2017.10.11

【コラム】劇的同点弾は「最低限」…浮き彫りになった疑問解決へ香川真司が示した覚悟

[写真]=三浦彩乃
日本代表から海外まで幅広くフォローするフリーライター。

 6日のニュージーランド戦(豊田)からスタメン9人を入れ替え、日本代表初先発の杉本健勇(セレッソ大阪)、小林祐希(ヘーレンフェーン)らフレッシュな陣容で挑んだ10日のハイチ戦(横浜)。前半20分までに倉田秋(ガンバ大阪)、杉本が立て続けにゴールを挙げるなど楽勝ムードが漂ったが、ハイチの底力は凄まじいものがあった。前半のうちにボランチのケビン・ラフランスが鋭い抜け出しから1点を返すと、後半立ち上がりに右クロスからデュカン・ナゾンが同点弾をゲット。日本を崖っぷちに追い込んだ。

 シナリオの狂ったヴァイッド・ハリルホジッチ監督は温存していた井手口陽介(G大阪)を小林に代えて投入。香川真司(ドルトムント)も倉田と交代させた。背番号10がこの半年間で急成長した21歳のダイナモとインサイドハーフを形成するのは初めて。「速くボールを動かしながら回していこうと。どんどん僕たちがボールに行って、後からもっと組み立てていかないと、前でいい感じのボールが入らない。それを徹底しながら両サイドバックに高い位置を取らせて、中に3ボランチがいる。ドルトムントと似てる感覚を意識して入りました」と本人は言う。

 その後、大迫勇也(ケルン)も起用。右の原口元気(ヘルタ・ベルリン)、左の乾貴士(エイバル)、井手口ら含めて香川は連動性のある攻めを出せるはずだった。が、全員が前がかりになり、距離感やバランスが悪いため、個対個の勝負に終始してしまう。それがドルトムントなら、ガボン代表FWピエール・エメリク・オーバメヤンやウクライナ代表FWアンドリー・ヤルモレンコらの個人能力でゴールをこじ開けられるかもしれないが、日本の場合はそうはいかない。しかも、相手エース・ナゾンに華麗なミドル弾を決められ、まさかの逆転を許してしまう。彼らは苦境に陥ったまま、後半45分を迎えようとしていた。

 そんな後半アディショナルタイム、中に絞った原口の左への展開からチャンスが生まれる。後半から出場した車屋紳太郎(川崎フロンターレ)のマイナスクロスに香川がつぶれ、右でフォローした酒井高徳(ハンブルガーSV)がシュート。このボールに右足を合わせてコースを変えたのが香川だった。

「GKに止められるだけだったんで、コースを変えるしかないかなと。来たから触ったら絶対入ると思ったんで」と香川は劇的同点弾を淡々と振り返った。代表通算29得点目の感慨もなく、「もう最低限の結果。ホントはゲームをコントロールして勝ち切らなきゃいけなかった」といつも以上に厳しい表情を浮かべた。ハリルホジッチ監督が「これまでの中で最低の試合」とバッサリ切り捨てた通り、香川にとっても納得のいかない一戦だったのは間違いない。

 しかしながら、ニュージーランド戦後に沸き起こったさまざまな批判に対し、ゴールという明確な結果で反論したのは確か。「何を言われようが別に関係ないし、次の試合でしっかりいい結果を手に入れられるように切り替えるだけ」と本人は自分に言い聞かせるように話していた。今回の泥臭いゴールは前回の悔しさとリベンジへの思いが凝縮されたものだった。

 この一撃を自身の再浮上のきっかけにしたいところだが、そのためにも代表チームが攻撃の連動性を取り戻す必要がある。「あの(得点)場面は速い連動性のある攻撃ができた唯一のシーン。それ以外に関してはリズムは生まれなかった」と香川が辛辣なコメントをしたように、彼が出ていた終盤30分間は攻めの方向性が見えにくかった。

 同い年の盟友・乾が「監督はキープするサッカーを全くやっていないし、つねに攻撃を仕掛け、3点目、4点目を取りに行くサッカーを目指している。だけど選手はもうちょっとボールをキープしたい。中の選手と監督の指示が違っていたからハッキリできなかった」と苦境の要因を代弁したが、香川にしてももう少し周りとボールを回しながら、攻めにバリエーションをつけたいはずだ。

 4-3-3の布陣を採っているなら、なおさらそう。逆三角形の中盤を機能させたいのであれば、パスをスピーディーにつないでいい距離感を保つ努力も不可欠だ。ドルトムントの4-3-3が機能しているのも、自分たちがイニシアティブを握って相手をコントロールしている状況が多いから。高い位置でボールを奪って裏を狙うというハリル流のコンセプトを徹底していくことも重要だが、果たしてそれだけでロシア・ワールドカップを戦い抜けるのか……。経験豊富な香川はハイチ戦に出場した選手全員に共通する疑問を解決するけん引役にならなければならないのだ。

「4-3-3はドルトムントでも長くやっていて、自分自身、感じることはあるので、監督と話してよりよいものにしていかないと。そこを曖昧にしてしまうとホントに痛い目に遭う。そこは監督ともっと分かりあい、温度差を詰めていかないといけないと感じてます。チームは監督を信じてやるのは当たり前だけど、選手たち、チームが感じたことももっともっと徹底しないと。しっかり危機感を持ってやっていきます」と背番号10は改めて監督との意思疎通を密にし、問題解決に当たっていくことを誓った。

 そうやって自らアクションを起こせる選手になってこそ、真のエースに君臨できる。これまでは本田圭佑(パチューカ)、岡崎慎司(レスター)ら年長者に頼りがちな傾向が強かったが、今後は香川真司が真のエースとしてチームの進む道を示し、実際に結果も残さなければいけない。その覚悟がハイチ戦後の強い目力に投影されていた。8カ月後に迎えるロシアでの本番に向け、日本代表を劇的に変える勇敢な香川真司をぜひとも見せてほしい。

文=元川悦子

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