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【E-1選手権前に振り返る】日本代表、韓国との激闘の歴史

2017.12.02

直近の日韓戦は2015年の東アジアカップ。スコアは1-1だった

 日本代表が出場する国際大会ながら、開催されていることはおろか、存在そのものもほとんど知られていなかった。テレビ中継もなければ、インターネットもまだ登場していなかった1992年の夏。日付けが8月29日から30日に変わった直後に、日本が戦後の国際大会で初優勝したというビッグニュースが飛び込んできた。

 中国・北京で開催されたダイナスティカップ1992。EAFF E-1サッカー選手権の前身である東アジアカップの、さらに前身となる大会に、史上初の外国人監督、オランダ人のハンス・オフト氏に率いられる日本は出場していた。

 韓国、中国、北朝鮮各代表とまず戦い、上位2チームが決勝戦で再び対峙する大会方式。韓国とスコアレスドローで発進した日本は中国に2-0、北朝鮮には4-1で快勝して1位で突破し、2位に入った韓国との再戦に臨んだ。

 試合前からあいにくの大雨が降り続き、水たまりが点在した工人体育場の重馬場のピッチ状態を考慮したオフト監督は、司令塔のラモス瑠偉(ヴェルディ川崎)を先発から外して決戦に臨んだ。32分に先制されるも、雨が上がり、ピッチが乾いてきた状況を受けて投入されたラモスのスルーパスに反応したFW中山雅史(ヤマハ)が、83分に起死回生の同点ゴールを決める。

 延長戦に入ると日本のパス回しがさえ渡り、96分には勝ち越し弾を奪う。ラモスの縦パスに抜け出した中山が右サイドから中央へ折り返したところへ、FW高木琢也(サンフレッチェ広島)がシュート。一度は相手GKに防がれたが、こぼれ球を高木が執念で押し込んだ。

 喜びを爆発させすぎた隙を突かれ、直後に同点とされてしまっても日本の闘志は萎えない。突入したPK戦で最後はMF北澤豪(V川崎)がゴール右上に豪快に突き刺し、死闘に決着をつけた。大会得点王は4ゴールの高木、MVPにはカズことFW三浦知良(V川崎)が輝いた。

 決勝戦の前まで、韓国には通算と6勝12分け31敗とまったく歯が立たなかった。いつしか根づいたコンプレックスを見抜いていたのか。オフト監督は試合前のミーティングで、韓国と交換してきたメンバー表を選手たちの前で破り捨てた。

 過去は関係ないと魂に訴えた指揮官の檄。そのココロは「スリーライン」「スモールフィールド」「トライアングル」といったキーワードを介して、就任してからの約5カ月間で伝えてきた組織的なサッカーを展開すれば、韓国とのフィジカルの差は十分に埋められるという自信にあった。

 果たして、公式記録上では引き分けとなるダイナスティカップ1992決勝で得た自信を契機に、日韓両国の力関係は劇的に変わる。同年秋からヤマザキナビスコカップ(現YBCルヴァンカップ)が、翌年5月からはJリーグがスタートした相乗効果もあって、以降は7勝11分け7敗とまったくの五分。1992年までは一度もなかった連勝も2度マークしている。

 数々の名勝負も生まれた。1993年10月25日にカズの決勝弾でもぎ取った、ワールドカップ予選における初勝利は無念にも、3日後のイラク戦で喫した「ドーハの悲劇」の序章となった。ホームの国立競技場で喫した、1997年9月28日のワールドカップ・アジア最終予選における逆転負けは、加茂周監督更迭への遠因にもなった。

 そして、現時点における最後の黒星は、日本のターニングポイントにもなっている。2010年5月24日。ともにワールドカップ・南アフリカ大会出場を決めていた両国は、埼玉スタジアムで対峙した。「強い相手と戦いたい」という岡田武史監督の要望を受けて実現した壮行試合は、前半と後半のそれぞれ開始直後に失点を許した日本が0-2で完敗した。

 南アフリカ大会のためにエスパニョールから古巣の横浜F・マリノスへ復帰しながら、精彩を欠いていた司令塔・中村俊輔がなかなか復調しない。歩調を合わせるように代表チームも低空飛行を続け、韓国戦後には岡田監督が日本サッカー協会の犬飼基昭会長にこう尋ねた。

「(監督を)続けてもいいんでしょうか」

 実質的な進退伺だと、メディアも騒然となった。当然のように慰留された指揮官は「やれと言われたので、前へ進むしかない」と半ば開き直り、離日後のヨーロッパ合宿中に組んだイングランド、コートジボワール両代表との強化試合で中村を先発から外した。

 それでもチームが上向かないと見るや、南アフリカ入り後に急きょジンバブエ代表との練習試合をセット。本田圭佑(CSKAモスクワ)を本職ではない1トップに抜擢し、堅守速攻型の戦い方に180度舵を切った。この決断が日本に勢いと自信を蘇らせ、2度目のグループリーグ突破へと導いた。

 PK戦の末に勝利した、ザックジャパン時代の2011年1月25日に行われたアジアカップ・カタール大会準決勝を含めて、紡がれてきた韓国との激闘の歴史。味の素スタジアムを舞台に行われる、今回のEAFF E-1 サッカー選手権 2017 決勝大会ではどのようなドラマが生まれるのか。75回目の対戦は12月16日午後7時15分にキックオフを迎える。
(所属や肩書は当時のもの)

文=藤江直人

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