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【コラム】井手口陽介、豪州戦の再現なるか…山口&香川とのトライアングル形成で真の中心選手へ

2017.10.05

ニュージーランド戦での活躍に期待がかかる井手口陽介 [写真]=三浦彩乃

「ニュージーランドはとてもフィジカルなチーム。デュエルというコンセプトがしっかりある。そしてオーストラリアよりアグレッシブかもしれない」

 6日のニュージーランド戦(豊田)を翌日に控え、記者会見に臨んだヴァイッド・ハリルホジッチ監督が強調した通り、彼らはオーストラリアに近い特徴を持ったチーム。日本のボール支配率は多少高まるだろうが、やはり目指したいのは、2018 FIFAワールドカップロシア出場を決めた8月31日の大一番の再現だ。となると、この一戦でまばゆいばかりの輝きを放った21歳のダイナモ・井手口陽介(ガンバ大阪)の一挙手一投足には、より大きな注目が集まるに違いない。

「井手口が成長し続けているのは嬉しいことだ」と指揮官も先月28日のメンバー発表会見で目を細めたが、チーム最年少の若武者の成長ぶりが日本代表の底上げに直結するのは間違いない。「もっともっと自分から要求していかないといけない。求めて求めあってという関係を(チームメートと)築ければ一番いいかなと思います」と9月5日のサウジアラビア戦(ジェッダ)後に本人も語ったように、自ら周りを動かすくらいの発信力を身に着けることが今後の課題と言っていい。

 今回はそこに取り組む絶好のチャンス。ハリルホジッチ監督が1カ月前のオーストラリア戦と同じ「4-3-3」の布陣を採る場合、井手口のポジションは左インサイドハーフになるだろう。長谷部誠(フランクフルト)が不在なため、アンカーは山口蛍(セレッソ大阪)が最有力で、右インサイドハーフは香川真司(ドルトムント)が陣取る可能性が極めて高い。井手口が国際Aマッチデビューを飾った6月のシリア戦(東京)で、香川は開始早々に左肩を脱臼してピッチを去ってしまい、前回のオーストラリア戦も出番なしだったため、ここまで公式戦で一緒にプレーする機会は皆無だった。香川を含めた新トライアングルを機能させることが、彼自身を輝かせる大きなポイントになると言っても過言ではない。

「守備はどんどん相手をつぶしに行って、攻撃ではどんどん前にチャンスがあれば出て、アシストだったりゴールだったり、目に見える結果を残していきたいです。インサイドハーフだったら、あまり下がりすぎずに前で受けろと言われているので、そこは意識していますし、ビルドアップだけじゃなく、決定的な仕事ができるようにと考えています。だからといって、真司君と組んでもやることはあんまり変わらない。プレーについても話すことは多いです」と井手口は自分の役割を明確にしつつ、ピッチ外で香川とコミュニケーションを取ろうと努力している様子をのぞかせた。

 彼と似ていると評判の日本代表レジェンド・中田英寿も、98年フランスW杯の時は名波浩(現ジュビロ磐田監督)、山口素弘(解説者)との中盤のトライアングルを形成。そのバランスが絶妙で、21歳の中田は年長者2人のサポートを受けながら、自由自在にプレーすることができた。「あの3人のコンビネーションの素晴らしさにはホント、圧倒された」と当時19歳でA代表合宿に呼ばれた中村俊輔(磐田)がため息交じりに話したことがあったが、それほど完成度の高いユニットが日本代表を力強くけん引していた。

 井手口も山口、香川とそういう三角形を構築できれば、オーストラリア戦以上に躍動感あふれるプレーができるはず。そのためにも国際Aマッチ87試合28ゴールという圧倒的な実績を誇る香川との意思疎通をより密にし、自分から注文をつけるくらいの強い自覚が必要になってくる。本人は「自分から要求することはあんまり…。まだまだないと思うんですけど、していけたらいいと思います」と遠慮がちに語ったが、年齢に関係なく大胆さを前面に押し出していくことが肝要だ。

 ガンバ大阪でも2015年にJ1デビューしたばかりの頃はボランチの先輩である遠藤保仁、今野泰幸をリスペクトしすぎる嫌いがあったが、今では自分が主役という雰囲気を色濃く出せるようになっている。それも日々の積み重ねの成果に他ならない。

 日本代表でも同様で、初招集された昨年11月のオマーン(カシマ)・サウジアラビア(埼玉)2連戦の頃はついていくのに精一杯。本人も今年6月の2度目の招集時に「前回はホントにすごくレベルの差っていうのを感じた。悔しい思いもしました」と力不足だった自分を述懐していた。それでも1戦1戦をこなすたびにプレーの幅が増え、ダイナミックさが増している。そうやって急成長できるのが若い選手の強み。「最初よりはできるというのは分かったので、次はもっともっと求めて、要求してというのをやれば、もっとよくなる」と今は高みを目指す欲が一段と強くなっている。

 中田英寿が98年フランス大会前後の1年間で一気に世界へと駆け上がったように、井手口もそれ以上の成長曲線を辿れるはず。ニュージーランド戦で山口・香川とのトライアングルを機能させ、1カ月前のオーストラリア戦を上回るパフォーマンスで見る者の度肝を抜いてくれれば、これ以上心強いことはない。

文=元川悦子

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