これは今季J1走行距離ランキングの6位に位置する破格の数字で、いかに彼が走れているかがよく理解できるだろう。攻守の要がいい仕事をしているからこそ、広島が今季J1で独走体制に入れているのだ。

 目下のコンディション面の充実ぶりを自身2度目となるロシアW杯に大いに生かしたいところだ。5月30日のガーナ戦(日産)に向けて選出された今回のメンバーは27人。これから追加招集があるかもしれないが、少なくとも4人は落選の憂き目に遭う。中でもボランチは大激戦区。常連組の長谷部誠(フランクフルト)、山口に加え、大島僚太(川崎フロンターレ)、三竿健斗(鹿島アントラーズ)、井手口陽介(クルトゥラス・レオネサ)の合計6人が呼ばれている。柴崎岳(ヘタフェ)もボランチをこなせることを考えると、7人の中から絞り込みが行われることになる。

 そこで生き残ることが青山にとっての第一関門だが、今の彼なら長谷部や山口以上の好パフォーマンスが期待できるかもしれない。西野ジャパンでは森保一コーチも重要な役割を果たすため、その意図を瞬時に汲み取ってプレーできるベテランボランチの存在価値は少なくないはずだ。

「ワールドカップは出るだけでは意味がない」と本人はブラジルW杯後に繰り返し語っていたが、今回は勝利という結果を手にすべく、持てる経験値のすべてを駆使する覚悟はあるはずだ。6月19日の初戦の相手・コロンビアはJ・ロドリゲスが円熟味を増し、前回ケガで欠場したラメダル・ファルカオ(モナコ)も参戦してくるため、チーム力は確実に上がっている。それを頭に入れたうえで、青山がピッチに立った場合には、4年がかりでこだわってきた球際や一対一の部分の成長を示さなければならない。同時に磨きをかけてきた走力で相手をかく乱できれば理想的だ。ブラジルでは武器である鋭いタテパスを出すまでには至らなかったが、大舞台の雰囲気を知っている分、今回は落ち着いて高度な技術と戦術眼を出せるはず。確かにそれだけの大きな期待を抱かせてくれる存在ではある。

 西野ジャパンは経験と実績を重視したメンバー選考になった分、高齢化が懸念されている。青山にも少なからず批判的な声があるかもしれないが、それを一蹴する圧巻のパフォーマンスで日本代表の新たな起爆剤になってほしい。それを32歳のベテランMFに強く望みたい。

文=元川悦子

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